平岡 秀夫 衆議院議員(民主党:元法務大臣)
日本と中国は多方面でしっかり手を取り合おう

 2008年、「北京オリンピックを支援する議員の会」が超党派の国会議員で設立された。世界で唯一の北京五輪を支援する国会議員の組織で、民主党総務委員長、衆議院議員の平岡秀夫氏(58歳)は、そのメンバーの一人だ。法務大臣を務めた平岡氏の座右の銘は「至誠通天」。4月16日午後、衆議院第二議員会館で、外国人地方参政権、朝鮮の衛星発射事件、橋下徹・大阪市長をどうみるかなどについて取材した。

永住外国人の地方参政権獲得を支持

―― 長年、永住外国人住民の法的地位向上を推進されていますが、現在、在日外国人の活動範囲は限られており、いまだに地方参政権が獲得されていないというメディアの報道がありますが、どう思われますか。

平岡 率直に言って、この問題について民主党内でも意見が分かれています。憲法上の解釈の問題と、外国人が地方参政権を得てから起こるであろう弊害がその理由として指摘されています。

外国人の地方参政権実現について、現状では解決されるのはまだ難しいです。しかし、この問題が理解されて、できるだけ研究され、解決されることを期待しています。個人的には、永住外国人の地方参政権の獲得を支持していきたいと思います。

 

日本はまだ「移民国家」の準備ができていない

―― 深刻な少子高齢化による人口減少社会の到来により、いずれ日本は「移民国家」になるのではないか、との声があります。政府は、どういう政策を取るべきだと思いますか。

平岡 移民国家への転換は、日本にとって、現実的には難しい問題です。これまでは、日本人は外国へ移民することが一般的で、「移民に行く」ことには抵抗感はないようです。

しかし、「移民がやってくる」ことで外国の人を受け入れるのは、日本の現在の社会情勢からみて、かなり抵抗があると思われます。ですから、日本はそう簡単に移民国家にはならないと思います。

しかし、日本の人口構成に不均衡が生じているのは確かで、外国人労働者を必要とする状況が拡大しています。実際、政府も受け入れのための色々な仕組み作りを始めています。日本は国の実状に沿って、これからの対策を進めるべきです。

 

朝鮮の「衛星」発射事件で日本は冷静さを欠いた

―― 国会の超党派の「朝鮮半島問題研究会」の幹事として、今回の朝鮮の「衛星」発射問題をどうみますか。「衛星」発射後から政府発表に至る「空白の40分」あるいは「混乱の40分」について、どのように考えていますか。

 平岡 先ずご説明しておきましょう。この「朝鮮半島問題研究会」は何年も前にできた会です。「親アジア」の人たちによって、朝鮮半島問題を解決するために討議しようとつくられた研究会ですが、民主党が政権についてから、この研究会は休眠状態になっています。

今回の「衛星」発射問題については、日本は冷静な対応に欠けたと私は考えています。

国内の一部の人たちが、この事件を、いわゆる「北の脅威」を国民に訴える手段にしようとしました。もちろん、このやり方は今の民主党政権に始まったわけでなく、以前の政権もそうでした。

「衛星」発射後の「空白の40分」については、技術上の問題によるものが一部あると考えています。「衛星」が高く飛んでいれば、日本は察知できました。

―― 日米の関連協定では、アメリカはミサイル発射の情報を得たら、すぐに日本に伝達することになっています。それが今回は、アメリカが発表しているのに、日本はまだ確認できていない。こう見ますと、日米間の情報共有はあまり意味がないのでは。

 平岡 アメリカのレーダーが発熱性の不明飛行物の発射を探知したという情報は、日本に伝わっていたのです。ですが、これが長距離弾道ミサイルかどうかを確認できなかったので、情報公開には早すぎると考えたのです。というのも、こういったことで過去間違いが一度ありましたから、今回は非常に慎重になったのです。

 

「船中八策」は熟考すべき

―― 最近、石原東京都知事と橋下大阪市長は頻繁に接触し、日本「副首都構想」で合意しています。こうした地方勢力の合流について、先生はどのように見ていますか。また、橋下氏については、自民党総裁の谷垣禎一氏と『読売新聞』会長の渡辺恒雄氏がヒットラーのようだと評していますが、どう思われますか。

