福島 みずほ 社民党党首を訪ねて
改憲は対米矛盾

社会民主党(社民党)は非主流派の政党であるという人もいる。しかし、その党首である福島みずほ氏は登場するたびに社会の注目を集めている。政界に入る前、福島氏は「人権派弁護士」として11年間従事し、メディアでも有名人だった。政治家となった後、福島氏は主張を曲げなかったため初めて党首として閣僚を罷免され、それ以来、曲がったことはしない「鉄の女」という称号を勝ち得ている。プライベートではフェミニズム思想を持ち、バートナーと子どももいるが、婚姻届は出していない。2013年2月7日、参議院議員会館に政界の伝説の「ミラクルガール」を訪ねた。

 

  

社民党は全力で改憲を阻止する

―― 現在、自民党政権は「国防軍」設立と「国家安全保障基本法」制定を画策しており、集団的自衛権行使の危機感は日々強くなっています。社民党は改憲についてどのようにお考えですか。

福島 日本憲法第9条で定めている戦争の放棄と武力の放棄、そして基本的人権の尊重、国民主権の3つが日本の戦後の出発点と言えます。非常に重要であり、改変は許されません。しかし、自民党政権が打ち出した憲法修正案では戦争放棄を安全保障にすり替え、個人の人権も公益と公共の秩序の制限を受けるとしています。つまり、日本国民の個人の自由は公共の秩序に服従させられるのです。これは国家と個人の立場を逆転させるやり方で、個人の権利を制約するものです。男女平等についても、自民党の修正案では家族は互いに助けあわなければならないとしていますが、私の考えでは、これは個人の家庭内の事情であり憲法に取り入れるべきではありません。最も危険なことは、いったん憲法修正案が成立すると、日本は戦争を発動できる国となり、立憲制度は徹底的にひっくり返されることです。これは戦争を発動し、個別的自衛権と集団的自衛権が行使できる国家へと日本を変質させます。

立憲制度からはもちろん、平和主義の角度から見ても、社民党は自民党政権の改憲の動きには絶対に反対します。

 

改憲問題における矛盾

―― 自民党政権が改憲を求めるのは、現行の日本国憲法が1945年米国によって制定されたもので、米国が押し付けて日本に受け入れさせたものだという理由があるようです。これについてはいかがですか。

福島 現在、日本の国会には「憲法審査会」があります。私は参議院議員で組織されている参院憲法審査会に所属しています。憲法審査会の前には「憲法調査会」がありました。2000年5月2日、憲法調査会は連合国占領軍総司令部(GHQ)の民政局人権小委員会のベアテ・シロタ・ゴードンさん(憲法第24条の男女平等に関する内容を起草)、リチャード・プールさん(憲法第1章の象徴天皇に関する内容を起草)を日本に招き、会談しました。この会議の記録によると、この会談中お二人は、日本はアメリカに押し付けられて憲法を制定したという考えが広まっているようだが、実際にアメリカが日本国憲法を起草したのは「決して勝者の敗者に対する復讐ではなく、日本の将来のためだった」と大変誠実に、真剣に強調されていました。

私個人としても、憲法第24条に定められている男女平等、個人の人権を尊重するなどの内容はすべて日本にとって有益だと思います。日本にとって有益な内容であるなら、継続させていくことに何の不都合があるのでしょうか。例えば、明治時代にも憲法が制定されていましたが、その内容の多くは外国の憲法を参考にして定めたものです。この角度から見ると、日本国憲法はアメリカの侵略のもとで強制的に定められたものというよりは、憲法のなかには全世界の共通の主義・思想が多く含まれ、だからこそ多くの日本人がこの憲法を歓迎したと言えるでしょう。私はこのことが最も重要だと考えます。社民党としては、日本国憲法の規定に基づき、日本は戦争の発動ではなく、専守防衛の国防政策を行うべきですが、外敵の侵略に遭遇したら自衛することは必要だと考えています。

しかし、現在の問題は自民党が個別的自衛権を行使するだけではなく、集団的自衛権も行使すべき、つまり合法的に武力を行使すべきだとしていることです。自民党のこの主張について、私は一つの矛盾があると思います。彼らは日本国憲法がアメリカに押し付けられたものだから改憲すべきだとしていますが、同時に、アメリカの要求に応えて集団的自衛権を解禁し、アメリカとともに世界で肩を並べる方針を決めました。第二次世界大戦後、日本の歴代首相は憲法第9条を厳格に遵守してきましたが、自民党政権は日本を武力が行使できる国に変えようとし、日本維新の会の橋下氏と石原慎太郎氏は徴兵制度まで検討し、安倍首相も自分のライフワークは憲法改正であると公言しています。ですから、私そして社民党の党員全員は強い危機感を持っています。また自民党政権は参議院で否決された法案の国会通過に必要な衆議院議員の票数を三分の二から半分に修正する法案を通過させようとしています。もし彼らが成功したら、与党はいつでも新しい法案、新しい制度を成立させることができます。もちろんこれには憲法改正も含まれます。自民党政権の計画は、まず憲法改正のハードルを低くして、その後日本が何らかの突発事件に遭遇し国民感情が高まるのを待って、憲法第9条の修正を提出するというものです。

今、半藤一利さんの『墨子よみがえる』を読んでいるところです。当時の中国で、墨子は兼愛と非攻を主張、挑発と侵略をしてはならないと主張しました。同時に墨子は応戦には賛同し、攻撃を受けた時には自衛のため立ち上がるべきだとしました。私は、憲法第9条の精神は墨子思想の兼愛と非攻だと理解しています。

 

