笠井 亮 衆議院議員に聞く
福島の放射能汚染水漏れは「非常事態」

日本共産党は日本の政党の中で、唯一自民党と終始「対決」している政党だ。憲法改正、軍備拡張を主張する安倍政権が再び政権をとってから、日本共産党の国内での発言力は前例のないほど高まり、日本の「右傾化」の歩みを抑制しようとしている。とりわけ、反原発の高まりの中で日本共産党は大きな支持を得た。8月27日、福島第一原発の汚染水漏れ事故について、日本共産党政策副委員長、衆議院議員の笠井亮氏にインタビューした。

 

 

安倍政権は事故の

重大責任を負うべき

―― 福島第一原発では汚染水が漏れています。8月22日、東京電力は福島県相馬市の漁業関係者に謝罪しましたが、東電と政府の態度をどう評価しますか。

笠井 福島第一原発の放射能漏れ事故の発生から今日まで、すでに2年半も経っています。しかし、今だに大量の汚染水が海に流出しています。グローバルな視点からみると、これは前代未聞の事件です。これまでに、他の国や地域でも放射能漏れ事故は起きていますが、今回の福島の事故は人類が初めて直面する非常に厳しいものです。

少し前に私は福島に行って、現地の漁業関係者から話しを聞いてきました。今年の9月から、安全性を確認しながら、試験的に漁を始めようとしていました。しかし、思いがけないことに、この時点で、汚染水のタンク漏れと汚染水300トンが海に流出していることが発覚して、本当に激怒していると話してくれました。

一言でいえば、東電には「当事者としての能力」がないのに、政府は東電に任せて解決しようとしています。これは大きな問題で、国民も怒っているのです。なぜ安倍首相及び政府は東電任せなのか。なぜ解決に乗り出そうとしないのか。

「政府も積極的に対応する」と茂木敏充経済産業大臣は言っていますが、安倍政権は前政権(民主党・野田佳彦政権)が2012年12月に発表した福島の事故は収束したという立場を継承し、すでに第2段階は終わり、基本的には汚染水漏れは発生しないと考えていたのです。

安倍政権はこの点において重大な責任を負うべきです。現在の情況は「非常事態」です。政府は福島の事故がすでに沈静化したという発言を撤回して、「非常事態」を宣言すべきです。

 

日本政府は「非常事態」を

宣言すべき

―― この「非常事態」は日本共産党としての認識ですか。それとも個人的なものですか。

笠井 日本共産党の認識で、客観的なものです。日本政府もこの点を認識して、「非常事態」を宣言をして、過去の対応を反省し、全責任をもって対応すべきです。

政府が主体性を指揮して、汚染水のタンクの管理法、地下の水流問題、なぜ汚染水が海に流出されるのか、海に流出される汚染水はいったいどれだけの量なのかといったことを徹底的に調べなければなりません。今、重要なことは専門家の英知を集めて、全力で対策を立てることです。政府は必要な費用を確保するために、財政的措置を取る必要もあります。

しかし、最終的には、これは東電によって引き起こされた事故なので、たとえ時間がかかっても、この費用は東電や原発利益共同体が責任を持って政府に返済すべきです。

 

自民党のエネルギー政策は

原子力の事故処理を妨げる

―― 昨年末に自民党が政権をとってから、エネルギー政策の調整を行い、原子力発電所を再稼働するかどうかを再検討しましたが、どう考えますか。

笠井 今回の汚染水問題にもあらわれていますが、彼らは原発を再稼働したいので、原発事故の処理に支障が生じています。原発事故は沈静化していると言うのも、原発を再稼働させるためです。出来る限り事態を深刻にみせないために、きちんとした対策を出してこないのです。安倍政権は経済成長戦略で、原発を活用し、停止している原発を再稼働し,原発輸出などの方針を決めています。ですから、我々はこれらの方針を撤回すべきだと強く主張しているのです。

日本は原発に依存して、一連の重大な事故が起き、世界中に影響を与えているのですから、正面から対処すべきです。福島第一原発の放射能漏れ事故から2年半も経っているのに、いまだ15万人もの人たちが家へ帰れずに避難しているのです。

以上を踏まえ、断固として原発依存から脱却しなければなりません。現在、日本は50基の原発を有していますが、大飯原子力発電所の4号機は9月15日に停止されて定期検査に入ります。日本の稼働原発は、再びゼロになるのです。

今年の夏は本当に暑かったですが、原発が動いていなくても、乗り越えてきたではないですか。電力会社でさえ認めています。ですから、停止された原発を再稼働させる必要はなく、廃炉にしてしまいましょう。政治がすぐに決断して、「原発ゼロ」を実現すべきだと考えています。

 

日本の再生資源の

潜在力は大きい

―― 日本共産党は「原発ゼロ」の目標を提出していますが、具体的にはどのような措置がありますか。

笠井 まずは、先ほどお話したように、原発を再稼働せずに廃炉にしてしまうことです。実際、肝心なことは日本政府が「即時原発ゼロ」の決断をすることです。こういう決断があってこそ、相応の対策がとれるのです。当面、5年から10年間はCO2排出量が比較的少ない液化天然ガスを国際的な価格水準で輸入し、火力発電を補足します。そしてこの間に、再生可能エネルギーへと本格的に転換するのです。

環境省の調査によれば、日本の自然エネルギー、再生可能エネルギーのうち、風力発電、中小水力発電、地熱発電、太陽光発電の潜在力は、現在の原発の約40倍です。こうした再生可能エネルギーを利用できれば、原発に替えることができます。ドイツも果断に原発を廃止し、再生可能エネルギーを普及させました。日本は技術があるのですから、もっと徹底してできるはずです。

                        

インタビューを終え、笠井氏は事務所の壁に貼ってある「ただちに原発ゼロへ」のポスターについて説明してくれた。日本共産党は今回の参議院選挙で、「即時原発ゼロの実現」を政治目標にして、全国各地で「放射能から子どもを守ろう」と主張してきた。選挙の結果は11議席を獲得して大きく躍進を遂げた。また、壁に参議院選での各政党の原発に関する政策対照表が貼ってあるのを、記者は目にした。笠井氏の話では、毎週金曜日に首相官邸前で反原発集会を開いている団体がまとめたものだという。この表から、反原発を主張する有権者に日本共産党が高い評価を得ていることが伺える。最後に、「安倍政権は原発を再稼働しようと暴走していますが、多くの人々といっしょに『原発ゼロ』をめざして頑張っていきます」と語った。