渡辺 貢 株式会社渡辺オイスター研究所
中国医学のルネサンスの推進に尽力したい

株式会社渡辺オイスター研究所は日本で初のカキ肉エキス錠の開発に成功し、「人間性豊かな健康文化の創造で人々の幸せに貢献いたします」との企業理念を掲げ、2003年度より連続で東京八王子市優良企業ベスト25社に選ばれている。北京大学病院保健医学学術顧問、世界かき学会日本支部長で博士(医学)であり、博士(畜産学)でもある渡辺貢代表取締役社長は取材に対し、「私は微力ですが、中国医学のルネサンスの推進に尽力したい」と語った。また、氏は北京大学から北京大学教育貢献賞を受賞している。

カキ肉から世界初の新規抗酸化物質を発見

—— 御社は学術を重視した展開をされていますが、なぜですか。

渡辺 当社は人間性豊かな健康文化の創造を企業理念で掲げています。文化創造には、学問が必要不可欠との観点より、学術を重視した展開を行っています。これまでヒトの健康に対する牡蠣肉の有用性を長年研究し、カキ肉エキスの機能性を明らかにしてきました。そうした中、世界で初めてカキ肉中からの新規抗酸化物質(E6)の発見に成功を収めています。

体の中にある活性酸素には殺菌作用があり、体に必要なものですが、多くあり過ぎると自分の心と体を傷つけてしまいます。E6はすばらしい新規抗酸化物質で脳内移行性が良く、脳内の活性酸素を軽減することが確認されています。また、ストレス社会における不眠等の睡眠障害改善にも関与することが観察されています。

文化性の高さを重視し会社を発展させる

—— この度、新社屋が完成し、国立大学並みの研究施設になると伺いました。1983年の会社設立以来、発展し続けている要因は何ですか。

渡辺 それは文化性の高さを重視してきたからです。著名な歴史家であるトインビー博士は「20世紀は戦争の世紀であり、経済至上の世紀であった。21世紀は文化性の高いところが繁栄する」と述べています。

文化が発展するところには、必ず文化の交流があります。文化交流には様々な形がありますが、「東洋の文化」と「西洋の文化」の交流も重要です。

東洋の伝統的な科学の宝庫がどこにあるかと探求するうちに、中国の明代の古典医学書の『本草綱目』に着目しました。その中に父が研究していた牡蠣肉の記述があったのです。それは「牡蠣肉は煮て食すると虚無感、心理的な患いを癒し、身体の調子を整え、丹毒を治し、飲酒後の熱を下げ、のどの渇きを癒す。炙って食すると大変美味しく、また肌のきめを整え、皮膚の色を美しくする」という部分です。

私は『本草綱目』をもとに新たな文化を興隆させようと発心しました。研究が進むにつれ、『本草綱目』の優位性、先見性に感銘を受けました。もし『本草綱目』と「現代科学」の融合がなければ、新規抗酸化物質(E6)の発見もありませんでした。中国文化のおかげで当社は繁栄することが出来たのです。

中国医学のルネサンスの推進に尽力したい

—— 中国と交流するようになったきっかけは何ですか。

渡辺 それは、EUの父と呼ばれるクーデンホーフ=カレルギー伯と池田大作創価学会会長との対談集『文明西と東』(1972年)の中で池田会長が述べられた「西洋の知識と、東洋の智慧とが啓発融合し、止揚されることによって、はじめて人間のために真に新しい文明が誕生する」という考え方に共鳴したからです。

この「人類の平和に貢献できる文化の創造」との命題に、自分の使命は何か真剣に悩んだ末、自身の専門である食品学の分野でお役に立とうと決めました。

中国は東洋を代表する国です。1992年、北京大学を初訪問しました。北京大学病院の院長との懇談では、中国医学の優位性について、中国医学と西洋医学の結合と止揚の重要性について語り、そして「私は微力ですが中国医学のルネサンスの推進に尽力したい」と伝えました。

「『本草綱目』に書いてあることが本当かどうか証明し、そして現代医学を用いて、さらに素晴らしい医学を創造する。つまり、東洋医学と西洋医学の結合により中国医学をよみがえらせるという意味で中国医学のルネサンスです。それをお手伝いさせていただけますか」と話したら、院長は「それは素晴らしいことだ」と言ってくださり、現在まで25年にわたる交流が始まったのです。

中国文化に誇りを持ち世界の繁栄に貢献してほしい

—— 中国に対してどのような気持ちをお持ちですか。

渡辺 当社は、『本草綱目』のごく一部を、現代の最新科学で証明しただけです。『本草綱目』の中で牡蠣肉の記述は全体のわずか0.02%でしかありません。まさに『本草綱目』は宝の山です。中国の皆さんは中国文化に誇りを持ち、世界の人々の繁栄に貢献し、さらに尊敬される人々になってもらいたいと思います。

中国は、ものすごい文化を内在しています。それを世界に証明し、提供するだけで、世界の文化を末永くリードし更に尊敬される国になることを強く確信しています。私は中国が大好きですから(笑)

取材後記

恒例の揮毫をお願いすると、「誓いし願 やぶるべからず」と書かれ、次のように話された。「私は学生の時に、人類の平和に貢献したいという誓いをたてました。企業の目的は利潤追求ではありません。『人間性豊かな健康文化の創造で人々の幸せに貢献いたします』という当社の企業理念がイコール私の志です。その志を破るべからずということですね」。