平井 伸治 鳥取県知事に聞く
鳥取県には中国と信念を持って交流するDNAがある

「蟹取県」として“ウエルカニ”キャンペーンを実施中の鳥取県は、鳥取砂丘、大山をはじめとする雄大な自然と「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる、「名探偵コナン」の青山剛昌の出身地としても有名である。取材に対し、鳥取県の平井伸治知事は「鳥取県には中国と信念を持って交流するDNAがあります」と語った。

海と空から中国人観光客を呼び込む

—— 昨年来、中国からの観光客が倍増する勢いですが、中国からの観光誘客にどのように取り組まれていますか。

平井 7月2日にクアンタム・オブ・ザ・シーズという船で、中国の方が4700人ほど乗って来られ、本県で観光と買い物を楽しまれました。この時、本県の日吉津村という人口3000人の村に4000人規模の中国人観光客が買い物に来たということが話題になり、中国でも報じられたと伺っています。

また、本県には空港が2つあります。1つが米子鬼太郎空港で、もう1つが鳥取砂丘コナン空港です。本年3月の鳥取砂丘コナン空港の開港式には、上海からメディアの方や観光客の方がチャーターフライトでこられました。『名探偵コナン』のキャラクターがお出迎えする空港になっており、中国の方にも楽しんでいただける空港になっています。

実はこの報道がロイター通信で中国にも配信され、上海のテレビ局などでも放送されました。さらにWeibo(中国版ツイッタ―)で拡散し、「鳥取県は大丈夫だろうか?鳥取砂丘コナン空港では毎週殺人事件が起きるんじゃないか」とか(笑)。そこで私たちは申し上げています。「毎週、コナンが解決するから大丈夫です、平和は保たれている」と(笑)。

いずれにせよ古くから本県は中国との交流を大切にしていますので、おもてなしの風土はできていると思っています。

全国一位の水揚げ量を誇るカニで中国人をおもてなし

—— 知事一押しの県の特産物は何ですか。

平井 カニです。県内主要漁港でのカニの水揚げ量は、日本全国の約45%の割合を占め、全国有数のカニの一大産地になっています。今がちょうどシーズンで、上海ガニとは違った大振りで美しく美味しいカニが獲れます。現在、アジアで結構人気が出始めまして、輸出する動きもできています。先ほどのクアンタム・オブ・ザ・シーズが来たときも、本県のカニを食べ尽くして帰られました(笑)。11月から3月までが松葉ガニのシーズンですが、秋から夏の前にかけてはベニズワイガニもお楽しみいただけます。

それから、やはり自然の豊かさですね。鳥取砂丘は日本で有名ですが、中国の砂漠と違い、海が見えるわけです。冬になるとゲレンデのように真っ白になります。それが非常に珍しく、世界ジオパークにも認定されています。さらに、海も美しく、マリンスポーツを楽しむことができますし、大山は富士山のようにきれいな山で、西日本で最も人気のある山の1つです。

中国とは信念を持って交流

—— 中国との交流ではどのような取り組みをされていますか。

平井 中国との交流の歴史について、2人の方を紹介します。1人は古井喜實(ふるい・よしみ)先生です。この方はLT貿易などにも関わられ、日本と中国の間の国交を開くのが非常に難しい時期に、献身的に、さまざまな反対論もある中で、勇猛果敢に友好を拓かれ、それが後の日中友好条約につながっていくわけです。すでに亡くなりましたが、「中日友好の使者」として中国から表彰されており、日中友好会館の初代館長でもあります。

もう1人は、遠山正瑛(とおやま・せいえい)先生です。この方は内モンゴルに100万本のポプラを植樹するという砂漠緑化に人生を捧げられました。その功績で中国政府から友誼賞を贈られており、アジアのノーベル平和賞であるマグサイサイ賞も受賞されています。

このように本県は、中国と信念を持って交流しなければならないというDNAを持っていると思います。友好先の河北省とは30年、吉林省とは環日本海時代を目指してお互いに地域振興を果たしていこうと20年来のお付き合いをさせて頂いています。

飾らず実直でひたむきに目標を実現する県民性

—— 鳥取県の特長・県民性について教えてください。

平井 飾らず実直です。まさに古井先生や遠山先生のように、ひた向きに日中友好を実現しようと、多少波風があっても突き進んでいった、そういう気性が県民に生きていると思っています。

また、本県は漫画王国です。『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげる先生のふるさとであり、『名探偵コナン』のまちもあり、その記念館もございます。こうした日本のアニメなども本県の特長であり、いわば無料のディズニーランドみたいなところでもあります。

—— 中国人の印象についてはいかがですか。

平井 やはり長い悠久の歴史の中で民族が発展をしてきたという力強さを感じますね。それから、非常に思慮深く世界を見ている、将来を見ているという印象があります。

昨年10月末に全国知事会のミッションで北京を訪れ、強く感じたのは、中国人は何をするにもお互いが友情で結ばれていることが前提になるということです。長く隣人として両国の架け橋になることは難しいですが、我々は今後も日中友好の役割を果たすことができると思っています。

取材後記

鳥取県は梨が有名だが、中でも中国梨と日本梨をブレンドした「王秋梨」はスッキリと甘くみずみずしい美味しさがつまっている。ここにも中日友好の架け橋があることを嬉しく感じた。