河野 俊嗣 宮崎県知事に聞く
日本一の和牛とキャビアで中国人をおもてなし

宮崎県は2012年3月、これまで展開してきた中国など東アジアの国々に対する県産品の販路拡大戦略に、新たに観光誘致や国際交通等の分野を加え、「東アジアに開かれ、東アジアとともに成長するみやざき」を目指すための指針として、「みやざき東アジア経済交流戦略」を策定した。先ごろ、河野俊嗣・宮崎県知事を訪ね、観光誘客の取り組み等についてお話を伺った。その中で、知事一押しの特産品について尋ねると、意外やマンゴーではない答えが返ってきた。

 

空と海からお客様を招く

―― 中国からの観光誘客の取り組みについて。

河野 現在、中国をはじめアジアの多くの皆さんにお越しいただきたいとの思いで、「みやざき東アジア経済交流戦略」を策定し、中国からの観光誘客に取り組んでいます。具体的には、2002年に上海、2013年に香港にそれぞれ事務所を設置し、そこを拠点として、経済を含め観光に関する取り組みを進めてまいりました。

観光客をお招きするには、やはり交通手段が非常に重要です。これまで本県はソウルと台北に国際定期便を就航していましたが、本年3月に週2便ですが、「宮崎―香港」直行便を開設しました。今後の観光誘客の大きな力になると思っています。

それから、クルーズ船ですね。中国では上海を中心に大変なクルーズブームだと伺っています。本県ではこれまで細島、油津の2つの港で受け入れをしていました。今までは最大7万トンでしたが、県南部の日南市にある油津港では、16万トン級の受け入れが可能な港を整備し、8月中旬にいよいよ入港する予定です。

クルーズ船は朝入港し、乗客の皆さんには1日県内を観光していただき、夕方には出港されますが、16万トン級であれば4000人のお客様です。その方々に「宮崎、いいね」と思っていただいて、リピーターとして今度は飛行機で来県されるようになればと願っています。

こうした航空便や船の利用によって、ゴールデンルート以外に、本県にも多くの中国のお客様に来ていただくための利便性が高まった今、これまで以上に本県の魅力を中国にアピールしていきたいと考えています。

 

日本一の和牛―宮崎牛

―― 一押しの特産物は何ですか。

河野 それは宮崎牛です。5年に1回、和牛のチャンピオンを決める大会があり、2大会連続で宮崎牛は日本一に輝いています。松阪とか神戸と比べると、知名度は低いかもしれませんが、ぜひ中国を含めアジアからのお客様に日本一の和牛を召し上がっていただきたいと思います。

それから、マンゴーの生産量では沖縄が一番ですが、ブランド力は宮崎マンゴーがナンバーワンだと自負しています。

 

香港から本土へ販路拡大

―― 中国との経済交流について。

河野 現在、中国に進出している県内企業は数社ありますが、本県の経済は、基本的に第1次産業である農林水産業が中心です。ですから、2次産業も含めての進出企業は、上海事務所や香港事務所がそれをサポートしていますが、農林水産物を販売していくことが中心になると思います。

しかし、現在中国には農産物等における規制等があり、難しい状況ですが、香港事務所を核として、構築した人的ネットワーク等の活用で、大陸への販路拡大も期待しています。

 

次代を担う若者の交流を

―― 中国との青少年交流について。

河野 県内の5つの市が中国の各都市と姉妹都市交流を結んでおり、それぞれ交流があります。そうした中で、特に学校同士の連携が強く、県内の日章学園という私立学校では、中国の長春から、毎年留学生100名程度を受け入れています。

次代を担う若者同士の交流はとても重要だと考えていますので、今後、県と中国の都市との友好交流も視野に入れ、グローバルな交流の取り組みを考えて行きたいと思います。

 

「日本のひなた宮崎県」

―― 宮崎県の県民性について。

河野 非常に穏やかで温かい人柄です。

本県は日照時間が日本トップクラスで、県のキャッチフレーズは「日本のひなた宮崎県」です。ひなたは漢字で「日向」と書きますが、ふりかえれば本県は神話の時代から「日向(ひむか)」と称されてきた土地でした。ひなたはゆったりした時間をつくり、人柄をあたたかくし、太陽の恵みで豊かな食を生み出します。さらに、ひなたは人々に希望と活力をもたらします。

また本県は、ジャイアンツなどのプロ野球やJリーグのキャンプ地として有名ですが、他県から来た人が驚かれるのは、子どもから年配の方まで、道行く人に「こんにちは」と挨拶するんですね。このように心根が優しく、誰でも温かく迎え入れるという日本の古き良き伝統を持っているのが、本県の県民性だと言えます。

 

独学で中国語を習得

―― 中国の印象について。

河野 8年前に初めて中国の上海に行きました。すでにリニアモーターカーが走っているなど、経済成長のすごさに大変驚きました。香港も3度訪問しましたが、同様にその発展ぶりに驚きました。

実は昔から中国が好きで、中国語をラジオで勉強して、まだまだ下のレベルですが、中国語検定も4級を取っています。ちょっとした挨拶ぐらいには使えるので重宝しています。

 

取材後記

頂いた知事の名刺はキャビアをデザインしたインパクトのある黒い名刺だった。伺うと、キャビア生産県日本一だという。1983年から30年間研究を続け、唯一卵からの完全養殖を実現し、2年前から販売を始めている。知事は「中国の方に、宮崎のキャビアやチョウザメの魚肉を召し上がっていただく機会がもっと増えればいいなと思っています」と話した。