詹 孔朝 中国駐日本大使館参事官兼総領事
同胞への新型コロナ対応で業務も進化

新型コロナの感染拡大は、インタビューの形を変えた。2月28日午前、予定通りオンラインにつなぐと、画面には詹孔朝総領事だけでなく、馮宇、張桂兵の二人の領事も顔を出してくれていた。このような豪華なメンバーは、在日華僑華人と誠意、真心を持って、気心を通わせるプロフェッショナルなコミュニケーションをしたいという領事部の気持ちを表していると言える。以下が、インタビューの摘要である。

新型コロナが領事部に新たな任務をもたらした

—— 昨年来、新型コロナウイルスの感染は国境を超えて、世界的に広がりました。中国の在外大使館や領事館はそのなかで新たな領事・保護業務に直面しています。そんな背景のもと、駐日本中国大使館領事部は総体的にどのように判断し、感染状況を掌握し、領事業務を展開されたのでしょうか。

詹孔朝 新型コロナの感染が発生してから、世界の多くの国ではそれぞれ異なる感染拡大の経緯をたどっています。感染は現在もまだ世界的な規模で続いており、日本も自国のことだけ考えていることはできません。現在、感染の長期化に伴い、感染状況が常態化してきており、私たちはそのなかでいかに計画し、準備し、感染の制御と領事業務をこなすかを考え、実行していかなければなりません。

新型コロナの感染拡大下、私たちの領事業務は従来の証明書業務、保護業務と協力業務のほか、新型コロナ感染と直接関係する新しい任務も大幅に増えています。それぞれの分野からご紹介しましょう。

まず、証明書業務ですが、これは主にパスポート、旅行証明書、ビザ、公証、認証、婚姻登録などの業務です。もちろんそのほかにも領事証明、健在証明などがあります。新型コロナ感染に直面して私たちは多くの証明業務に最大限努力しており、在日同胞の日本での仕事、生活、勉強に大きな影響が出ないよう全力で支えています。年間に処理する各種証明書は7万6000件余に上ります。そのうちパスポート・旅行証明書がおよそ1万5000件、公証は約2500件、認証は3万件ほどです。ビザは約2万8000件、婚姻登録は900組ほどです。

また、パスポートがすぐに更新できなければ、同胞のビザの更新、在留カードの更新にも影響しますので、昨年2月、積極的に日本側の担当部門に働きかけ、業務量の減少と感染可能性の減少という視点から、ビザの有効期限の自動延長を認めるという特別な調整を日本側に促し、成功しました。現在、中国のパスポートが期限切れになっても、日本のビザや在留カードは更新手続きができます。これは在日同胞が学習、生活、仕事をする上での「精神安定剤」になっているはずです。

領事保護業務と協力業務についてですが、具体的には昨年大使館で処理した案件は1600件余あり、関係者は延べ2500人余に及びます。そのうち、死亡の案件が105件、精神疾患などの案件が6件、重症の市民の帰国協力が5人、日常的な領事保護問合せ文書が6万4000通、警察の領事通報4500件余を処理しています。日本で行方不明になった市民1800人余の捜索協力、困窮した同胞の救援が100人余、各種の領事警告の公布が90件余あります。

従来の業務のほか、私たちは新型コロナ感染に伴う新しい業務に対応しなければなりません。これは、私たちの業務の重点を、同胞の安全、健康を守るという点へと転換させましたので、同胞の感染防止をサポートし、同胞の健康、安全と合法的権益を守れるよう方法を考えなければなりません。これも、以前にはなかった業務です。

日本で新型コロナの感染が拡大し始めた時期には、多くの湖北省の観光客がまだ日本に滞在していました。私たちは緊急に折衝し、チャーター機3便を手配し、最終的には全ての湖北省の観光客を安全に、順調に帰国させることができました。

このほか、旅客船「ダイヤモンド・プリンセス号」の基礎疾患のある同胞の救援や、チャーター機での香港・マカオの同胞の帰還業務もありました。さらに、私たちは多くの同胞、華僑団体の義援金、寄付の品物を受け取りましたので、中国国内の赤十字などの関係機関と協力し、無料で物流サービスを提供してくれる心ある企業を探し、最終的にチャリティーのルートを構築しました。

