今なお新型コロナウイルスの感染下にある日本では、さらに感染の拡大が続いており、在日華僑華人たちも懸念し、決して油断はしていない。本誌ではこれまで、駐日本国中国大使館の詹孔朝参事官兼総領事、張玉萍大阪代理総領事、孫大剛新潟総領事、律桂軍福岡総領事、劉暁軍名古屋総領事にインタビューしてきたが、5月7日には日本の読者と華僑華人の関心事について、劉亜明札幌総領事にオンラインでインタビューをおこなった。
「アフターコロナ時代」に向けて
—— 新型コロナの感染拡大が世界経済の成長スピードを鈍らせていますが、中国経済は真っ先に米中貿易摩擦から立ち直りました。しかし日本国内では首相が交代し、新型コロナ感染拡大の第四波が来ており、日本の経済成長と中日関係は厳しい局面に置かれています。日本と中国の未来、特に札幌総領事館の管轄区域の発展のチャンスと提携の余地について、展望をお聞かせいただけますか。
劉亜明 新型コロナの感染が拡大して以来、世界各国は相次いで出入国の規制措置を実施、国際貿易は大きな損害を被り、グローバル経済は停滞しました。目下、新型コロナ感染対策は世界各国に共通する重要課題となっています。
国際情勢は深刻化していますが、中国経済は一人勝ちしており、向かい風の中を前進している状態です。中国共産党の確固たる指導の下、中国人民は心を一つにして、新型コロナウイルス感染拡大との戦いに打ち勝ち、国内経済、社会のスピーディーな復活と安定的な成長を実現しました。中国は2020年にGDPがプラス成長した唯一の国となり、世界経済を徐々に成長へと推し進めています。
今、世界は百年に一度の変動期に直面しています。中米関係のあおりを受けて中日関係もこのところ低調傾向で、新しい複雑な情勢の中にあります。中日両国は互いに重要な隣国であり、提携パートナーであります。両国関係の健全で安定した発展が、両国民に大きな利益をもたらし、地域ひいては世界の安定と繁栄に大きく貢献します。困難に直面して、中日両国はさらに積極的かつ理性的な心理状態で互いに向き合い、「アフターコロナの時代」におけるアジア太平洋地域と世界の融合的な発展を共に推し進めていかなければなりません。
今年、中国共産党は成立100周年を迎えます。中国は社会主義現代化国家建設の新しい道を切り開きます。今年は東京五輪、来年は北京冬季五輪が開催されますし、来年は中日国交正常化50周年も迎えます。中日両国は時代の潮流と国際情勢に合わせ、交流と協力を強化し、相互尊重の基礎の上、繁栄する美しい未来を共に創造し、地域と世界に安定性とプラスのエネルギーをさらに供給していかなければなりません。
当総領事館の管轄区域である北海道、青森県、岩手県、秋田県と中国の各関係地域とは長期的に友好交流を維持し、観光、経済貿易、教育、文化などの分野での協力は顕著な成果を挙げています。北海道は美しい風景、快適な天候によって、中国人観光客の訪日観光の目的地の一つとなっています。今年は北海道と黒竜江省との友好関係締結35周年であり、双方はオンラインとオフラインの二本立てで記念のイベントをおこなっています。新型コロナウイルス感染拡大が収まるのに伴って、双方の人的往来がスピーディーに回復し、各分野での提携協力もさらに大きく発展すると信じています。
駐札幌総領事館からの防疫物資に感謝を表す達増拓也・岩手県知事
中日両国の防疫精神を発揚
—— 札幌総領事館の管轄区域は広く複雑な地形の地域であり、総領事館の業務遂行には客観的にも困難があるのではないでしょうか。特に昨年、中国人観光客に人気の観光地である北海道で真っ先にコロナの感染爆発が起こり、総領事館の業務にも影響が出たと思います。感染爆発が始まったころの状況についてお話しいただけますか。
