杉浦功修(医療法人社団東京ヒルズクリニック理事長)
美容整形で美とパワーを獲得

長い間、美容整形とは見た目を重視し、外見の美を追求するものと考えられていたし、私も同様であった。しかし、美容整形医師との対話を通して、美しく変化することは、実は一種のパワーの再生であり、病魔と対抗し、健康を保ち、生活を楽しむパワーを生み、外見を変えることで強い精神力がもたらされると考えるに至った。私に考えを変えさせたのは、杉浦功修医師。彼には自伝『俺、失敗しないので』がある。

『俺、失敗しないので』

—— ご著書には自信が溢れており、確固たる姿勢が伺えます。タイトルも日本人にありがちな謙遜した表現とは異なっています。先生が失敗しないポイントは何ですか。

杉浦 私が失敗しないのは、まさしく内心ではずっと失敗を考えているからでしょう。車の運転と同じで、自分に100%の自信を持つ人ほど、事故を起こしやすいのです。

美容整形の分野での、いわゆる失敗というのは、患者様が施術後の効果に不満を持つことです。こういった失敗を根絶するために、施術前に患者様と徹底的にコミュニケーションを重ねます。患者様と医師の方向性が一致すれば、次に進めるのです。患者様が施術について十分理解し、考えが完全に一致しなければ、軽々しく施術はしません。

また、医療に「絶対」はありません。患者様の体質もそれぞれ違いますし、どんなマテリアルにアレルギーがあるなど、医師でも分からないこともあります。そこで経験に基づき、施術前に発生する可能性のあるすべての状況、解決、対応の方法について一通り予測しておくのです。

美容整形は技術だけでなく
審美眼も必要

—— 日本には多くの美容整形専門の名医がいます。鼻整形が得意な医師、二重まぶたが得意な医師、あごの整形が得意な医師などさまざまです。先生はどの部分の整形もお得意なようですが。

杉浦 ええ、美容整形では技術だけではなく、審美眼も試されます。私は眼や鼻を整形するだけの医師ではありません。顔面部すべての美容整形項目に精通しており、経験も豊富です。

美容整形とは、実は目鼻立ちのバランスをさらに良くするように調整することです。人は千差万別で、美容整形で全員を同じ顔にはできません。個人の骨格、顔の形、五官のバランスを調整しますので、すべての部分を熟知していてようやく可能になるのです。

特定部位だけの医師は、特定部位の経験としてはレベルは高いはずだと思います。でも、全体のバランスはどうでしょうか。患者様が鼻を高くしたいといえば鼻を高くする事は出来たとしてもその顔のバランスにあった高さかというとそうでは無い可能もあります。患者様は素人ですので、いかに患者様の本当のニーズを読み取り患者様を満足させることが重要と考えます。

美容整形は、生まれつきの欠点を調整するためのものであり、さらに見た目のバランスを良くすることですので、元来の顔とはまったく違う絶世の美女に変身させることではありません。ある医師はメスを使い、ある医師は埋没法を使い、ある医師は注射だけで理想的な状態にすることができます。私は過剰な美容整形は行わず、動かす部位を極力小さくし、最も簡単な方法で理想の状態に近づけます。

美容整形は外見だけでなく
内側も変える

—— 以前、「整形顔」といえば、軽蔑する語気がありましたが、近年では美容整形はどんどん身近なものになっています。美容整形した人がSNSで公開していたりもします。美容整形はどんな変化をもたらすのでしょうか。

杉浦 美容整形は人生を変えると言っても過言ではないでしょう。私の患者様の中にも、美容整形の結果、男性との交際に自信が持てて順調に結婚にゴールインした人もいれば、外見のせいで小さい頃からいじめられていたのが、美容整形後は積極的に人付き合いができるようになり、サービス業についた人もいます。

美容整形は外見上で気になるところを改善するだけなのですが、予想外の積極的な精神的効果が得られるのです。私の患者様で75歳の方がいましたが、彼女がフェイスリフトの施術を受けたときには、すでに肺ガンの末期で余命数カ月でした。この世を去る前に宿願を果たして、きれいになりたいと希望されたのです。目袋の除去、しわ取り、フェィスリフトの施術をした後、どうなったと思いますか。若く変身しただけではなく、ガンさえも克服し、90歳の誕生日をお祝いしました。

決心して死に直面した女性が、若返った後、生きる希望が湧いてきて、数カ月だった余命が15年以上延びたのです。この15年間、彼女のガンは他の部位に転移しましたが、医師の助けのもとで克服しました。美容整形は精神力を強くし、彼女の体も強くしたのです。外見が若返ったことで、彼女の体の動きと健康年齢もそれにしたがって若返ったのです。

このような事例は社会学、経済学の視点からもすでに多くの例が検証されています。女性が化粧品にお金を使えば使うほど、社会の経済も上向きになるという統計があります。中国社会の発展の軌跡を見てもこの理論が実証されています。中国経済が発展した現在、中国女性はますます美容に関心を持ち、さらに若くなりたいと希望しています。この種の「若さ」は、その社会に活気が満ちていることを物語っています。

日本は依然として
アジア人に人気

—— 日本の著名な美容整形外科医として、よく海外に招かれて講演や実演をされています。先生からご覧になって日本の美容整形技術は世界でどんなレベルにあると思われますか。

杉浦 現時点では、やはりアメリカが世界最高レベルにあります。しかし、西洋人とアジア人とは人種が違い、顔面部の違いも大きいのです。アメリカ人は二重まぶたを必要とする人は少なく、小顔をつくる骨形成の需要も少ないです。

アジア人にはアジア人独特のきめ細やかな美しさがあります。ですから、アジア人の美はアジア人の医師に任せるのが理想的です。中国は近年技術の進歩が著しく、皆さん積極的に学んでいますし、また中国の美容整形の市場も大きいので、施術数から見るとすでに日本を超えて世界第二位となっています。データからは、中国の美容整形人口はすでに世界一となっています。

しかし、国情と条約の規制によって、先進的な機器と機材の多くは中国でまだ使用できません。よって、現段階ではアメリカが世界一ということになりますが、アメリカの美容整形医師はアジア人のニーズをよく理解していません。中国と韓国の施術の技術レベルは向上し続けているものの、多くの製品や機材を使うチャンスがないことから、経済的な条件がクリアできる場合には、名声を慕って日本を選択する人が多いのです。