「日中文化同盟論」を考える ―その5

丹頂鶴のふぶき号・さくら号と暮らす日々

――江(みどり)にして鳥愈々(いよいよ)白く 山(あお)くして花燃えんと欲す――唐代の詩人杜甫が詠ったように大自然の美しさに感応する中国人の文化的DNAは永遠でありましょう。我が国も(いにしえ)より、農民までも詩を読み画を描き書を愛する民族であり、私はこれら二国の文化美を一人でも多くの方々にお届けできればと願っています。そこで、私が『日中文化同盟論』の考えに至るまでの過程についてここに感謝の意を込め記させていただきます。

*2005年、武漢の黄鶴楼(こうかくろう)に取材。貧しい(シン)おじいさんが黄鶴の恩返しにより長者になるお話を通して慈悲と(じょ)の「哲学」、黄鶴を蜜柑の皮で描く「実践の美学」、そこから生まれた「利学」こそ永遠であることを学ぶ。(この時の作品『黄鶴之図』は日展出品後、総理官邸の正面玄関に掲げられる)

*2011年、目白の学習院ホールにて皇太子殿下ご観覧の中、彭麗媛(ホウレイユエン)習近平夫人主演の中国オペラ『木蘭(ムーラン)詩編』を観劇。男装の女性兵士が老父を思いやるストーリーは『白毛女(はくもうじょ)』を思わせる。ラストでは夫人が美しい声で「四季の歌」を歌われた。終演直後の中国マスコミの取材に対し、“活き活きと輝くばかりの舞台に昇りくる国の勢いを感じ、同時に一庶民の幸福に光を当てた内容に貴国の堅いイメージが一変した”と申し上げた。

*2012年、北京人民解放軍の将軍詩書画院を友人の紹介で訪問。老将軍の出迎えをいただいた玄関には毛沢東の大肖像画が、廊下には歴代将軍の額が並んでおり、書画を愛する兵士は一万名もおられるとのこと。尊敬する()(コウ)(デン)名将軍の書が実に見事で、聞けば日本の土光(どこう)さんのような高潔なお方で、次回ご紹介くださるという。持参した白扇に平和の言葉を(したた)め、「いつの日か日中軍人書画展を開催しては」と申し上げるとご賛同下さり、「中国軍は他国と戦う為ではなく自国を守る為にある」とのお言葉が心に残る。帰りに分厚い軍人書画集を頂く。翌日は人民日報本社にて海外版副社長と対談。『日中文化同盟論』について申し上げると、「その理論は広く報道するに値する」と答えてくださった。

私は、かつて日本のイージス艦内部を拝見し、自衛隊基地の気高いばかりの総監室では平和論を語る熱いひと時も体験したが、中国の開放軍基地で一泊させていただいた際、そこは習氏が使われたことがある実に立派な部屋だが、何の装飾も無いのは贅沢禁止令によるとの事。国家の意向が直ちに実行されるというそれは、現在の食品ロスや小康社会、人権問題なども含めて大国を治めきる(すべ)を見る思いであった。夜更けまで兵士訓練の足音が響く。

*2014年、中国主催の春節吉祥画展が日中文化会館にて開催。拙作30余点が展示される。

 

その他心に残ることは、

*歴史深き景徳鎮の陶瓷(とうち)学院で講演

*丹頂鶴の聖地ロシア近郊ザーロン

*我が家の鶴のふるさと瀋陽(しんよう)動物園

泰嶺(しんれい)山脈を越えた朱鷺(とき)の群生地洋県(ようけん)・同じくパンダ金絲猴(きんしこう)飼育園へ

*北朝鮮との国境図門(どもん)で北朝鮮の国画二百余点に感動

*日中韓国画展実行委員長として三国の画人と語らい、北朝鮮の作品を日本国内で初めて展示

*渤海大学学長と長時間語り合い校庭に見送られてからもなお月を見ながら話の尽きなかったこと

*作家で元延辺(えんぺん)大学教授の胡林(コリン)先生と長白山・白頭山に登り澄み切った天池の写生をしていると兵士が近づき「日本からの客人だから」と押し寄せる観光客に気遣って下さったこと等々・・・今まで出会った中国人民の優しさとあの壮大な大陸自然美は、私の生涯における心の宝であります。

『木蓮(ムーラン) 望郷の詩』(30号大)

木蓮(ムーラン)が愛馬にまたがり故郷へ向かう姿を木蓮の花に託しました