河野 太郎 衆議院議員(自民党)
中国の若者は自分の目で日本をみるべき

2011年12月19日午後1時半、河野太郎事務所の温度は28度位あったかもしれない。無礼とは思いながらも記者は暑くて背広を脱いだが、河野氏はずっとスーツにネクタイ姿だった。

2002年4月、お父様の河野洋平氏の病状が進行し、肝臓移植手術が必要になった。河野氏は自身の肝臓の一部を洋平氏に移植することを決めた。親を大切にするホットな政治家である。

 

文化交流は「嫌悪感」を和らげる

―― 自民党国際局局長、そして衆議院外務委員長のご経験から、今後、日中関係はどのように改善すべきだとお考えですか。

河野 中国は経済が好調ですね。日本は日中関係を大切にしなければなりません。これまで日本は、中国に政府開発援助(ODA)の援助をしてきました。しかし、現在は情況が変わり中国のGDPは日本を追い抜きました。今後は、いかに手を携えてアジア経済を盛り上げていくかを考えなければなりません。

まずは、文化交流の推進ですね。日本と中国の文化交流は、もっと広げることができます。日本と韓国の例をみても分かりますが、政府が争い、互いに責めあっていても、国民同士の往来は頻繁で、「韓流」は日本の社会に定着しています。日韓で国民間の「嫌悪感」は和らいできているのです。

 

TPPは中国の参加が必要

―― 日本ではTPP(環太平洋経済連携協定)参加をめぐって議論を戦わせています。日本はTPPに参加すべきか、また、日本のTPP参加はアメリカとともに経済面で中国を抑えるためという見方がありますが。

河野 日本はTPPに参加すべきです。日本経済にとっても、地域経済にとってもよいことだと考えています。また、中国と韓国にも加入を勧めるべきです。そうなればアジア太平洋地域の経済連携となります。さらに、ロシアとインドの参加があってもいいと考えています。

 ともあれ中国のTPP参加は必要です。中国やアジアの国々の貿易額は増長し、貿易ルートも拡大しています。中国の参加という前提の下で、TPPが構築されるのが理想的です。

 

アジアは共同で「アジア電力網」の建設を

―― 最近、「エネルギー議員連盟」の代表として、「脱原発」という新たなエネルギー政策を提出されましたね。中国でも新しいエネルギー開発のために努力していますが、今後、中日間では、エネルギー政策の分野でどのような協力ができると思いますか。

河野 中国が電力事業に莫大な投資をされているのには敬服しています。それに、原子力発電だけでなく、水利発電、風力発電にも力を注がれていますね。アジアの国々は共同で新しいエネルギーを活用して、ともに何かをすべきです。

アジアには、再生可能エネルギーがたくさんあります。しかし、この再生可能エネルギーは気候の変化によって大きく変動します。それぞれの国の電力を一つの電力網を通して、共同で利用できればいいですね。風力発電がだめなら、ほかの国の太陽光発電で補うのです。また、太陽光発電が不足しているなら、ほかの国の風力発電で補充すればよいのです。

 将来は、アジア全域に通じる高圧線を引き、送電網を建設して、アジア地域の再生利用可能な電力を安定した輸送状態に保っておくというのは、良い方法だと考えています。日中間だけでなく、アジア全地域でやるのです。いつ、どんな状態でも、安定した電力輸送の状態が保てます。将来、アジア全体でこのような環境をつくるために協力できたらいいですね。

 

中国語のブログ開設

日本の政治家を知ってもらうため

―― 2009年11月5日、日本の政治家として初めて中国の「新浪網」に中国語のブログを開設されました。その後も更新し続け、中国のネット利用者に情報発信していますが、なぜ中国にブログを開設したのですか。

河野 現在、中国にも韓国にもそれぞれ中国語と韓国語でブログを開設しています。日中韓の三カ国は東アジアの基軸です。一人の日本の政治家が何を思い、何を考えているのかを、中国と韓国で中日韓の三ケ国関係に関心を持つ人々に知ってもらうことは、とても重要だと思います。たとえば、福島の原発問題にしても、日本国内の問題としてだけでなく、中国の原発建設にも、経験と教訓を伝えられますから。

 

中国の若者は自分の目で日本を見るべき

―― 中日の若者交流は、今後の日中関係においてとても重要です。「60年代生まれ」の政治家として、両国の若者に何を希望されますか。

河野 日本の若者には若い時に中国語をマスターして、中国をよく理解してほしい。また、中国の若者も日本語を勉強し日本に対する理解を深めてほしいです。そうすれば、若者同士の交流はスムーズにいくでしょう。

それから、中日の両国政府は、若者の交流や留学のための環境を整えるべきだと思います。最近、日本政府はビザの面で多くの制限を緩和してきました。中国のより多くの若者が日本に留学できれば、自分の目で日本を見ることができます。彼らにとって貴重な経験になります。これこそ「百聞は一見に如かず」ですよ。

*                *              *

取材が終わる頃、河野氏は記者に小さな「秘密」を打ち明けてくれた――ここ数年、「今年1年間、中国語を勉強しよう」と年初に志を立て、教科書を何冊も用意するのだが、なかなかマスターできない。実は、2012年の年初にも、再び志を立てるつもりだったが、妻に「本はもう買わないでください。家にはもう置く場所がありませんよ」と言われてしまった。「これがまた、中国語を勉強するやる気とプレシャーになるのです」。