劉亜明 2020年の初めに中国で新型コロナが感染爆発した直後、当総領事館はウエブサイトで感染状況のページを新設しました。まず、管轄区域の中国人観光客、華僑華人、留学生、中国企業の従業員に向け、新型コロナウイルスに関する情報を掲載、管轄区域の中国国民に感染から身を守り、もし感染したら直ちに受診するよう呼び掛けました。2月28日、北海道に緊急事態宣言が発令され、日本で初めて新型コロナによる緊急事態に入った自治体となりました。このとき、当領事館はネット上に11の注意事項と通知を掲載し、中国国民に対し感染状況と予防対策、日本の出入国措置、総領事館のビザ手続きなどについて詳細に紹介しました。同時に、中国国内の関係各所に連絡し、マスク、漢方薬の蓮花清瘟胶囊などの対策物資を買い付けました。感染拡大に伴い、管轄区域内のマスク、消毒液などの物資が不足したため、当領事館では中国からの物資が到着後すぐに管轄区域の華僑華人、留学生、中国企業の従業員らに予防ハンドブックと共に配布しました。それと共に、定期的に各華僑団体、留学生組織、中国企業協会と感染予防のオンライン会議を開催し、管轄区域の中国国民の感染予防生活をサポートしました。また、領事館の人手不足を乗り越え、防疫健康コード業務専門チームを組織し、24時間シフト制で帰国する人たちの健康コード発行業務を行っています。
劉亜明総領事と華僑団体リーダーとの防疫オンライン会議
感染拡大の初期には、中国国内の物資が不足していたので、当総領事館では積極的に各自治体、各友好団体と関係者、華僑華人の中国国内ヘの物資寄贈に協力し、累計でマスク8万枚余、防護服4万着などを送り、当領事館を通して275万7500円を寄付しました。そして日本国内の感染状況が深刻化した後、当領事館は中国国内の関係機関と協力し、管轄区域の各地にマスクを累計33万5000枚、防護服5000着余を寄贈しました。コロナに立ち向かう中で、中日両国民は助け合って困難を克服しようと、「山川域を異にすれども、風月は天を同じとす」という漢詩の一句が中日友好の旗印となりました。
中国駐札幌総領事館で防疫の「健康パック」を受け取る青森県の中国人留学生
管轄区域の同胞の事業をサポート
—— 総領事館では華僑華人の地域社会への融合、地方経済の成長の後押し、震災後の復興の推進のためにどのような取り組みをされていますか。
劉亜明 北海道、青森県、岩手県、秋田県は日本の最北端に位置し、気候にも特徴があり、日本の他地域に比べると、工業、情報産業などの分野では立ち遅れがあります。しかし、独特の自然、豊富な観光資源、広大な土地も、観光業、不動産開発、ウインタースポーツなどの産業育成には大きなポテンシャルがあります。当領事館管轄区域の華僑華人は各産業分野で活躍しており、努力の結果、注目に値する実績を上げています。管轄区域の主な華僑団体には、北海道札幌華僑総会、北海道華僑華人連合会、北海道中国化学技術者連盟、北海道中国会、岩手県中国人会、秋田県華人華僑聯誼会、青森県華人華僑会、函館華僑総会、旭川華僑総会があります。中には歴史の長い古い華僑団体もあり、できたばかりの新しい団体もあります。
管轄区域の同胞の事業の振興をサポートするため、当総領事館では長期的に以下の業務に力を入れています。
「以僑為本、為僑服務」という華僑業務の主旨を徹底し、華僑業務の遂行にあたっては、「海外華僑の現地での長期的生存と発展に役立ち、わが国と海外同胞所在国との友好協力関係の発展に役立ち、わが国の現代化建設と祖国統一の推進に役立つ」という三原則を堅守し、国内の華僑業務部門及び地方政府とのコミュニケーションを維持し、タイムリーに国内の華僑業務の最新の政策変更を把握し、管轄区域の同胞が祖国建設に身を投じるルートを打ち立て、架け橋を構築しています。
管轄区域の各自治体と長期的効果的なコミュニケーションの仕組みを構築し、定期的に面談し、各地域の成長のポテンシャルを汲み上げ、華僑華人の現地での振興にさらに多くのチャンスと大きな保障を提供します。当領事館の努力により、一道三県では現地の華僑華人による投資と事業に対して各官庁が積極的な姿勢をとっており、未来の展望は広がっています。
中国はまさに「二つの百年」を目標とした新時代の完成に歩みを進めており、われわれは華僑華人の皆様が積極的に祖国建設に身を投じて、中華民族の偉大なる復興のために貢献することを歓迎します。
