馮 海軍 日本黒竜江総商会会長
日本の企業や日本の人びとに真の中国の姿を紹介したい

黒竜江省出身者は、中日国交正常化以降に来日した華僑華人の中で比較的多数を占めている。彼らは半世紀近くの刻苦奮励を経て、ビジネス、科学技術、教育、文化等多岐にわたる分野で目覚ましい成果を上げてきた。先ごろ、われわれは日本黒竜江総商会の馮海軍会長を取材し、中日国交正常化以降の、両国間の経済協力及び経済交流についてうかがった。

同胞と祖国のために

21世紀に入って国力を増してきた中国は、国際舞台での存在感を高めている。中日の経済・文化交流と民間交流を促進し、黒竜江省の日本との窓口を設ける目的で、黒竜江省商務庁及び黒竜江海外交流協会の呼びかけによって、2015年10月8日、日本黒竜江総商会が東京で設立され、馮海軍は推されて会長職に就いた。

設立当初は30名ほどであった会員は7年で70余名となり、馮海軍は任期満了後も皆の期待と信頼を受け、引き続き会長の重責を担う。

農業が盛んな黒竜江省は全国有数の穀物生産地であると同時に、豊富な森林資源を有する。木材加工、農業機械、環境保護などの分野で日本企業の訪問・視察を斡旋することが、日本黒竜江総商会の重要な活動のひとつである。1990年から開催されている全国レベルの国際的な大型貿易展覧会である、ハルビン国際経済貿易商談会にも力を注いできた。

2018年には、日本黒竜江総商会主導の下、日本中華總商会が率いる在日の各省会及び日本企業の担当者35名による代表団が、第29回ハルビン国際経済貿易商談会に参加し、現地の政財界の人士と全方位の多角的な交流を深め、提携事業の立ち上げに尽力した。

日本黒竜江総商会のもうひとつの重要な任務は、黒竜江省政財界代表団の訪日を手配し、プラットフォームを構築し、日本側の経営資源を調達することである。黒竜江省政府による1000名の代表団が来日した際には、馮海軍は多忙な中、日本黒竜江総商会をリードし、経済貿易協力推進会議を成功に導いた。

さらに、日本黒竜江総商会は、故郷の黒竜江と黒竜江華商の新しいイメージを世界に向けてアピールし、経済協力・交流のためのプラットフォームをより大きくより強固にすべく、毎回の世界華商大会にも積極的に参加している。

新型コロナウイルス感染拡大に際しては、日本黒竜江総商会は武漢に132万円の義援金を贈るとともに、速やかにマスク等の防疫物資を調達し感染地域に駆け付けた。日本で地震等の自然災害が発生した際にも、人道主義の精神に則り、できうる限りの支援を行っている。

競争圧力が生む「雑音」

創業に至るまでに、馮海軍は3度来日している。一度目の来日は1985年で、当時、黒竜江省衛生庁の技術幹部であった。大学入試再開後の初の卒業生である馮海軍には、改革開放によって奮い立ち猛追する当時の中国の姿が重なる。

話題が近年中日間で取り沙汰されている「雑音」に及ぶと、馮海軍は世間で言われているところの「体制論争」は受け入れ難いと話した。中日、中米が国交を回復した1970年代を思い返せば、中国は経済的に立ち後れ、国民の教育レベルも低く、日本とアメリカは中国に対して積極的に技術支援や政策支援を行っていた。なぜ今、豊かで強大になった中国が、日本やアメリカなどの先進国から非難されているのか。「それは、国際市場において、中国が日本やアメリカなどの先進国と競争する関係になったからです」。1978年の中国の国民一人当たりの名目GDPはわずか200ドルで、2010年にはおよそ10500ドルに達し、この年に中国のGDPは日本を抜いた。「正直に言って、当時、40年で日本に追いつき追い越せるとは、考えも及びませんでした」。

当初、在日華僑華人は低付加価値産業に従事しながら苦学したが、後に彼らの多くが日本の高付加価値の業界で起業しビジネスをするようになり、華人企業と日本企業の間で競争が生まれた、さらには、中国の国際的地位が向上したことで、日本社会が圧力を感じるようになったのである。

真実の中国を知ってほしい

中日の国力の変化に伴い、中日経済の相互補完性は縮小している。そうであれば尚更のこと、交流を促進し理解を深めていく必要がある。「日本の企業や日本の人びとに、発展する中国を見に来ていただきたいのです」。現在、日本の世論には、発展する中国に対する多くの誤解がある。交流をさらに推し進め、日本に中国社会の真の姿を知ってもらうことで、両国人民の友誼の河の流れは止むことなく、勢いを増すであろう。

「戦後、善良な中国人民は、敵国が残した孤児を何の見返りも求めず養育しました。なかなかできることではありません。この歴史を忘れてはならないと思います」。馮海軍は、日本のメディアは中国のマイナス面ばかりを報道するのではなく、中日両国の友誼や協力に資する報道を多く行ってほしいと望む。

馮海軍は記者に語った。「コロナ禍によって国際間のビジネス・文化交流は滞りましたが、われわれは日本社会との緊密なコミュニケーションを維持し、国内においてはオンライン等の方法で商談を進めてきました。早く国際間のビジネス交流が正常に戻り、個人としても商会としても、より多くの日本企業や日本の方々を中国視察にお連れできるようになることを願っています」。

「国を出て愛国心はより強くなる」。この言葉は建て前ではなく、馮海軍の肺腑の言である。