MeiMei Z世代の在日華人新星シンガー 
音楽で世界の架け橋に

 

「これ、最近ユーチューブで話題の曲なんだけど、なかなかいいよ。時間があったら聴いてみて」。在日華僑の友人が、ある日突然『Flower bomb』というリンクを送ってきた。『花爆弾』という意味だ。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せていた2021年7月23日にリリースされたシングル曲である。自由奔放で澄んだ歌声、曲名の通り破壊力があり、リズム感が聴く人を元気づけてくれる。

 

友人の説明によると、この女性シンガーは華僑二世で、中国語、日本語、英語を話すトリリンガルで、これまでに11カ国・地域に移り住み、年齢は18歳になったばかりだという。

この物語に出てくる一つひとつの数字が、元気よく飛び跳ねる音符のようで、華僑華人の持つ歴史ある重厚な楽譜の中に、まったく新しい生命の歌が創り上げられているように感じた。

私はその物語の続きを聞いてみたいと思った。日本で30年以上メディアの仕事に携わってきた経験上、そこには必ず紆余曲折や挫折があり、それらを乗り越えてきたに違いないからだ。先日、対面とオンラインによって、『Flower bomb』を歌う「00後」(2000年以降生まれ)華僑の新鋭——MeiMeiを取材した。

 

音楽が人生の方向性を変えた

MeiMeiは中国籍で、2003年7月、名古屋で生を受けた。5歳でゴルフを始め、ゴルフ場では、いつも球を打ちながら歌を歌っていた。やがて足の怪我に苦しみ、ゴルフを諦めざるを得なくなった。

彼女は幼い頃からゴルフに打ち込む中で、困難を恐れない強靭な忍耐力と負けず嫌いな性格が培われ、それがその後の創作活動にも活かされている。

2019年、16歳の時、米国の芸術専門の中・高等学校の名門である、アイデルワイルド・アーツ・アカデミーのソングライティングコースに合格した。

在学中の学内公演で、彼女のもつ独特の声が、ワーナーミュージック・ジャパンの目に留まり、先方は彼女を追って米国まで駆け付け、2021年初頭、正式に契約を結んだ。

 

歌で孤独と差別に打ち勝つ

両親の事業の拡大に伴って、彼女は中国、日本、米国の三カ国の間で転校を繰り返し、常に孤独を感じていた。

転校する度に、周りからは冷淡な扱いや、差別にも直面したが、それでも横暴になることはなく、孤独を選ばず、特別な方法で共感、親近感を呼び起こした。

MeiMeiにとっての「特別な方法」とは歌を歌うこと、それも、異なる言語の歌を歌うことであった。

 

上昇を続ける新星

MeiMeiを育てた、ワーナーミュージック・ジャパンの村上プロデューサーに話が及ぶと、彼女は明快に「村上さんは、音楽の道で私を導いてくれる最も大事な人です」と話した。

その言葉と表情には村上氏に対する感謝の思いが滲み出ていた。彼女は初めのうち、曲調の変化についていけず反発していたが、村上氏は様々な方法で彼女を厳しく辛抱強く訓練し、一連のハードなトレーニングを課した。その厳しさは一般の人には受け入れられない過酷なものであったという。

この時、当時ゴルフ場で培った、困難を恐れない精神が活かされた。湖のほとりで、山の中で、訓練は度々数時間に及んだ。彼女は一回一回の発声練習のチャンスを逃さなかった。日本語と英語の歌詞の1フレーズ1フレーズに注釈をつけ、納得がいくまで続けた。

村上氏はMeiMeiを絶えず叱責、激励しながら、一方で彼女に最も適したトレーニングプランと路線を探り、レーベルとプロダクションで組んだスペシャルチームを元に日本で長年名声を誇ってきた音楽プロデューサーのJINや葉山拓亮、著名な編曲家の平出悟に依頼し、新しいシングル曲を制作した。

MeiMeiのニューシングル『never ever』が2021年9月にリリースされると、日本語と中国語に自在に切り替わるラップは、すぐに世界のリスナーの心を捉えた。

中国人シンガーの英語の曲が日本でリリースされると、日本メディアはMeiMeiを「トリリンガルのZ世代シンガー」と呼び、「国際派シンガー」と称えた。

好奇心旺盛な日本の音楽ファンも、この聡明でお茶目で圧倒的な爆発力をもつ中国の女の子を、ミュージックビデオで初めて知った。

2021年暮れ、再びグッドニュースが舞い込んだ。MeiMeiが、独自のスラップ奏法で世界中から注目を集めた、サムライギタリストでミュージシャンのMIYAVIをフィーチャリングゲストに迎えた新曲『strangers feat.MIYAVI』が、2022年1月26日にリリースされることが発表された。

 

この先も更にトップクリエイターがMeiMeiとのコラボレーションを準備しており目が離せないZ世代華僑の大型新人アーティストが誕生した。

 

取材後記

取材の最後に、今後の目標について尋ねると、彼女は興奮気味に話してくれた。「20歳までに中国人として紅白歌合戦に出場して、23歳までに米国のグラミー賞を受賞して、音楽で世界に橋を架けること。そして、私の歌が皆さんに幸福と希望とエネルギーをもたらすことを願っています!」。星空に、きらめく中国の新星が昇ろうとしている!