 平岡 民主党からみても、私個人からみても、地方分権、地方自治などの地域主権改革は、時代に適ったものです。地方のことはできる限り地方で決めるべきです。

しかし、橋下市長と石原知事のやり方には、若干の疑問がありますね。橋下市長らが提唱している「船中八策」などの政策は、言うのは簡単ですが、実現させるのは容易ではありません。しかも、こういった政策が良いかどうかも、よく考えなければなりません。

それから橋下市長は、「大阪都構想」に関しては、大阪が国際的な都市間競争で勝ち抜いていくためには、今の「二重行政」は不利だと思っている。しかし、この構想が大阪府や、大阪府に住んでいる人にとって本当にいいものなのでしょうか。疑問が残るところです。

今、国会も政党も国民の意見に耳を貸そうとしないと見られ、国民は閉塞感を抱き、不満を持っています。橋下氏はこういう情況を利用して、故意に対立構造をつくり出し、相手を「悪玉」にして、簡単でわかりやすい論点から攻撃を始め、世論の風向きを誘導しています。こういう状況は、大変心配です。

橋下氏と彼が代表を務める団体が進めている政策について、我々は、党内で議論して、本当に実行して良いのか、国民にとって良いことなのかを検証しなければならないと考えています。

 

日本と中国は多方面でしっかり手を取り合おう

―― 中国からお帰りになったばかりですね。今年は日中国交正常化40周年で、中日国民交流友好年です。しかし、現在の日中関係は相互理解と信頼において問題があります。この点をどうお考えですか。

平岡 中国共産党と民主党で「日中交流協議機構」をつくっています。日中国交正常化40周年の記念すべき本年、輿石東幹事長を代表とする民主党国会議員代表団の一人として、私も中国を訪問しました。

そして、中国と、今後どのように経済交流を強化していくのか、そして、政治的相互信頼を高めていくのか、ということについて意見交換してきました。

 特に、政治的な相互信頼を高めていくためには、政党間で様々なパイプをつくって、交流のチャンネルを増やしておけば、突発的な事件が起きた時でも、すぐに連絡が取り合えます。

今回の会議で、民主党の樽床伸二幹事長代行と中国共産党対外連絡部の劉傑一副部長との間にホットラインが開設されることになりました。また、信頼関係を築くためには相互に訪問することが大事と考え、両国政府は5000人規模の青少年の交流を計画しています。

 ―― 経済交流の強化についてはいかがですか。

 中国は日本の最大の貿易相手国だということを我々は認識しています。投資もどんどん増えています。我々代表団が訪中する数日前に、両国と韓国は「日中韓投資協定」に実質合意しました。この協定ができてれば、日本から中国へ投資しやすくなります。

国際金融の分野では現在、米ドル中心に世界が回っていますが、日中間はもちろんのこと、世界各地で日本円と人民元が直接流通できる枠組みを構築していきたいと考えています。

すでに中国は日本の円借款を受けていまませんが、曹妃甸港区建設プロジェクトなど、インフラが必要な分野で、日本が投資できるところがまだまだあります。こういう方面で、日本は政府、民間を問わず中国に協力していきたいです。

―― 環境問題、少子高齢化の問題についてはいかがでしょうか。

中国は現在、経済の飛躍的な発展に伴い、環境分野において問題が出てきています。日本にもかつて同じような歴史があり、そのため、関連技術がたくさん開発されました。こうした技術や経験が、中国の環境問題に役に立てばと思っています。

また、中国は今後、社会が成熟していくなかで、高齢化や少子化などの問題も出てくるでしょうが、医療・福祉の分野などで、これまでの日本の経験から中国にアドバイスできることがあると思います。

ともあれ、中国と日本は、今や世界第2位と第3位の経済大国で、隣国同士です。ですから、両国は互恵の基礎の上に相互信頼を強め、経済協力を強化していかなければなりません。アジアの平和と安定のために、中国と日本が中心となって努力していきたいと思います。