今、岐阜県の誇る財産が世界の脚光を浴びている。先ごろ、長良川の鵜飼に代表される「清流長良川の鮎」が国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定された。そのほか岐阜県には数々の遺産がある。世界文化遺産の「白川郷」、無形文化遺産の「本美濃紙」、世界かんがい施設遺産の「曽代用水」に加え、高山祭、古川祭、大垣祭の「山・鉾・屋台行事」は無形文化遺産候補となり、杉原千畝の「命のビザ」は2017年の世界記憶遺産の登録審査を待つ。まさに「遺産の宝庫」だ。岐阜の地域資源を「清流の国ぎふ」ブランドとして世界に発信する古田知事に、中国との交流、誘客の取組み、そして岐阜の魅力について語っていただいた。
人と人とがつながり、相互に理解し合う交流を
—— 中国との交流について教えてください。
古田 岐阜県では、1988年に中国江西省と友好提携を締結し、人的交流、農業・林業分野での技術協力など幅広い分野で交流を続けています。友好提携25周年となる2013年には、代表団の相互派遣、二胡や書を通じた交流など友好関係のさらなる発展につながる記念事業を行ったところです。
本県では、国際交流の推進にあたり、一過性ではなく、地域に根をおろした持続的なものとすることを重視しています。このため、県としては交流のきっかけを作りつつ、市町村や県民の交流の後押しを続けるということを基本的な考え方としてきました。
四半世紀を超える江西省との交流でも、県と省の関係から、海津市と同省、安八町と同省豊城市といった県内市町の交流、岐阜経済大学と江西師範大学との留学生交流、さらに、県内の民間交流団体による江西省での植林活動等へと発展してきました。
グローバル化が進展し、海外との相互依存関係が深化する中、人と人とがつながり、相互に理解し合うことはとても大切であり、今後もこうした交流を継続していくことが必要だと感じています。
国内外の歴史ファンに関ケ原をアピール
—— 中国からの観光誘客についての取り組みは?
古田 中国本土から本県への旅行者の宿泊者数は、2015年の1月から10月までの統計で14万人を超えました。前年比3倍にせまる勢いで伸びています。
とりわけ、中国の皆さんには、ユネスコ世界文化遺産の白川郷や、伝統的な街並みが残る飛騨高山、日本三名泉の下呂温泉が人気です。
こうした北部の観光地に加え、本県では、西部に位置する関ケ原古戦場の活性化にも取り組んでいます。関ケ原は、徳川家康による天下統一を決定づけた決戦の地。国内の歴史ファンはもとより、海外の方にもより多くお越しいただけるよう、古戦場巡り、東西文化の交流体験など、さらなる魅力向上に取り組んでいきます。
今後、中国からは、個人の旅行客が増加すると見込まれています。このため、その重要な情報源であるソーシャルメディアを活用したPRにも力を入れており、たとえば、中国で最も人気のあるツイッター「新浪微博」での情報発信や、中国の著名なブロガーの招聘を積極的に行っています。また今年1月には、岐阜県を実際に旅行したことのある中国の方が、岐阜の生の情報を一般の方に直接伝える「旅行体験共有会」を上海で開催したところ、「岐阜県に今すぐ旅行したい」といった声が聞かれるなど、大きな手応えを感じました。
さらに、内陸自治体としては珍しいのですが、近年増加している外国からの名古屋港、金沢港、富山港などへのクルーズ船客を県内に積極的に誘致する取組みも始めたところです。
こうした取組みを通じ、より多くの中国の皆さんにお越しいただき、岐阜県の大ファンになっていただきたいと思います。
「清流の国ぎふ」ブランドを世界に発信
—— 岐阜県の魅力や県民性について教えてください。
古田 日本のまん真ん中にあるという地の利、自然や地域文化などの豊かな地域資源、ここぞというときには信じられないほどの力を発揮する県民性、これが私なりに感じている岐阜県の強み、魅力です。そしてこの魅力の源は「清流」です。岐阜県は約8割が森林で、その豊かな森林が育む清らかな水に恵まれた「清流の国」。長良川の鵜飼や飛騨牛、鮎、富有柿などの食材、美濃和紙、関の刃物といった地場産業などの優れた産品はいわば清流の「賜物」です。本県は、清流から生まれ、育まれた県であります。
こうした魅力を「清流の国ぎふ」ブランドとして世界に発信しています。昨年、清流の代名詞である「清流長良川の鮎」が世界農業遺産に認定され、「曽代用水」が世界かんがい施設遺産に登録されました。一昨年にユネスコ無形文化遺産に登録された「本美濃紙」に続き、「清流の国ぎふ」の誇る財産が世界で認められています。
飛騨牛と関の刃物が大人気
—— 岐阜県の特産品について教えてください。
古田 岐阜県が誇るブランド和牛「飛騨牛」は、海外の方にも大変好評です。「とても味わい深く柔らかい」「ジューシーで今までに食べたことのない食感が印象的」といった感想をいただいています。近年、アジアを中心に海外への輸出が大きく伸びており、また昨年7月にはフランス、イギリスをはじめとしてEUへの本格的な輸出も開始しました。
また、美濃和紙は、1300年の歴史を誇り、その繊細かつ柔らかみのある独特の肌ざわりに国内外から高い関心が寄せられています。さらに最近、特に海外からの人気が高まっているのが、名刀の産地として知られる関の刃物です。中国のお客様にもたくさんの包丁を買っていただき、その切れ味、デザインともに素晴らしいと大変好評です。
一昨年、こうした様々な岐阜の特産品を取りそろえた店「THE GIFTS SHOP」が、交通の要であるJR岐阜駅直結の場所にオープンしました。飛騨牛や日本酒などの食品、関の刃物や東濃の美濃焼などのキッチン用品、飛騨の木工品など、清流に育まれた岐阜の魅力がすべてそろっています。そして、これを世界10カ所のセレクトショップに展開していきます。中国の皆さんにもお越しいただき、「清流の国ぎふ」が生んだ逸品を手に取っていただきたいです。
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