仲井眞弘多 沖縄県知事を訪ねて
沖縄は中国の観光客を大歓迎

日本政府は中国からの観光客に対する措置として、09年7月1日に「家族旅行ビザ」、10年7月1日に「個人観光ビザ」、そして11年7月1日に沖縄旅行に初めて「3年間有効の数次ビザ」の発給を決定した。沖縄が中国の観光旅行の注目を集める中、7月4日の午前に仲井眞知事を沖縄県庁に訪ねた。

 

日本で唯一の中国福建人系知事

――― 個人的なことですが、知事は中国人、蔡温の子孫ですね。ということは、日本で初めての中国福建人系の知事といってもよろしいですか。

仲井眞 そういうことになりますね。私の祖先である蔡温は中国明代の福建人三十六姓の子孫で、琉球の政治、経済、文化の発展に貢献してきた人です。蔡温は「琉球のすぐれた大政治家」と尊敬され、琉球王国の国相(琉球の王府における最高位の官職)に就任し、国師(皇帝から高僧に贈られる師への尊称)も兼ねました。歴史書には、蔡温が政権運営した20年間は、琉球王国唯一の短い「小康時代(穏やかな時代)」だったと書かれています。ですから、私は中国にも特別な親しみを持っています。

 

沖縄県民の中国への親近感

――― 今年7月1日から日本政府は、中国人が沖縄から入国する場合に3年間の数次ビザを発給しています。ビザ発給の経緯について教えてください。

 仲井眞 沖縄の経済はまだ遅れています。県の経済をいかに振興させるかは、1972年に沖縄が日本に返還されてから、歴代の知事が苦心している問題です。そうした中で観光業は特別な経済効果を生み出しています。しかし、3月11日の東日本大震災の影響で沖縄を訪れる国内外の観光客が大幅に減少しました。そこで、今後の「沖縄県の新しい振興計画」の一環として、政府に中国からの観光客の査証制限を緩和するよう求めたのです。

そして、沖縄県観光業界の強い要望と沖縄県政府の努力によって、日本政府は数次観光ビザの発給に同意したのです。このことは、沖縄が歴史的に中国と深い関係があり、沖縄県民が日本の他の地域より中国に対して親近感をもっていることが政府に理解されたためだと私は考えています。

 

沖縄は日本で唯一原発のない県

――沖縄に来る中国の観光客にアピールしたい点は何ですか。

仲井眞 まず第1に沖縄は中国から近いという点です。そして沖縄は日本で唯一の亜熱帯のリゾート地です。エメラルドグリ―ンの海においしい食べ物、泡盛などいろいろそろっています。

沖縄は主に中国の文化を受け継ぎ、アジアの国々と交流する過程で独自の文化を育んできました。たとえば沖縄民謡は抑揚があり明るいリズムですが、中国の福建一帯の民謡と似ているので、中国の観光客の方にも楽しんでもらえると思います。

さらに、外国からの旅行者の方にとって、沖縄はすばらしい買い物天国です。那覇市・国際通りの商店街は中国の観光客にきっと満足してもらえるでしょう。

それから私は原発支持者の一人ですが、沖縄電力は日本にある電力会社10社の中で原発のない電力会社です。ですから、沖縄には放射能基準を越えるとか、放射能漏れという危険はありませんので中国の観光客の方には安心して旅行を楽しんでいただけます。

 

中国観光客が沖縄にもたらす経済効果

――― 中国から大勢の観光客が来ることは、沖縄経済の振興にどのような効果をもたらすとお考えですか。

仲井眞 それは、沖縄の経済振興にはとても良いことです。次のような統計があります。10年に銀聯カードによる購買の統計ですが、中国の観光客の沖縄での平均消費額は一人7万8000円で、県内の観光客の平均4万6000円を大きく上回っています。

中国経済はまさに発展していますから、中国との交流は沖縄経済に活力を与えてくれるだけでなく、中国の民間資本の沖縄への投資を引き寄せてくれます。これは沖縄県全体の経済発展にとって不可欠なことです。

 

中国観光客のためにホットラインを設置

――沖縄の観光施設は中国からの大勢の観光客にまだ対応できていないとの指摘がありますが。

仲井眞 この点は我々も認めています。現在、外国人観光客への接待のレベルアップをはかっているところです。11年度は40万人の外国人観光客の誘致を目標にしています。そのうち、中国大陸からの観光客は5万人に設定しています。そこで、総額1億9000万円の補正予算を組みました。中国の観光客の方が沖縄に来て何か困ったことがありましたら、098—916—6181に電話してください。24時間、中国語で対応する観光客専用のホットラインです。

 

中国経済の活力が印象深い

 ――― 知事は中国を何度も訪問されていますが、特に印象深かったことは何ですか。

 仲井眞 知事として中国には三年続けて行っています。日本の知事の中でもめずらしいでしょう。行くたびに中国の活気ある発展が印象的です。この20年来、日本経済は低迷しています。中国へ行くたびに、中国の経済活力をうらやましく思うのです。どうしたら沖縄経済に活力を持たせられるか、中国からそれを学びたいのです。

 それから、7月28日に中国海南航空によって待望の北京―沖縄直行便が開通しました。また、中国東方航空も上海―那覇間の直行便を2便増やす予定です。そして、08年に開通した香港―那覇間の直行便も増便されます。とても嬉しいことです。沖縄と中国の距離はますます縮まりますね。