達増 拓也 岩手県知事に聞く
中国国際救援隊にもう一度感謝したい

岩手県といえば、多くの人は東日本大震災を思い出すのではないだろうか。2011年3月11日、100年に一度の大地震によって、岩手県は大きな被害を受けた。中国の救援隊が迅速に来日し、岩手県大船渡市で救援活動を行ったことは心温まるエピソードとして伝えられているが、このことは2008年、中国四川省で発生した大地震に際して日本も即座に救援隊を派遣したことを思い起こさせる。深刻な自然災害発生時における日中両国の相互支援は、すでに双方向になっている。2014年2月20日、岩手県庁を訪ね、知事にインタビューを行った。

 

 

中国国際救援隊に再度感謝

―― 2011年の東日本大震災で中国は国際救援隊を岩手県大船渡市に派遣し、救援活動にあたらせましたが、岩手県民はこれをどう見ていますか。また、東日本大震災発生からすでに3年が経ちましたが、岩手県の復興状況はいかがでしょうか。

達増 中国国際救援隊が急いで来てくださったことには大変感激しました。その時は3月11日の地震発生後、最も救援の人手が必要だったのです。ここで、私は中国国際救援隊にもう一度感謝したいと思います。

当時、中国国際救援隊が大船渡市に救援活動に来て下さったことは本当に大きな助けとなりました。大船渡の水産加工工場には当時、多くの中国人研修生がいましたので、中国国際救援隊は日本の被災者を助けるだけでなく、中国人研修生を安心させてもくれたのです。

岩手県の被災規模は極めて大きく、復興には多くの資金とマンパワーが必要です。私たちが直面している最大の課題は、人手不足です。現在、岩手県及び被災市町村では、日本全国の自治体から人的支援を受けており、地震発生から現在まで1500人余りの応援職員の派遣をいただいています。

今後の3年間は、震災後の復興のカギとなる3年間です。多くの場所で改築や新築を必要としており、深刻な人手不足という問題が起きています。いかに人手を確保するかが、当面の大きな課題です。

 

青少年交流こそ日中友好の基礎

―― 2013年11月、「日中の未来を考える会」による「日中友好親善東北支援バスツアー」で留学生たちを連れて陸前高田など岩手県の沿岸地方を訪問し、現地の市民と交流し、「奇跡の一本松」も見学しました。日中関係が低調な現在、両国の青少年による交流活動にはどのような意義があるとお考えでしょうか。

達増 青少年交流は非常に重要だと思います。日中両国間の長期的な友好と交流を促進するためには最も重要なことで、両国の未来を担う主人公たちには対面して触れ合い、理解してもらわなければなりません。さらに青少年の吸収力は大きいので、新しい場所で新しい友人と触れ合うことは、彼らの人生経験を広げるのに役立ちます。日中両国の青少年交流こそ、両国の長期的な友好の基礎であり推進力なのです。

 

「茶と鉄瓶の縁」で共にグローバル化へ

―― 2013年11月、知事は中国の北京、雲南省などを訪問されましたが、訪問の目的は何ですか。岩手県には中国との経済貿易協力や文化交流の分野で、どのようなプランがあるのでしょうか。

達増 昨年11月、岩手県が中国雲南省と友好交流協力協定を締結したことは大変喜ばしいことです。これ以前に岩手県は雲南省プーアル市と同様に協定を結んでいました。

2010年には空前の盛況だった上海万博が開催されましたが、その中でプーアル市特産のプーアル茶と私たち岩手県特産の南部鉄瓶を一緒に展示したことで、大変素晴らしい効果を生みました。こうした関係をさらに発展させるために、岩手県は昨年11月に雲南省と正式に協定を結びました。

今後、私たちはこの新しいコラボレーションで、両国、両地域の特徴ある地域資源を共にグローバル化させ、いわば「お茶と鉄瓶の縁」方式のコラボレーションを通して互いの友好交流を増進したいと願っています。

岩手県は大連に経済事務所を置いていますが、岩手県と中国各地との経済交流の機会も増えています。最近は上海、北京でも岩手県特産品のPRを行いました。今後は引き続きこのような活動を通じて、中国の方たち全員に日本には岩手県があること、県内には豊富な地域資源があることを知っていただきたいと思います。

 

目も舌も心も満たされる

―― 岩手県には、ユネスコ世界文化遺産に登録された「平泉」など多くの観光資源があります。NHKの人気ドラマ「あまちゃん」によって岩手県の知名度はさらに上がりました。現在、岩手県は主にどのような方法で中国からの観光客を誘致しているのでしょうか。

達増 岩手県の面積は北海道に次いで全国2番目で、豊富な自然に恵まれ、2つの国立公園があります。一つはリアス式海岸の陸中海岸などからなる三陸復興国立公園、もう一つは十和田八幡平国立公園です。岩手県は四季があり、山紫水明、有名な温泉地、大型スキー場もあって、一年春夏秋冬、観光客に楽しんでいただけます。さらに天然の良港もあり、漁業、牧畜業も盛んですので、目で楽しみ、舌で味わい、心も満たされるところです。ですから、12世紀に奥州藤原氏はここに理想の故郷をつくったのです。

中国の方たちにもこの魅力を知っていただきたいので、今後はさらにPRを盛んにしたいと思います。

 

人と自然の共生で文化を守る

―― 中国には、「その土地の自然が土地の人を育む」ということわざがあります。岩手県は有名な文人墨客たちの故郷で、石川啄木はこの地の山河を詠み、宮沢賢治はこの地を「イーハトーブ」(理想郷)と呼びました。岩手県民にはどのような県民性があるとお考えですか。

達増 岩手県の県民性は、人と自然との共生を重んじるということだと思います。この県民性は昔からのものです。

岩手県内には縄文時代の遺跡があります。長い年月の間、ずっと山紫水明の自然を守り、山海に珍味が満ちた状態を守ってきたことが、人と自然との共生を大切にしてきたことを物語っています。獲物を取り過ぎず、伐採しすぎず、自然と文化を連綿と守り続けてきたのです。

宮沢賢治の童話のなかでも、人と動物は友だちで、自由に交流できます。岩手県にいらっしゃれば、きっとそれは童話ではなく、本当に存在すると感じられることでしょう。