石井隆一 富山県知事に聞く
“世界で最も美しい湾”の『富山湾鮨』で中国人をおもてなし

立山・黒部などの世界的な自然景観やユネスコが支援する「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟が承認された富山湾などの雄大で美しい自然や、多彩な歴史・文化、新鮮で美味しい海・山の幸など、魅力満載の富山県。取材に対し、石井隆一知事は「ネタの全てが富山湾の新鮮な旬の幸で、美味しい県産米を使った『富山湾鮨』を清冽な水で仕込んだ富山の地酒と合わせて、中国の皆さんにぜひ召しあがっていただきたい」と話した。

中日の自治体交流の模範

—— 富山県と中国との交流について教えてください。

石井 本県は、日中友好に生涯を捧げられ、故・周恩来元首相とも親交のあった故・松村謙三先生のふるさとであり、中国に対する友好感情が強い県といえます。大連と上海に直行便を持ち、遼寧省を中心に経済、観光、文化、スポーツ、環境など幅広い分野で様々な交流を積み重ねてきました。こうした両県省の交流は、2009年に李克強総理(当時、副総理)とお会いした際、「両国の自治体交流の模範である」と高く評価をいただいています。

2014年に、友好県省締結30周年を記念し、友好代表団を率いて遼寧省を訪問した際には、李希省長(当時)との間で、留学生・研修員の相互派遣や日本語を学ぶ大学生・高校生への奨学金の支給、遼河等の水質調査や自動車排出ガスの共同調査研究、本県からの38社46事業所の進出などのこれまでの成果を活かし、交流・協力関係をさらに深化するための協定書を改めて締結し、Win-Winの関係を充実させていくこととしました。

環境施策を世界にPR

—— 中国との環境協力、G7富山環境大臣会合については?

石井 本県は、中国をはじめ北東アジア諸国と環境分野での交流・協力を重点的に進めており、これまでも国連の北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の地域調整部の設置、日中韓の3カ国環境大臣会合の開催、併催した「北東アジア環境パートナーズフォーラムinとやま」での「とやま宣言」(黄砂の視程調査、青少年の環境教育、環境技術情報の共有等)の採択と実行などの成果を挙げてきました。

本年5月、本県富山市で、先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先立ち開催される「G7富山環境大臣会合」の開催が決定しています。これは、本県が「環日本海地域の環境・エネルギー先端県」を目指し、前述の活動に加え、県内全域でのレジ袋の無料配布廃止や「水と緑の森づくり税」による県民参加の森づくり、全国トップの小水力発電の導入促進、立山のライチョウ保護など貴重な自然環境の保全等に取り組んできたことや、富山市の「環境未来都市」選定などが高く評価されたものと考えています。

この貴重な機会に、本県の環境施策を世界に向けてPRするとともに、立山・黒部などの世界的な自然景観やユネスコが支援する「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟が承認された富山湾などの雄大で美しい自然、多彩な歴史・文化、新鮮で美味しい海・山の幸などの本県の魅力を大いにアピールしたいと思っています。


立山雪の大谷(平成28年5月、本県でG7富山環境大臣会合開催予定)

「富山湾鮨」でおもてなし

—— 中国からの観光誘客にどう取り組みますか。

石井 中国からはもっと多くの皆さんに本県を訪れていただきたいと思っております。昨年2015年3月に北陸新幹線が開業し、東京からの所要時間が約2時間となりアクセスが飛躍的に向上したほか、中国人観光客に人気のアウトレットモールなどの大型商業施設もオープンし、観光客数は前年の3倍以上となりました。

中国をはじめ外国からの旅行者のさらなる受入れに向けては、首都圏と富山、金沢などの北陸、関西圏を結ぶ「新ゴールデンルート」や「昇龍道」(能登半島の形を龍の頭に、東海北陸道を胴体に、各々見立てると、神秘的な昇り龍のように見えることから名付けた名古屋-高山-富山などを結ぶルート)などの広域観光ルートの開発や外国語案内、無料Wi-Fiなどの整備、多様な文化・習慣を持つ旅行者への配慮や要望に対応できる人材の育成など、利便性と満足度の向上を図ります。

今後とも、トップセールスによる現地での観光説明会の開催や外航クルーズ客船の誘致、メディア等の招聘、「微信」などのSNSを活用した個人向け観光情報の発信や誘客などに取り組んでまいります。

—— 知事一押しの県の特産品は何ですか。

石井 富山湾はブリ、シロエビ、ホタルイカ、ベニズワイガニなど“きときと”(富山弁:新鮮で活きが良いの意)な食材の宝庫で、それらをまとめて一度に味わえるのが、「富山湾鮨」です。ネタの全てが富山湾の新鮮な旬の幸で、美味しい県産米を使ったお寿司に富山らしい汁物が付いたセットで、人気が高まっています。県内約60店舗で楽しめますので、清冽な水で仕込んだ富山の地酒と合わせて、中国の皆さんもぜひ召しあがってください。

富山の財産は「人」

—— 富山県の県民性は?

石井 富山県民は、勤勉で粘り強く、先見性と進取の気性に富み、東京など大都市地域から富山県に立地した多くの企業から、当該企業に対する勤労者のロイヤリティーも高いなどの評価をいただいています。

また、私自身、知事に就任以来、様々な分野で常に向上心を持って、知恵を出し、汗をかいてひたむきに努力されている多くの方々にふれ、「人」が富山県の財産だと実感しています。

本県は、かつては水害など災害の多い県でしたが、それを克服し、今では、持家率や一人当たり住宅延床面積が全国1位、教育水準や子育て環境も全国トップクラスで、全国で最も住みやすい県と評価されるようになりました。こうした優れた県民性は、本県の自然、風土、歴史、文化の中で、先人の皆さんが営々として築いてこられた努力の積み重ねのたまものであり、今後ともこれを引き継ぎ、さらに発展させてまいります。