領事保護案件の対応能力を高める
—— 日本政府が徐々に入国条件を緩和し就業先が増えたことにより、北海道と東北三県の華僑華人も倍増しました。管轄区域の領事保護業務を遂行する中で、困難や感動的なエピソードをご紹介いただけますか。
劉亜明 領事保護業務は、当総領事館の仕事の重要な部分です。管轄区域は広大で、北海道と東北三県が津軽海峡で隔てられていることが、領事館の業務をさらに難度の高いものにしています。当領事館は人手の少なさ、任務の重さという困難を克服し、健全な領事保護救急システムを構築し、24時間対応できる専門員を確保して重大な案件に遭遇したら迅速に行動し、善処しています。当領事館では領事保護連絡員制度を作り、管轄区域の華僑華人、留学生、中国企業の従業員に積極的に働きかけ、領事保護連動ネットワークを構築し、領事保護案件の対応能力を高めています。
北海道胆振東部地震の後、ボランティアを結成した北海道大学学友会のメンバー
2018年9月6日、マグニチュード6.7の北海道胆振東部地震が発生しました。地震の影響で、北海道全域で電力供給が絶たれ、大部分の地域で断水し、交通機関が運行を停止し、通信ネットワークも基本的にダウンしました。新千歳空港も被害を受けて閉鎖され、全ての定期便が運行停止し、3000人近くの中国人観光客が北海道に足止めされました。地震発生後、当領事館は直ちに領事保護救急対応システムを起動させ、華僑華人や留学生などを緊急に動員してボランティアチームを組織し、非常食や保温製品などを購入、地震で困っていた中国人観光客を助け、さらに札幌華僑会館に地震救急臨時ヘルプセンターを設営し、どこにも行けなくなった中国人観光客に宿と簡単な食事を提供しました。地震発生の翌日、年配の香港人観光客が二人、ヘルプセンターを訪ねてきました。二人とも標準語が話せず、当領事館にも広東語ができるスタッフはいませんでしたが、言葉は通じなくても、互いに助けあい、共に難局を乗り越えた中国人の心は強くつながりました。熱いおかゆと毛布に、二人の老人は涙を流し、つたない標準語で「謝謝(ありがとう)」とお礼を言ってくれたので、皆心を動かされました。
近年、北海道は中国での知名度が上がり続けており、北海道に観光に来る中国人観光客は急速に増えていますので、領事保護案件の発生率もそれに伴い上昇しています。当領事館は「外交為民」というモットーを堅持し続け、全力で管轄区域の中国国民の領事保護業務に専念します。
中国国民のためのサービスの質とレベルを上げる
—— 総領事は日本の他の総領事館でも総領事を務めていらっしゃいました。管理の方式や方法などで違いはありますか。
劉亜明 中国大使館では領事部の仕事をしていましたし、参事官兼総領事を務めました。長崎、札幌の両地では総領事を務めました。各地の状況はそれぞれ異なりますので、仕事の内容にも多少違いがあります。中国大使館では、領事業務を担当しており、主に在日同胞の皆様に対する役務とサポートの提供、そして駐日本の各総領事館の領事華僑業務に対する指導をしていました。総領事館での仕事としては、総領事としての業務のほか、管轄区域の対中関係の健全で安定した発展を促進し、各分野での交流と提携を拡大することも重要な仕事です。
新しい情勢、新しい任務に直面し、われわれは「人民のために奉仕する」という精神を堅持し続け、その仕事の新しいモデルと新しい取り組みの改善を模索し続け、中国国民のためのサービスの質とレベルを向上させます。海外の中国国民の合法的利益を保持するという総領事館のモットーは変わらず、中日関係の健全で安定した発展を推進する努力も変わることはなく、祖国を富強、民主文明と調和の取れた美しい現代化国家に建設するという初心もまた変わることはありません。われわれは華僑華人、留学生、中国企業の方々と手を携えて共に進み、祖国のさらに美しい明日を創造するため、中日関係の発展を推進するため、貢献していきたいと思います。
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