高邑 勉 衆議院議員(民主党)
中国の民間投資は日本への援助になる

日本の国会議員の中に「中国留学組」がある。若い時に中国の大学で学位をとったり、短期留学した人々である。民主党の高邑勉衆議院議員は国会議員のなかで、ただ一人北京大学で修士課程を修了している。「北京大学の国際関係学部で学んだことは、一生の宝です」と語っている。

中日関係や今後の日本社会などをめぐって、衆議院議員会館に高邑議員を訪ねた。

 

対応しても対抗せず

―― 今年は日米安全保障条約締結50周年です。震災以降、日本は意図的に日米の親密な雰囲気をつくりあげ、中国が援助したイメージを弱めようとしているとメディアは指摘しています。日米の安保条約が第2の50年に入ろうとしているこの時期に、新たな共同戦略をもってさらに一歩進んだ日米同盟を確立しようとしているのか。6月末にワシントンで「2+2」会議(日米の外務・防衛両閣僚による会議)を開いたのは、これに関連しているといわれていますが。

高邑 中国を選ぶかアメリカを選ぶかといった討論を、日本はすべきでありません。日本にとっては、中国もアメリカもどちらも大事な国です。中国は隣国ですから、その重要性がアメリカ以下とはいえません。ご存知のように、今年に入ってから、民主党政権は日本の安全保障面で大きな調整を行い、西南地域の軍事部署を強化させました。世論は中国に対抗する動きと見ていますが、日本は中国に「対抗」しようとするのではなく、どのように中国に「対応」するのかを真剣に考えるべきです。「対応」は鍵となる言葉です。

 中国の経済はものすごいスピードで発展し、軍事力も軍亊費も増大しています。中国の軍事力が不透明で、こうした軍事力増強の目的が分からないので、心配になりますが、これは当然のことだといえます。心配になって行動する。南西諸島の駐留はそうした行動の一つになります。ですが、日本は中国と戦争をしようとしているのではなく、何か起こった場合に対応するためなのです。

 日本の海外との貿易額は、アジアとは50%、アメリカとは16%になります。ですから、中国を中心としたアジアの国々は日本には重要だということを強調したいです。日本が中国に対抗することはありません。 

 

日本は中国とアメリカの橋渡しに

―― おっしゃるように、中国の軍事力の増長は経済と同時進行しています。世界的にみて、これは日本も他の国も同じなのに、なぜ理解してもらえないのですか。

高邑 理解しないということではなくて、「透明化」を望んでいるのです。もちろん、どの国も軍事費増加の具体的な内容は国家機密で、全てを公開することはあり得ません。しかし、国際社会も中国の軍事費の増大の背後には何か目的があるのだろうかと考えているでしょう。したがって、日本と中国の間で軍事面での情報交流あるいは防衛面での交流が重要になってくると思います。

 要するに、日本はアメリカとの日米同盟関係を維持しながら、中国との平和、友好関係も保たなければなりません。日本は中国とアメリカの間で架け橋の役目を果たし、太平洋地域での平和と安全を共同で維持しなければなりません。

 

中国を包括した自由貿易圏の建設

―― 民主党の鳩山政権は「東アジア共同体」の構築に熱心でした。

菅政権も野田政権も、環太平洋経済連携協定(TPP)の構築に熱心ですね。世論は、日本がTPPに参加しても、日本の経済にプラスになるとは限らないとみています。民主党政権はなぜTPPに熱心なのですか。今後どうなるのでしょうか。

高邑 とにかく、中国を含んだ自由貿易圏をつくることが一番だと私は考えています。日中韓三国のFTA(自由貿易協定)を推進するのは、環太平洋経済連盟協定に有効的です。突然TTPの問題が出てきましたが、民主党内部にはまず日中、日韓、中韓など三国間のFTAを推進すべきだと主張する人もいます。私個人としてはTPPが必ずしも必要だとは考えていません。

―― 日本がTPPに参加するには、国内の農業問題に触れなければならなりません。野田政府はさらにTPP構想を推し進めると思いますか。

高邑 現在、政府はTPPへの参加を検討しています。農業問題については、農業予算を増やし、各戸の所得を充実させることだと考えています。いまの日本農業は競争力に欠けていて、TPPに立ち向かえません。一言でいえば、日本の農業は根本的な転換が必要です。

 

民間投資は日本への援助

―― 東日本大震災以前、経済面では日本が中国を支援し、その代表的なものが政府開発援助(ODA)でした。中国のGDPはいまや世界第二位です。東日本大震災後、経済面で中国が日本を援助するという歴史的な変化が生じていますが、どう思われますか。

高邑 中国は経済成長によって、世界でますます重要な役割を担っています。援助についていえば、どの国も他国が困った時は援助すべきです。これまで自民党政権は中国に政府開発援助(ODA)を行ってきました。民主党政権になって基本的には停止しましたが、小規模な援助は行っています。今後、日中両国間の経済援助も、政府間の援助という形ではなくなるかもしれません。民間同士の投資も非常に必要になってきます。たとえば、中国の富裕層が日本に観光に来るとか、事業を起こすとかいったことも、震災後の日本にとって援助になります。

 日本には今、偏狭なナショナリズムがあり、中国の民間投資に過敏になっていますが、これはよくない。日本が発展していくためには、もっと開放しなければなりません。被災地の東北地方に「戦略投資特区」をつくり、海外の戦略的な投資を引き込み、中国の民間資本にもこのような地域で運用させればいいとさえ考えています。日中間の経済援助には広い視野が必要ですね。