津田永明(医療法人社団蘇生会理事長) 馬淵順久(医療法人社団蘇生会 蘇生会クリニック院長)
手術や薬を使わずに、がんを治す
医療法人社団蘇生会 蘇生会クリニック サイバーナイフセンター

近年、サイバーナイフ(高精度定位放射線治療装置)によるがんの治療は、最新型装置の開発によって、以前のように脳だけでなく体幹部への治療も急増、世界的にも注目されている。日本でも2008年から体幹部治療に保険適応が認められたが、蘇生会では早くからこの装置に注目し、2002年の導入に続き、2013年には最新型の全身治療用サイバーナイフを西日本では最初に導入し、治療にあたっている。「なぜサイバーナイフ治療をするのか」との問いに津田理事長は、「もし私ががんにかかったら、この治療をしてもらいたいからです」と語った。

医療法人社団蘇生会理事長津田 永明
医療法人社団蘇生会蘇生会クリニック院長馬淵 順久

 

痛みも痒みも無く入院の必要もない

—— サイバーナイフの特徴と、貴院が導入された経緯について、簡単に説明していただけますか。

津田 約20年前、原発性脳腫瘍や転移性脳腫瘍を、開頭手術することなく、ピンポイントで治す方法は、ガンマ線を使ったガンマナイフ装置のみでした。

しかし、私は脳腫瘍を含めて、ピンポイントで全身のガン治療も根治可能な治療法はないものか調べていました。そして、私の希望に合致する装置がようやく見つかりました。それが、2015年4月導入後2年経過しましたが、多くのガン患者様に喜んで頂いてます。

馬淵 サイバーナイフ治療の特徴は、いわゆるピンポイント治療です。病巣に対して多方向から放射線を照射することによって、病変だけに放射線を集中することができ、周囲の正常組織を傷めることがないのです。従来の放射線治療は、病巣を含めて比較的広範囲に照射していましたので、どうしてもその周囲の障害が問題になるわけです。

定位放射線の技術は、そのほかのリニアック(放射線発生装置)でも最近できるようにはなっていますが、サイバーナイフは専用装置で、最も精度が高いといわれています。例えば、治療中の患者さんは動くことがあるわけですが、その動きを装置が感知し、動きに合わせて病変に正確な照射ができます。

 

—— いろいろな部位のがんがありますが、サイバーナイフ治療に最も適した疾患はあるのでしょうか。

津田 やはり最も適しているのは転移性脳腫瘍です。日本では最近、高齢化とともに、がん患者さんが増えています。それに伴って、脳への転移が増え、当院でも一番治療件数の多いのは転移性脳腫瘍の患者さんです。脳へ転移すると、直接生命にかかわります。

馬淵 脳転移だけでなく体幹部治療、例えば転移性肺がんや転移性肝臓がんなどに対してもサイバーナイフで治療を行っています。転移の程度にもよりますが、原発巣がきちっと制御されていて、肝臓とか肺に2~3個ぐらい転移があるといった場合、オリゴメタ(少数転移)といって専門的な表現をしますが、そのような場合は、転移巣に放射線を当てて治療することによって予後はかなり改善されます。

 

—— 放射線治療といいますと、放射線の影響を心配をされる患者さんもいらっしゃると思います。

馬淵 一番気にされているのは、放射線治療後の「2次がん」で、それについては蓄積されたデータがあります。通常の放射線治療の場合、周囲の臓器が被曝するわけです。何年か先、10年、20年先にどの程度、がんが発生するかということですが、データ上では、0・数%ぐらいリスクが上がるという程度です。

サイバーナイフでは、病巣だけのピンポイント治療なので、ほとんど正常組織には当たらないわけですから、2次がんの心配はほとんどないと考えてけっこうです。

 

—— サイバーナイフの診療回数、診療時間はどれくらいですか。

馬淵 治療の回数は、病変によって異なりますが、例えば転移性の脳腫瘍、小さな1個であれば1回で終わります。ある程度大きなものは3回程度です。脳幹や視神経など、重要な場所にできているものに関しては5回程度です。場所によっては、正常組織に当たると、障害を来しますから、問題となるような場所に関しては、1回の線量を下げて、分割回数を増やします。肺がん、肝がんに関しては5回、転移性に関しても5回です。肺がんの場合1日おきなので、9日間の治療です。

治療(照射)自体の時間は30分ほどです。セットアップなどを含めると、ほとんどの方が1回1時間以内に治療を終えれます。

 

中国の患者のお役に立ちたい

—— サイバーナイフなど放射線治療は中国でも関心が高まりつつあります。

津田 外科治療と違い、放射線治療は体に傷をつけることはありませんし、通院で治療できます。痛みもかゆみも一切ありません。それが非常にいい面です。

また、がんには転移していたり、大きなものもあるので、その場合は化学療法をしてもらって、その後、小さくなったものに放射線を当てると、さらに効果的で、延命効果も期待できます。

馬淵 日本の外科医は手術が上手ということもあり、何でも切りたがるわけですよね(笑)。しかし、欧米では、放射線治療は、がん患者の60%ぐらいに受け入れられています。ちなみに日本では25%です。世界的には放射線治療は認められているのです。

津田 どうしてこんな高額なサイバーナイフ装置を導入したのですかとの問いに、もし私ががんにかかったら、外科治療と変わらない効果のある放射線治療がベストと思ったからです。

当院では、サイバーナイフによる放射線治療で、中国の患者さんのお役に立てればと考えております。