松井 一郎 大阪府知事に聞く
日本と中国の民間は「人間関係」で

日本の「地域政党」であった大阪維新の会が人びとに知られるようになる以前、松井一郎という名はあまり話題になっていなかった。この大阪出身の政治家は、2003年から3期連続で大阪府議会議員に選出されており、2011年11月27日、注目された大阪府知事と大阪市長のダブル選挙の際、松井一郎氏は大阪維新の会の橋下徹氏とともに立候補し、「第三極」の政党として地方から中央を包囲する新時代の幕を開けた。 昨年5月7日にはさらに松井一郎知事の名が注目されるニュースがあった。彼が府知事に就任した時の個人資産の状況を公開したところ、有価証券や株式を保有していなかっただけでなく、複数の不動産もなく、逆に住宅ローンの残高が4719万円あったのだ。一部の国会議員が公開した「ゼロ資産」と比べ、松井知事のこのような資産の明細は人びとの信頼を得た。 先日、大阪府庁を訪問し、大阪と中国各都市との各分野での交流等について話を聞いた。

 

 

大阪と中国各都市との交流

―― 1980年4月、大阪府は上海市との間で友好交流を推進することに合意し、以来、経済、青少年交流など広範な分野において友好交流事業を行っています。昨年来、中日関係が冷え込む中、どのような交流が進められていますか。

松井 大阪と上海市は1980年に姉妹都市となってから、自治体としての相互交流と相互訪問を促進し、経済、環境、港湾、水道技術などの多くの分野で提携を強化してきました。さらに学術、スポーツ、青少年交流などでも多くの実績を積んできています。

現在、日中両国には意見の違いがありますが、大阪府は中国の各都市との民間交流を維持しつづけています。お互いに永年にわたる人間関係がありますから、政治的な原因ですべてが悪くなってきていることはないと思います。また経済分野では両国は重要なパートナーですから、両国の関係はこれまでと変わらないのではないでしょうか。

―― 大阪府は1985年に開設された上海事務所を運営し、大阪産業振興機構で様々な国際ビジネス支援サービスを実施されていますが、30年に及ぶ支援の中で得た一番の成果は何でしょうか。

松井 大阪府、大阪市ともに上海事務所を開設していますが、大阪府の事務所は早くから活動しています。大阪と上海は経済など各分野の交流の中枢として、ずっと意義のある活動を続けています。

ここ数年、大阪府の上海事務所は大きな成果を上げていますので、一番を選ぶのは難しいですね。ただ、行政の努力によって大阪府の民間企業に中国市場を紹介したという点では非常に成功したと思います。2010年の上海万博で、日本は政府として日本産業館を設置しましたが、大阪府も独自に大阪館を出展しました。それによって大阪の文化を上海の人びとにさらに理解していただけたと思います。

2013年1月1日から、大阪府、大阪市の事務所を統合し、大阪政府上海事務所としました。今後は企業誘致、経済技術、観光などや文化活動の交流に一層力を入れていく予定です。

 

大阪観光局で中国人観光客誘致

―― 日本維新の会による「大阪都構想」においては、二重行政の無駄を省き、産業基盤の整備と経済的競争力を強化しようとしています。世界の中での都市間競争力を高める上で、大阪は中国の観光客誘致経済交流など、どのような将来戦略をお持ちですか。

松井 2013年4月、大阪府と大阪市と経済界が協力して大阪観光局を立ち上げました。観光局は外国人観光客の誘致を主旨として、2020年には大阪を訪れる外国人観光客を現在の約200万人から650万人にするのが目標です。大阪全体でこの目標に向かって努力しています。

大阪観光局では、アジアだけでなく全世界に向けて積極的にプロモーション活動を展開しています。大阪府では各種設備の整備や「メードインジャパン」の品質、そしておもてなしを提供できる環境が整っています。

現在、中国からの観光客は減少傾向にあり、2012年1月から9月まで期間の延べ125万1000人から、2013年1月から9月には99万5000人と減っています。しかし、私は悲観していません。日本と中国との民間交流にはいわゆる政治的ないさかいはないのですから、中国の観光客の皆様にはさらに大阪のさまざまな観光資源を歩いて、見て、そして楽しんでいただきたいと思っています。

 

エネルギー、環境問題でも中国を支援したい

―― 現在、中国では、環境問題や食の安全問題など、様々な問題に直面しています。大阪府として、中国への技術提供や専門家の交流など、できることはありますか。その上で、中国との交流の重要性をどのようにお考えですか。

松井 大阪は「水の都」として有名で、水域は大阪市の面積の十分の一を占めています。また、風水害による河川の氾濫などを克服してきました経緯があることから、大阪は水環境分野で先進的技術と豊富な経験を持っています。中国が必要とする技術については大阪府として必要な支援をしていきます。日本の環境関連の技術は世界でも最先端レベルですから、もし必要であれば、大阪府上海事務所も必要な技術を持っている企業をご紹介できます。

―― 先の2020年東京五輪招致では、原発問題が最後まで取り上げられました。関電の関連で、原発の再稼働や府有施設を活用した再生可能エネルギーの普及促進など、大阪府として、どのようなエネルギー政策をお持ちですか。

松井 大阪府は行政計画として「地産地消」をめざしたエネルギー戦略を策定しているところです。自然エネルギープラス省エネ技術で2020年までに150万キロワットを生み出す計画です。

―― これまで中国にはどれくらい行かれましたか。中国の印象はいかがでしょうか。