林文子 横浜市長を訪ねて
華僑華人とともに歩んできた横浜

横浜市長である林文子氏は、日本の政界と財界の双方で活躍する女性だ。これは大変珍しいことである。林氏は2004年、米国紙『ウォールストリート・ジャーナル』の「世界で注目される女性経営者50人」に選ばれ、2005年には米国『フォーブス』の「世界で最も影響力のある女性100人」にも選出された。そして、2009年には日本第2の都市である横浜市の市長に当選したのである。7月13日、横浜市長を訪ね、この素晴らしい女性を取材した。

  

日本企業の中国での発展と中国企業の日本での成功を応援する

―― 横浜市は上海市と友好都市であり、北京市とはパートナー都市となっています。また、横浜港と上海港、大連港も友好港交流をしています。今後の経済交流の取り組みについてお聞かせください。

 横浜市は中国の都市と様々な分野で交流し、今挙げられた都市の中では、上海市との友好交流が最も長くなっています。

2010年7月、「上海国際博覧会(上海万博)」にあわせ、上海で中国企業のトップに向けた企業誘致説明会を開催しました。私は説明会で、横浜市の良好で有益な投資環境や市内に進出する外資系企業に対する支援制度についてご紹介しました。

横浜市は1987年に上海事務所を開設し、上海に進出する横浜企業を支援するとともに、進出後も情報交換の場を提供するなど支援をしています。実際、上海とその周辺都市には100社を超える横浜の企業が進出しているので、継続して横浜企業の中国でのビジネス展開を後押ししています。また、1991年から、横浜市と上海市は毎年「横浜―上海経済技術交流会議」を開催しており、この会議では行政機関が意見を交換し、両市の企業間の経済技術交流を効果的に推進しています。

特に上海市は、製薬、医療機械、新エネルギー開発などの分野での交流に力を入れており、横浜市で開催される「バイオジャパン」「スマートシティーウイーク」など各種展示会をご紹介し、中国企業の販路開拓を応援しています。是非、中国企業が日本で成功を収めていただきたいです。

現在、横浜市は、海外からの企業誘致に積極的に取り組んでいます。2011年、横浜に新しく進出したアジアの企業5社のうち3社が中国企業であり、大変うれしく思います。

 

横浜の魅力のシンボル、中華街

―― 日本の三大中華街の中で最も有名なのが横浜中華街です。横浜市の国際化を推進するため、「ヨコハマ国際まちづくり推進委員会」を設立されていますが、在日の華僑華人の果たす役割についてどのように見ていますか。

 横浜の魅力は開放性、多様性、国際性にあります。この魅力のシンボルとなっているのが、世界最大規模のチャイナタウンである、横浜中華街です。中国文化と中国芸術のほか、世界三大料理の一つである中国料理を横浜で味わうことができます。このように、多くの華僑華人の功績は大きく、今後もご協力のもと、横浜はさらにその魅力を発揮できると思います。

現在、横浜市内には3万1000人以上の中国籍の方が住んでいます。横浜市が設立した「ヨコハマ国際まちづくり推進委員会」にも中華街にお店を持つ方に委員として加わっていただき、大変貴重なご意見を頂いております。また、外国人の方たちが抱える様々な悩みを相談していただけるよう、横浜市が設置している10カ所の「国際交流ラウンジ」でも、華僑華人の方々が大活躍しています。皆様は、ビジネスの分野だけではなく、社会福祉などの分野においても活躍していただいてます。

横浜市は今後、さらに魅力に溢れ、さらに暮らしやすい都市を作るため、多くの華僑華人と手を携えていきます。

再生可能エネルギー導入でエネルギー供給率をアップ

―― 2011年の東日本大震災後、日本社会は深刻なエネルギー問題に直面しています。エネルギーの効率化に対して、横浜市はどのような取り組みをしていますか。

 横浜市は年間を通して温室効果ガス排出削減に取り組み、すでに成果を上げ、2011年には国の「環境未来都市」に選ばれました。横浜市では、省エネと再生可能エネルギーの大量導入という二つの面から環境計画を行っており、経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」にも選定されました。