さらに、昨年の春節後には、同胞が集中して日本に戻って来て感染拡大のリスクが生じることに対応する手配を速やかにおこないました。対応する呼びかけと注意を発すると同時に、大きな華僑団体、学校にそれぞれ訪問したり電話をして、所属するメンバー、生徒を必ずきちんと管理し、万が一にも大規模なクラスターを起こしてはならない、さもなければ華人社会全体に致命的な打撃となる旨、念を押しました。幸運にもそのようなことは起こりませんでした。

「ダイヤモンド・プリンセス号」後、感染状況は常態化の局面に入り、同胞の健康・安全をまもり、外から感染を入れないことが仕事の重点になりました。私たちは華僑団体、企業、学校を訪問し、華僑団体、留学生を組織して100以上の感染防止グループを設立しました。

同時に、私たちはあらゆる方策を講じて折衝し、健康セット、マスクなどの感染防止グッズを配布しましたが、特に最初は物資不足のなか、優先的に高齢者や学校などに4回にわたってマスクを配布し、高齢者と子供たちのマスクのニーズをおおよそ満たしました。

さらに、オンラインで感染防止講座を提供し、率先してオンラインリモート診療サービスのウェブサイトを開設しました。私たちはこのベースの上で、さらに積極的な措置も講じました。華僑の医療従事者を動員してオンライン診療をおこない、コンサルティングサービスを提供し、高い効果を上げたのです。

また孔鉉佑大使の求めにより、同胞へのマンツーマンの診療を全快するまで継続させました。重症患者に対しては病院へのタイムリーな入院治療を手配しました。その結果、日本で感染した400人以上の同胞の重症患者も全て速やかに入院治療ができ、一人の死亡例もなかったのです。

日本の感染拡大が深刻になり、 海外からの感染防止の任務が忙しくなりました。私たちは日本が真剣に実施している関連政策に緊密に協力し、検査機関の監督管理、検疫後の感染防止の注意、健康コードの審査、航空会社の飛行の感染防止の徹底を促すなどの業務を全力でおこない、政策が厳格に実施されるという前提のもと、出来る限り便宜をはかる措置をとり、乗客の負担を軽減させました。

現在、日中両国間には1週間に26便の定期便が就航していますので、大使館の健康コードの審査は600人分以上に上ります。乗客の順調な搭乗のため、健康コードの審査は休日もなくおこなっており、24時間業務を実施しています。

大使館は同胞とのコミュニケーションを強化

—— 新型コロナ感染が発生してから、華僑華人の仕事や勉学の生活が大きな打撃を受けただけでなく、領事部の業務にも影響が生じたことでしょう。このような状況下で、領事部はいかに華僑団体、華僑メディア、学校そして華僑華人とのコミュニケーションを維持しているのでしょうか。

詹孔朝 コロナ禍は対面での交流に対する大きな障害を作ってしまいました。新型コロナ感染拡大以降、私たちは必要な対面交流を確保するほか、オンライン、電話、メール、テレビ会議、オンライン活動などのやり方でのコミュニケーションを余儀なくされています。

例えば、問い合せの件数が大きく増加したので、1つだったメールボックスを4つに増やし、それぞれ領事保護案件、旅券・ビザ、公証・認証・婚姻登録、健康コードなどに対応させており、専門要員も手配し、全てのメールをチエックしています。

それぞれのメールボックスに届く問合せは1日平均300件ほどで、ピーク時には1000件を超えました。もちろん時間も手間もかかりますが、皆さんの状況や困りごとを伝える大切なルートですので、絶対に続けていきます。

また、新型コロナ感染対策への同胞の動員や、同胞共助の激励など、共に困難な時を乗り越えるために、私たちは華僑団体、華僑のリーダー、学校、さまざまな中国語メディアを訪問すると同時に、テレビ会議によって別々に華僑団体代表会議、領事協力ボランティア会議、華僑界医療従事者会議、少数民族華僑代表会議などを30回以上開催しました。

