石井 啓一 国土交通大臣に聞く
中国人観光客のすべてを「リピーター」に

 

自民党と連立政権を組む公明党は、中日国交正常化以来、常に両国政府の橋渡し役を担ってきた。国土交通大臣の石井啓一氏は、閣僚で唯一の公明党議員であり、首相と8名の大臣で構成される安全保障会議のメンバーである。さらに、日本の観光産業の振興を担う観光庁を所管するトップでもある。国土交通省に石井啓一大臣を訪ね、中国の観光客が最も関心を寄せる話題について話をうかがった。

中国のお客様により良いおもてなしを

—— 日本では小泉内閣で「観光立国」政策が打ち出され、観光産業は今後の日本経済を支える重要産業となりました。2015年の訪日中国人観光客数は過去最高で、昨年の2倍です。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、どのような課題がありますか。

石井 今年10月までの訪日外国人観光客数は1631万人を超え、12月までに1900万人を超える見通しです。そのうち中国からの観光客は500万人が見込まれており、日本にとって大変喜ばしいことだと思っています。

訪日観光客が増えた主な要因は、円安と日本が打ち出した様々なプロモーション、それに観光ビザの緩和などが挙げられます。もともと東京オリンピックが開催される2020年に2000万人という目標だったのですが、その目標がもうすぐ手の届くところにきています。今、安倍首相を中心に新しい観光ビジョンをつくっているところです。

目標の達成には多くの課題があります。例えばホテル不足の問題です。特に東京と関西です。京都、大阪で稼働率が高く、日本に出張で来た外国人はビジネスホテルの予約すらできないことがあります。今後、外国人観光客の宿泊状況を改善し、入国審査、検疫といった入国手続きにかかる時間の短縮や、無料Wi-fiを拡げるなどの取り組みをしていきます。

そして、一度日本を訪れたお客様にはリピーターになっていただきたいと考えています。特に中国からの観光客は特定の地域に集中しています。いわゆるゴールデンルートと呼ばれる東京、富士山、京都、大阪などです。中国のお客様により多く深く日本を知っていただこうと、国土交通省観光庁では、北海道の東部、東北、東海・北陸、関西、瀬戸内、四国、九州の7つの広域ルートを認定し、現在、それらの地域の自然や歴史、文化の魅力をどう発信し、中国のお客様を誘致するかに取り組んでいます。

観光を満喫できる日本の魅力

—— 日本の観光の魅力は何ですか。また、中国の観光客に最も薦めたいのはどこですか。これまで36カ国を訪問されていますが、中国には行かれたことはありますか。どんな印象をおもちですか。

石井 日本観光の魅力はいろいろあると思いますが、まず、四季があることです。四季折々の自然の美しさがあります。そして、世界一のおもてなしです。非常にきめ細やかなおもてなし精神が人々の日常に溶け込んでいます。ホテルだけでなく、大小の飲食店、店舗などあらゆる場所で、きめ細かなサービスを受けることができます。さらには、欧米あるいは他のアジア地域にはない、独特の歴史や文化の遺産があります。そうしたところが日本の大きなセールスポイントではないかと思います。

中国にはまだ1回しか行ったことがないんです。2013年1月に、山口代表が訪中して習近平主席と会談したときに同行させていただきました。北京には3日間滞在したのですが、東京の冬より一段と寒かったです。北海道と変わりませんでした。1日だけ晴れまして、北京の青い空は素晴らしかったです。北京市内を見て、国としての経済発展の勢いをすごく感じました。

 

公明党は常に中国との友好の最前線に

—— 今年10月、山口代表は2度目の安倍首相の親書を携えて訪中し、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の金立群総裁と会談しました。日本の国会議員では初めてでした。第二次世界大戦終結以来、中日のいくつかの記憶に残る重要な出来事の背後には、常に公明党の「陰の英雄」としての存在があったことは明らかです。公明党は日本の政党の中で唯一、一貫して親中国の姿勢を崩していない政党です。

石井 その通りです。山口代表と習近平国家主席はすでに4度会見しています。日中関係の重要性は再び強調するまでもありません。安倍首相も日中関係を「戦略的互恵関係」と位置づけていますが、関係改善が進むことはお互いにメリットがあります。

日中関係は日中両国のみならず、アジアの平和と安定ひいては世界の平和と安定にも大きな影響をもたらします。よく言われるように、日本と中国は一衣帯水の仲であり、引っ越しのできない隣国です。隣国ゆえにいろいろな難しい問題があることは事実ですが、であるからこそ、それを乗り越えて友好を続けるということが両国国民にとって重要なことだと思っています。

日中国交正常化以前に、公明党は中国を訪問して日中両国政府間の橋渡しをしました。公明党は政党として、一貫して日中間の交流や親善の促進に重点を置き、中国共産党とも長きに渡って緊密な政党交流を重ねてきました。それは良いときも、あるいは必ずしも関係が良くないときもそうであり、常に関係改善、交流拡大の最前線に立ち続けてきました。

取材後記

公明党と中国の付き合いは深い。党内には中国語に通じた方も多い。西田実仁参議院議員は中国語でスピーチをされるし、小泉内閣で財務副大臣を務め、安倍内閣では国土交通大臣を務め、党内で「次期代表」の呼び声も高い石井啓一氏は、取材終了後に仏教から引用した「不忘初心」の四文字を揮毫された。