山田 啓二 京都府知事に聞く
中国の環境問題改善に協力したい

京都府の山田啓二知事は、毎年2回程度訪中している。2013年11月にも友好提携30周年を記念して中国・陝西省を訪問し、記念植樹を行った。そして、趙正永・共産党同省委員会書記らと会談し、「中国が直面する大気汚染や水環境問題に手を取り合い、改善できることは多い」と協力を申し出た。「おもてなし」の原点と言われる京都に赴き、中日間の事業協力の重要性等について、話を聞いた。

 

 

中国の環境問題の

お手伝いをしたい

―― 京都府では、友好提携省の中国・陝西省と植樹協力事業を行われています。中日間の事業協力の重要性についてお聞かせください。

山田 環境に国境はありません。すべての空、空気はつながっています。環境問題は人類全体の課題だと思っています。ゆえに、お互いに助け合って、支え合っていかなければなりません。

京都は1300年の歴史ある町です。持続可能な地域としてこれほど長い間存続して来れたのは、正に環境との共生をはかってきたからです。京都に超高層ビルはありません。常にどこからでも山が見える景観をつくっています。川も澄みきって魚もいっぱいいます。京都府全体の75%は森林で、それが水をつくり空気をつくり出しています。

私たちは受け継いできた自然を守っていかなければなりません。同時に、京都はエコ関連の優れた技術があり、中国の環境改善への取り組みについて応援させていただきたいと思っています。

 

京都府は毎年2回訪中

―― 関西広域連合の代表として、本年2月に東南アジア、9月に中国を訪問されています。中国訪問の目的と経済交流の重要性についてお聞かせください。

山田 実は関西広域連合ができる前から、京都、大阪、兵庫の知事3人で中国を訪問していました。ちょうど小泉総理の時期で、日中関係が靖国神社の問題を巡って厳しくなった頃でした。いかなる時代でも草の根交流を続けていくことが重要だろうと、3人で訪問したのです。

北京では当時の唐家?さん、北京市長の王岐山さん(現中国副総理)らにお会いして、観光・交流などの話をしました。毎年、3府県で中国の大連、上海、広州などを訪問していました。関西広域連合ができて、草の根交流を進める中で、中国からの観光客が増えてきました。

観光は両国を理解する一番大きな原動力になります。私自身、中国には毎年2回程度行っております。難しい問題もありますが、いろいろな意味で交流は深まってきていると実感しています。

 

京都は東アジア共生の最適地

―― 2013年12月に、「東アジア共生会議2013」の京都開催が予定されていますが、会議の目的と京都開催の意義についてお聞かせください。

山田 アジアの共生は一番大きなテーマになってきています。文化を通じて互いに理解し合っていく必要があると思います。文化の違いは時には対立を生んでしまいます。どういう文化的な背景のもとにそれぞれの国が成り立ち、それぞれの地域が発展してきたか、互いに認識し合うことが東アジアには必要と思います。

ある面では、日本の文化を理解していただくうえで、ここは一番良い場所ではないか。日本人は自然を大事にし、すべての物を等しく大切にしますから、一草一木をも慈しむのです。

こうした点も京都を通じて見ていただきたいと考えています。古来から中国の文化的な影響を受け、交流の歴史もありますから、京都は宗教面も含めて、東アジア共生の町としては最適地だと思います。

 

日本は憲法を議論すべき時期

―― 法制局参事官時代は政府の「憲法の番人」として、政府の憲法解釈の答弁づくりや法律の解釈にあたられましたが、安倍政権が進める憲法改正をどのように見ていますか。

山田 次の3点が大切なことだと思っています。①憲法の持っている本当の意味は何なのか。②それが時代にマッチしているのか。③トータルの議論がどういう風に行われていくのか。

戦後、憲法が作られてから70年近くが経とうとしています。この国の未来をどう作っていくのか、真の世界平和はどうあるべきか、こうしたことを議論すべき時期に来ていると思います。

アジアの中においても中国はものすごい勢いで発展しています。日中の両国が真に理解し合うために、日本はどういう形で対応していくのか。憲法は国の考え方であり国の思想ですから、日本がどういう国か世界に分かってもらうためにも議論は必要だと思います。

 

米軍のレーダー配備は

武力の誇示ではない

―― 京都府内にレーダーなどを設置する在日米軍基地を建設する動きがあるようですが。

山田 日本とアメリカは防衛について同盟を組んでいます。お互いに役割分担しながら国防に取り組んでいます。オバマ大統領と安倍総理が会談をした時に、レーダー基地の設置を、という話が出ました。

京都府は青森までレーダー基地を視察に行きました。これは基本的に防衛のための施設であり、攻撃のための施設ではないという認識です。まさに「耳」「目」に相当するもので、軍事的プレゼンスを示すものではなく、防衛のために日米の体制を強固にするためのものです。

基地周辺の皆さまは驚くかもしれませんが、どういう人たち(米軍)がくるのか確認し、そうした人たち(米軍)と地元住民の交流のあり方について確認しております。極めて平和を守るための備えということです。

 

日本人の

「おもてなし」の心

―― オリンピック招致で有名になりましたが、「おもてなし」の原点は京都にあると言われています。日本一の京都ファンを自認する知事として、「おもてなし」の心について教えてください。

山田 「おもてなし」と言うのは、相手が来られた時に、こちらの気持ちの一方的な押しつけではなく、相手の方の気持ちに寄り添って、一番和んで癒されていただけるように接することです。逆にお客さまも接する側の気持ちを汲み取っていくのです。そういう中で洗練された接待ができます。これが「おもてなし」の原点です。

一番大切なことはお互いの心が通うことです。こういう交流をつくり上げることが、京都の基本です。京都の観光政策は、押しつけではなく、お客さまの気持ちに寄り添って歓迎していくことです。これは体験していただけなければわからないかもしれません。

 

取材後記

山田知事が「おもてなし」の心をていねいに語ってくれるのを聞いているうちに、知事の京都への愛、中国への思いが感じられ、「氷点」のような日中外交を忘れたような気がした。両国の人々が互いの心の声に耳を傾けることを期待せずにはいられない。