現在「スマートシティープロジェクト」を実施し、大規模な再生可能エネルギーの導入でエネルギー効率を向上させることにより、安定的効果的にエネルギーを利用します。

この一連の取り組みは、東日本大震災の発生前から行っています。震災発生後、横浜市は耐震性の高い都市建設、自前のエネルギーの確保、エネルギーの安定的供給をさらに意識するようになりました。今後は市民の皆様の環境意識をさらに高め、この「スマートシティープロジェクト」を深く理解していただこうとしています。

現在、横浜市は国と協力し、一般家庭向けのエネルギー管理システム「ヘムス(HEMS)」を一般住宅に設置する補助金を支給しています。2014年までに4000家庭に普及させる予定です。このシステムの特長は、エネルギー利用を可視化することで、人々の自主的な省エネ意識を強化できる点にあります。

これ以外に、横浜市は民間企業、建築産業と協力し、太陽光発電設備や家庭用燃料電池(エネファーム)を住宅に率先して導入し、「エコハウス」を建設しています。「エコハウス」はとても人気があり、販売開始されるとすぐに完売するほどです。

日中友好を発展させるのは都市交流

―― 今年は日中国交正常化40周年であり、日中両政府は共同で「日中国民交流友好年」と定めました。今後の中国人観光客誘致、民間交流の拡大についてお聞かせください。

 横浜市にとって中国は最も重要な市場ですので、横浜市は中国に向けて一連の観光プロモーションを展開しています。現在、経済的に豊かになった中国の方々の外国旅行への需要は高まっています。

また、羽田空港の新国際線ターミナル開通と日本政府による中国人個人観光客へのビザ発給要件の緩和に伴い、中国人観光客が日本を訪れやすくなりました。

2011年、横浜市は中国からの観光視察団を受け入れ、ベイブリッジ、ベイサイドマリーナなど市内の有名な観光ポイントにご案内し、その際、放射能問題への心配を打ち消すため、私は実際の状況を皆様にご説明いたしました。これらの取組の結果、地震の影響で一度は減少した中国人観光客数が、現在は震災前の水準にまで徐々に回復しつつあり、大変ほっとしています。

中国の大スター、陳坤(チェン・クン)さんには横浜友好観光大使をしていただき、中国のテレビ番組で横浜を紹介したり、横浜市が中国で開催した観光セミナーにも出席してくださるなど、横浜のPRに尽力してくださっています。私自身も彼と2回お目にかかりましたが、本当に素晴らしい紳士で、会うたびに心温まります。

また、中国人観光客が安全に、安心し、満足していただけるよう、横浜市内の観光地では道路上のサインに中国語表示をしました。そして、中国語の観光マップや観光ガイドも制作しました。

さらに、2010年7月と2011年6月の2回、私は上海を訪問し、韓正(カン・セイ)上海市長とお会いしました。

両市の交流をさらに促進し、人材を育成するため、市役所の職員を相互に派遣するという私の提案を韓正市長は受け入れてくださいました。

今後は双方の交流を強化するために、職員の派遣期間を延長するなど、さらに豊かな成果を得られるようにしたいです。

2013年は横浜市と上海市の友好都市提携40周年です。両市はこれまで築いてきた礎の上に、さらに経済、環境分野での相互協力を進め、共にグローバルな課題に取り組んでいきます。

横浜市は東京都に次ぐ日本第二の大都市です。国家間の関係はもちろん重要ですが、時代は都市間の交流へと向かっています。

ですから、横浜市が上海、北京などの中国の主要都市と経済交流、文化交流を進めることは、両国関係の発展に役立ち、ひいては日中両国に大きな利益をもたらすにちがいないと考えています。