古山 登隆 自由が丘クリニック理事長
アジア人のための安全・安心な美容医療を

近年、中国では美容医療のニーズは高まる一方である。そんな中、日本の美容医療の老舗である自由が丘クリニックの古山登隆理事長は、世界各国で開催される学会や催しに日本人として唯一招待されるだけでなく、2017年に北京大学出版社から刊行された注入技術教科書の副編集長を務めた。アジアだけでなく世界が注目する日本の美容医療の現在と、今後の中国の美容医療の展望について語っていただいた。

地域の人たちに安全に喜ばれる医療を

—— 自由が丘クリニックは、東京の中でもセレブが集う高台で、ハイレベルの技術とサポートを提供なさっていますが、ほかのクリニックにはない、貴院の最大の特徴は何でしょうか。

古山 1つは歴史です。われわれは、この場所に今から23年前、1995年にオープンしました。それ以前に、一番最初につくったクリニックが千葉にあり、グループ全体では30年以上の歴史があります。日本のクリニックで30年以上の歴史があるところは少なく、日本の老舗のクリニックの1つがこの自由が丘クリニックだと思っていただいて間違いないと思います。

また、今まで雑誌とかテレビの広告は一回も出したことがないのも特徴の一つです。大きな広告でたくさん患者さんを集めて、たくさんの数をこなすというよりは、この街で地域の人たちに安全に喜ばれることをやっていこうというスタンスでスタートしました。では、どうやって集客できたかというと、ほとんどがメディアの取材によるご紹介です。

—— 美容医療に関して、トップドクターが集まり、大学病院のようなチーム医療を組んでおられますが、患者さんにとってどのようなメリットがありますか。

古山 美容医療というのは、一歩間違えると、極端に商業的に走ってしまいます。基本は医療ですから、お金もうけばかりに走るのではなく、きちんとした医療としての考え方を持ち、トレーニングを受けた先生方が集まっている所の方が、適切な医療ができると考え、そのために大学の先生方に協力していただいております。

それは、当院の特徴の1つにもなるのですが、大学病院で培った安全管理、薬とかの管理も含めて、しっかり徹底していて安全性がすごく高いというのがあります。それから、大学というのはチーム医療の発想でやっています。普通のクリニックですと、例えばフェイスリフト、二重まぶた、鼻を高くする、骨削りなど、それぞれの手術のレベルにどうしても差が出てしまいます。これだけ美容のフィールドが広がってきますと、1人のドクターが全部をやるというのは無理です。

そうなると、いろんな分野の考え方がきっちりしている専門家が集まっているところが一番しっかりした医療ができるという考えです。当院は、各分野のスペシャリストの先生がそろっているので、どのような場合でも、日本でトップレベルの治療を受けることができるというのが大きな特徴です。

中国で高まる美容のニーズ

—— 2018年の5月、武漢市で開催されたアジア最大級の美容医療学会「MEVOS ‘18」に、日本人として唯一招待されて、最新手技の実演と講演をされました。現在、海外では、日本の美容医療のレベルをどのように評価していますか。

古山 アジア人の美容医療ということだけに限定しますと、今世界で一番レベルが高いのは、当院であると自負しております。武漢での学会は延べ8000人のドクターが中国全土から参加した大きな催しでしたが、2018年は6月にも成都で開催された「第一回成都国際美容医療産業大会」に招待され講演もしました。また、2017年に、ストックホルムで開催された大きな学会に呼ばれました。手腕というか、ファカルティーとしてアジア人を初めて呼んでいただいたのですが、そこでの講演内容は「アジアの美容」に関することでした。世界中の先生方及び関係者が、アジアの美容に大変関心を持っているのは事実です。

それは、もちろん中国の先生方も、韓国の先生方も、われわれも切磋琢磨しながらやっているからですが、日本の特殊性としては、正確さとか安全性とか、細かさとか、そういう点で非常に優れているのです。きっちりとした治療を、綿密なプランのもとにきちんとやっていくということにおいて、日本の技術は優れていると思います。

—— 近年中国でも、美容医療のニーズが高まっていますが、そうした風潮をどのように見ていますか。

古山 これからもっと増えていくと思います。やはりどの国もみんな豊かになって来て、物から次はクオリティーオブライフ、人生をどうやって生きていくかです。そのときに、若い頃はできるだけきれいで生きていきたい。当然ですよね。そして年を取ったら、できるだけ若く生きていきたいと思うものです。

デンマークのある論文では、913組の双子中913組とも若く見えた方が長生きしていたというデータが示されています。それから、やはり女性の方が長生きするようになったことですね。女性の人生のイベントは、例えば出産や結婚とかは40歳ぐらいでまでで終わって、まだ半分以上残っています。そうしますと、「この先も長いぞ」というのを、女性は勘がいいですからだんだん気付き始めます。できるだけ残りの40年以上をどうやって若く素敵な人生を送るかというのを、考えるようになってきます。

こうしてみますと、これから中国の美容のブームというのは、もっともっと増えてくると思います。もともときれいな方が多いのですが、さらに磨きをかける時代が来ると思います。

「美の主治医」は良きアドバイザーに

—— 古山先生は注入療法によるアンチエイジングの第一人者ですが、今後、中国の美容医療との連携などはお考えになっていますか。

古山 中国の美容医療への関心は年々高まっています。連携ということで言えば、先ほどお話しした成都市ですが、成都市は美容意識の高いところで、「成都美人」という言葉もあるほどです。当院は、その成都市の事業を盛り上げていくために美容医療業務の連携契約を同市と結びました。

おそらく今開発されている技術は欧米のものが多いのですが、これからは東洋人としての手法を、例えば中国の方、それから韓国の方、日本の方、そういうアジアの方に対して技術のよりよい使い方、よりよい結果の出し方、その人の魅力の出し方について、これから中国の先生方やアジアの先生方ともっと議論ができるといいなと思っています。

東洋人の美の基準というか、美しさに基準があるかどうかについても、また別の議論がありますが、各国によって特徴があっていいと思います。日本の美容の特徴をあげるとすると、日本料理と同じように、食材を大事にするような形で、ナチャラルルッキングといいますか、割とソフィスティケートされた美しさをクリエイトしていくのが、多分われわれの役目だろうなという感じがします。

—— 古山先生から見て、「美の主治医」とはどういう存在ですか。今後、アジアの人たちの間で美のブームは、どんなふうになりそうでしょうか。

古山 僕が考えている美の主治医というのは、1つは、若い頃はその人のよさを一番引き出すことです。それは、みんな同じ顔になるのではなくて、それぞれ持って生まれた良さの中で、どうやってその良さを引き出すか、魅力的になってもらうかというのがわれわれの仕事だと思います。

ただ、どんなに若いときに魅力的で美しくても、誰もが年をとります。これはどんなお金持ちの人も、どんな偉い人も、みんな平等に年をとっていくわけです。美しい老化というのはなかなかありません。魅力的な老化はありますが、美という点で言えば、どうしても落ちていってしまいます。そうすると、できるだけ若い頃の美しさをナチュラルに保ちながら、長い人生を送っていってもらうことのアドバイスができること、それが「美の主治医」だと思っています。

それから、アジアではこれからどうなっていくかということですが、もっともっと増えてきますし、世界中の目がアジア人の美しさとか、アジア人の美容技術とか、それに必ず集まってきます。ですから、今これに携わっているアジアのドクターたちは、みんなで協力しながら、さらにアジア人をどうやってもっと魅力的にしていくかということを考えていくべきであり、今ちょうどそういう時期に入ったなという気がしています。