島しょ問題を利用して改憲させてはならない

―― 昨年は釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題が勃発し、現在の中日関係は非常に難しい局面にあります。社民党は中日関係の現状をどのようにご覧になり、どうすれば改善すると考えますか。

福島 中国は5000年の歴史を有し、日本は中国から多くのことを学んできました。両国間の交流には長い歴史があります。古くは遣隋使、遣唐使、そして現在は多くの若い留学生たちがおり、両国は文化、経済、人的交流の分野ではずっと緊密な関係を保っています。また地理的にも両国は永遠に引っ越しできない隣同士なのです。

ご存じのように「日中平和友好条約」締結前、すでに社民党は中国を重視し、中国と友好交流をしていました。現在、日中関係は緊張状態にあり、両国の国民感情も相互に悪くなっています。私は現在最も重要なことは対立を激化させずに、対立を緩和させるよう努力することだと思います。日中両国は戦略的互恵関係を堅持し、戦略的「互損」関係に陥らないようにすべきです。私、そして社民党は日中友好事業のために力を尽くしたいと考えています。

尖閣諸島は疑問の余地なく日本の領土です。しかし、現在は領土問題によって両国間の国民感情が扇動されており、このようなことが続くのは両国関係にとって、両国の平和的局面にとって、また両国民にとってもよくないことです。社民党はこの点について国会で政府に対し、日中間の緊張関係を激化させてはならないと厳しく要求しました。しかし、それと同時にわれわれも中国に対して同様のことを希望します。たとえば先日のレーダー照射のようなことは非常に好ましくなく、対立を激化させ、日本人に中国人は道理をわきまえないと誤解を招きます。このようなことは日中友好の立場に立つ社民党にとっても大変残念なことなのです。

現在、自民党政権は中国や北朝鮮の「脅威」を理由として、憲法第9条を破棄しようとしています。日中間の緊張状態が続けば、自民党政権の改憲にとってさらに有利になります。また自民党政権に改憲の理由を与えないことは、中国にとっても大変意義のあることだと思います。ですから、私はこの記事を読まれる中国政府の方々や多くの中国国民の皆さんに、この点を認識していただき、この点にご理解をいただきたいと思います。

社民党の信条は墨子が主張する兼愛と非攻です。日本は絶対に戦争を発動せず、絶対に憲法第9条を破棄せず、絶対に軍事大国になってはならないのです。日本が現在世界から尊重されているのは、日本が戦争を発動しない国家だからであり、今後も日本はそのような国家であり続けなければなりません。

 

日本も「女性が天の半分を支える」社会に

―― 世界経済フォーラムが発表した「男女格差報告」によると、政治、経済などの分野における女性の参与度が低いため、日本は世界135カ国中、第101位でした。女性の進出が政治・経済にもたらす影響についてはどのようにお考えですか。

福島 私は鳩山由紀夫内閣で男女共同参画問題特命担当大臣を務めた時に、「第3次男女共同参画基本計画」を制定しました。現在日本の政権は交代しましたが、この計画はまだ継続運用されています。

日本の社会における女性の進出度は確かに高くありません。特に国会議員は少なく、会社内での給与の格差問題もあります。調査によると、日本の有職女性は妊娠出産後、7割前後が退職せざるを得なくなったという結果が出ていますが、女性が活躍すればするほどGDPも上がるのです。毛沢東の言葉「女性は天の半分を支える」のように、もし天を支えようとしたら、男女ともに共同で努力する必要があります。私は力を尽くして日本を男女がそれぞれ天を半分ずつ支える社会へと変えていきたいと思います。

 

日本人は歴史を学ぶべき

―― 何度も中国を訪問されていますが、一番印象に残っていることは。

福島 1980年代のことですが、私は中国の多くの場所を訪れました。西安、敦煌、ウルムチ、トルファンなどです。日本人の家の応接間にはよく掛け軸がかけられていますが、その多くは中国の水墨画です。私は若い時にその絵画の世界を自分の眼で見てみたいと思い、実際に桂林に行きました。桂林に着くと、まるで自分が水墨画の中にいるような気がして、とても感動しました。

桂林に行った時、途中で上海に立ち寄り、80年代の上海の風景を見ました。上海万博の年、私は2回上海を訪れましたが、上海の変化は本当に信じられないほどでした。北京は中国の政治の中心で、上海は中国の貿易の中心であり、この二つの都市はともに素晴らしいです。

でも、私が一番好きなのは中国5000年の歴史文化を体現している場所、例えば西安のお寺、敦煌の莫高窟などで、そこで見たもののすべてに感動しました。中国の沢山の名所旧跡、悠久の歴史文化こそ、中国国民が最も誇りに思うべきものでしょう。西安からシルクロードへ、そして日本の奈良と京都へ、そのなかに多くの文化の共通点を見ることができますし、中国文化の日本文化に対する大きな影響を見ることもできます。

私は中国の古典、漢詩もとても好きで、今は墨子思想を学んでいます。高校生の時、私は中国に興味を持ち始めました。当時の世界史の先生は中国史を専門にしており、世界史の授業では中国史を多く学びました。でも、一般的に日本の学校の歴史の授業では近代史にあまり時間を割かないのが実情です。

最近、日本では大河ドラマ「八重の桜」が話題になっていますが、この時期の歴史上の遺恨により、現在でも福島県の女性は山口県の男性とは結婚したがらないといいます。このことは私に日本が中国に対して起こした戦争を思い起こさせます。中国の子どもたちは小さい頃から祖父母から日本軍によって家族が傷付けられたことを聞いていますから、当然日本人を許せないでしょう。私は、日本人はもっと近代史を学び、反省し、自分の身を他人に置き換えて考えるべきだと思います。そうすれば相手の気持ちを理解できるのではないでしょうか。