溝口善兵衛 島根県知事に聞く
島根式のスローフードを、ゆっくりと味わっていただきたい

島根には本物がある――八百万の神々と人との縁が息づく日本神話原点の地「出雲」、かつて銀の産出量世界一を誇った世界遺産「石見銀山」、南国と北国の生物が共存できるミステリアス島「隠岐」、EXILEメンバーが紹介するプロモーションビデオは圧巻だ。取材に対し、溝口善兵衛・島根県知事は「豊かな自然の恵みの中で造られた島根の食と酒を味わいに、是非島根県へお出でください」と話した。


島根県提供

中国からの観光誘客を強化

—— 中国からの観光誘客の取り組みについて、お聞かせください。

溝口 中国からの宿泊旅行者は年々増加していまして、2014年は延べ宿泊者数が約4,600人で、2015年も増加しています。

しかし、大都市部での増加に比べるとまだまだ少なく、島根県では中国を重点地域のひとつとして位置づけておりまして、中国からの観光誘客の強化に努めています。

島根県には、世界遺産の石見銀山遺跡や国宝の松江城、出雲大社などに代表される古き歴史や文化、世界ジオパークに認定された隠岐の島の自然景観などがあります。

大都市とは違う観光地を求めるリピーター層や個人旅行者にとりまして、島根県を「訪れるべき場所」として認識していただけるよう、取り組みを進めてきています。

また、最近、中国からクルーズ客船による来訪が増えており、クルーズ客船を誘致することは、更なる誘客の拡大に繋がります。

さらに、4月には行政と民間事業者で構成する「山陰観光推進機構(仮称)」を設立します。お隣りの鳥取県と連携して、海外プロモーションやマーケティングに基づく魅力ある観光地域づくりを行うなど、中国を始め海外からの誘客に取り組みます。

豊かな自然の恵みの中で造られた食と酒

—— 島根県の特産品は何ですか。

溝口 島根県には恵まれた自然環境によって育まれる農林水産品が数多くあります。県内の各地に広がる中山間地では、大きな寒暖差のある気候とミネラルが豊富で清らかな水のおかげで甘くてうま味たっぷりなお米が育ち、高齢の方々が元気に農業をされています。

また、日本有数の水揚げを誇る浜田漁港では、本県の代表的な特産品「あごの焼き」の原料である県の魚・飛魚、そして脂の乗りや甘さが抜群の高級魚・ノドグロなど、美味しくて新鮮な魚が水揚げされ、日本全国へ出荷されています。

これらの天然素材の持ち味を活かすために、機械化や人工的な物質などを極力避けて、昔ながらの丁寧な手仕事でたっぷりと時間をかけ、さらに美味しく加工する技術も発達しています。

こうして造られた島根式のスローフードを、ゆっくりと味わっていただくことで、品々に込められた造り手の思いがより伝わることと思います。

例えば、出雲市にある佐香神社は、日本酒発祥の地として、杜氏や蔵元など酒造り関係者からの厚い信仰を集めています。日本酒発祥の地・島根県の各酒蔵では、こうした伝統をふまえ、手作り、地元産原料にこだわった旨い日本酒造りに取り組んでいます。

島根県から中国への輸出はまだ少ないのですが、豊かな自然の恵みの中で造られた島根の食と酒を味わいに、是非島根県へお出でください。

海外企業との業務提携が最も多い国は中国

—— 経済・青少年交流など、中国との交流についてはいかがですか。

溝口 島根県は、1993年に寧夏回族自治区と友好提携協定、1994年に吉林省と友好交流の覚書を交わし、以降、JETプログラムによる国際交流員(寧夏93年から、吉林95年から)や県立大学での県費留学生受入れ(寧夏02年から、吉林01年から各地域2名ずつ)、伝統芸能団等の派遣・受入など、日中双方での青少年交流活動などを20年以上に渡り幅広い分野で交流を続けてきました。

寧夏回族自治区と県との友好提携のきっかけとなった島根大学と寧夏大学との交流については、1985年からスタートし2004年に寧夏大学内に設置された国際共同研究所では、持続可能な農村の維持や、農地の砂漠化防止などの共同研究が実施されています。

また、1997年からは、民間団体の呼びかけにより、寧夏での植林活動が続けられており、延べ1,000人以上の県民が参加しており、2007年からは、JICAと連携し、両県区の技術職員の派遣指導・受入研修による、寧夏の河川の水質改善に関する技術協力に取り組むなど交流は深まっています。

吉林省とは、県内企業との経済交流や、図們江開発への調査協力を行うため93年から交流が始まったもので、今後は、有機栽培など農業分野における技術交流を予定しております。

また、島根県の企業が、海外現地での工場設置や、海外企業との業務提携の件数が最も多い国は中国であり、経済的にも強い結びつきがあります。貿易については、鉄鋼、機械、自動車部品、電子機器、人造繊維を中心に輸出入が活発に行われています。

真面目で粘り強い県民性

—— 島根県の県民性について、教えてください。

溝口 島根県へ進出された企業経営者の方などと話しをする際によく言われることは、「島根の方は一旦雇用すると長い間まじめに勤めてくださる方が多いので助かる」ということです。大都市では、そういう人材を確保することが難しいこともあり、人材を求めて島根に立地を考えているという企業が非常に多いわけです。

また、私も県下各地を回って感じることは、真面目に粘り強く働く人が多いということです。

やはりそれは、島根には、古くから豊かな自然があり、古き良き伝統や歴史があるからだと思います。

今でも豊かな地域社会が残っており、そういう中で、真面目に粘り強く働くという県民性が培われてきたんだろうと思っています。