村井嘉浩・宮城県知亊を訪ねる
日本は中国汶川震災の経験を参考に

先日、村井嘉浩・宮城県知事が日本記者クラブで講演を行い、宮城県の震災後十年の復興計画を紹介した。公演終了後に村井嘉浩知事は私の名刺を受け取ると、「宮城の被災地で中国の温家宝首相をお迎えしたばかりです。こんな災害の後に中国の首相が被災地に来てくださり、被災者の人たちは大勢泣いていました。この気持ちをぜひ中国に伝えていただきたいと思っていました」と話した。7月6日、こうして今回の取材となったのである。

 日本の被災者が温家宝首相の前で涙を流す

——5月の下旬に温家宝首相は日中韓首脳会談に出席の際、宮城県、福島県など地震の被災地を訪ねましたが、宮城県知事としてどう思われましたか。

村井:温家宝首相は被災地に入られると、道中で献花をされて哀悼の意を示されたばかりでなく、被災者たちと話しをされました。被災した人たちが、いちばん必要としているのは思いやりと激励だということをご存知なのです。隣国の首相が見舞いと激励に来てくださって、被災者の人たちが温家宝首相と話しをしながら涙を流しているのを私は目にしました。温家宝首相は心やさしく、非常に謙虚で温和な方だと思いましたね。              

 ?川救済の経験は日本が学ぶに値する

——三年前、四川省?川に大地震が起きました。三年間の努力で、?川は新たに生まれ変わりました。この?川地震の復興から何か学びとることがありますか。

村井:中国の?川大地震の救済経験から日本が何を学ぶべきかということについて言えば、中国各地からの地震被災地に対する「一対一のペアリング支援」の方法は非常に参考になると思いました。中国では多くの省や直轄市が地震の被災地に一対一の支援をおこない、政府はおよそ11兆人民元の巨額の資金を投じ、その内の90%は3年以内に効果をあげたそうですね。つまり、中国では必要な財源をすぐに集めて、被災地の復興に充てました。これは実に日本が参考にすべきことです。こういった災害の時に、被災者は、被災地の復興工事が盛んにおこなわれているのを目にすることができれば、生活への勇気が湧いてくるものです。ですから、中国の救済対策はとてもすばらしいですね。我々も見習いたい。

 宮城県は外国人が「住みやすい環境」をめざす

——知事の『宮城県震災復興計画』には、外国人や留学生に対する具体的なプランがないようですが、お考えをお聞かせ下さい。

村井:宮城県の県政建設の目標の一つは、外国人にも認められる「住みやすい県」にすることです。県内には国立の東北大学があり、中国の魯迅先生はここで勉強されました。今では中国留学生の数は東北大学内でも首位にランクされています。今回提出した「宮城県震災復興計画」は、主に宮城県に居住している人を前提とした計画ですので、宮城県に居住している外国人に対して具体的な対策は細かく書いてありません。

しかし、宮城県には『多文化共生社会推進計画』があります。異なる国の人たちが自分の国の文化をもって宮城にやって来るわけです。ですから、我々も異なる文化の環境のなかに身をおくことになり、県ではこの環境づくりに力を入れることによって、「住みやすい環境」がつくられていくと思っております。今後も努力していきます。

 中国の民間資本の宮城への投資を歓迎

——震災後の復興の過程で、宮城県は中国とどのような協力ができるとお考えですか。現在、中国の民間資本の宮城県への投資について、メディアの間でも異なる意見がありますが、これをどうご覧になってますか。

村井:震災後に温家宝首相が宮城県の被災地に視察に来てくださったことに、宮城県はたいへん感謝していることをお話ししておかなければなりません。その時、援助を申し出てくださいました。宮城県は二つの方面での中国の協力を必要としています。一つには宮城県産の農産物や水産物、宮城県で加工した部品を、もっと多く中国に輸出したいと考えていることです。

二つ目としては、さらに多くの中国の旅行客に宮城県に来ていただきたいということです。福島第一原発事故以降、中国の旅行者の方たちはとても慎重になられてしまった。しかし、今ご覧の通りに、私たちはここで変らずに生活していますし、あなたも東京から宮城県にわざわざおいでいただいたということで、宮城県は放射能の影響を受けていないという充分な証明になると思います。我々は外国からの旅行者に責任がありますが、自分に対しても責任があるのです。というのも、先祖代々ずっとここで暮らしてきているからです。現在は、土、水、牛乳、食べ物、海で獲れる魚介類なども、厳しく検査しているところです。検査の結果、放射能汚染の問題は見つかっておりません。ですから、日本在住の華僑や華人、中国からの旅行者の方たちに、安心して宮城県を訪れてほしいのです。

中国の民間資本の宮城県への投資についてですが、私は諸手を挙げて支持したい。日本の一部のメディアはまだ考え方を変えていません。彼らが見ているのは、いわゆる「国際化時代」というのは、日本製品、技術、人を輸出するという時代なのです。しかし実際、国際化の時代には外国の資本、技術、製品を日本に輸入することも含まれているのです。そうしてこそ、日本に活力が備わるのです。

知事は何度も中国を訪れている。「中国の万里の長城には深い感銘を受けました。科学技術が高度に発展している今日、万里の長城のような建造物を造りたいと思っても非常に難しいことなのに、古代中国で建造できたことは、中国の智恵と力量を説明するに足りるものがあると、常々思っています。中国とはこれまで以上に協力してやっていきたいと考えています」。