そして、情報交換、思想の統一、パワーの凝集という目的を達成しています。さらに、皆さんの証明書の処理、「ダブル陰性証明」などに支障が生じたり、詐欺の増加や同胞の権益の侵害などの問題に対して、私たちはオンライン上で双方向の活動を何度もおこない、活動終了後は関係の疑問点を整理、総括してQ&A方式でメディアを通じて発表し、多くの同胞の理解と協力を得ています。

市民の差し迫った問題を真摯に解決する

—— 現在、華僑華人社会で最も大きな要望は、パスポートの更新、遺失、再発行およびビザ関連の問題解決です。領事部では、これらの問題の解決の難しさはどこにあるとお考えですか。

詹孔朝 コロナ禍の影響で、証明業務は滞っています。主にパスポートの滞りが深刻で、約4万件のパスポートが処理待ちになっています。現在、ビザ、認証などは基本的に滞っておりません。いつでもビザセンターは予約できます。証明業務は市民の変わらぬニーズであると理解していますので、積極的に方法を考えてパスポートの処理待ち問題を解決していきます。

馮宇 私が皆さんにお知らせしたいのは、郵送事務は対面での注意に及ばず、交流の時間のコストは高いということです。どうか、郵送証明手続きのフローに沿って、『郵送証明申請書』にある資料リストを一つ一つ確認していただきたい。

現在、申請書に署名がない方もいて、そういった申請書にはいかなる法律的効力もありません。また、申請書の署名に繁体字を使っており、パスポート上の簡体字の署名と異なっている方もいます。署名は必ず簡体字を使ってください。ほかに、写真が基準と合っていない場合も多いです。写真の背景は必ず白いこと、両方の眉毛、両方の耳が見えており、帽子を被らず、ヘアアクセサリーもつけてはいけません。こういった写真の条件ははっきり書いてあります。

証明事務の効率を高めるため、郵送を選ぶ皆さんには必ず『郵送証明申請書』にある資料リストをよく読み、一つ一つチェックして確認し、郵送に必要な資料が全てそろっているかを確認してください。

説明が必要な7つの問題

—— 言うまでもなく、日本の一部の華字メディアは領事部の業務に対してさまざまな声を発しています。この中の多くは誤解であると信じたいのですが、どのような誤解をすぐに解く必要がありますか。

詹孔朝 コロナ禍がコミュニケーションに支障を生じさせたため、皆さんの気持ちもよく分かります。この機会にいくつかの問題についてご説明し、皆さんにご理解、ご支持をいただきたいと思います。

1.大使館が対外業務を

一時停止した問題について

昨年4月8日、日本が緊急事態宣言下に入りましたので、大使館も4月9日から対外業務を停止し、スタッフは自宅待機となりました。しかし、私たちは緊急ルートを確保し続け、外交官の代理のスタッフが直接受理し、緊急の証明事務のニーズに応えました。5月末、東京の緊急事態宣言収束後、スタッフを手配し、ビザセンターの場所を借りて処理する方法を取り、証明事務量をさらに拡大して緊急の証明事務のニーズに応えるようにしました。その後、多方面の努力を経て、昨年10月中旬から一部対外業務を開始し、現在に至ります。今般、日本には二度目の緊急事態宣言が出されましたが、大使館は閉めていません。

2.感染防止措置の問題

大使館のスタッフが感染を恐れているため、コロナ前の業務状態には全面回復できないと言う方もいます。私たちは確かに現地スタッフをAとBの二つの班に分けていますが、大使館の幹部職員はずっと詰めています。スタッフをAとBに分けているのは、いったん感染と隔離が発生すれば、すぐに誰かが代わることができ、サービスが停止しないよう、継続して皆さんにサービスを提供できるようにするためです。これは日本政府の一般的なやり方です。

3.パスポート郵送に予約が

必要な問題

パスポートの滞りが大きすぎるため、もし予約制を取らなければ数万件のパスポートが一度に送られてきて、業務の混乱を招き、管理が行き届かなくなり、皆さんのパスポートと資料の保管にも支障が生じてしまいます。

4.パスポート期限切れの問題

期限切れはパスポート更新に関係ないこと、また日本のビザ、在留カードなどの更新にも影響しないことをもう一度強調したいと思います。このほか、新生児は期限内にパスポート申請しなければならないという規定もありません。皆さんにはお子さんの健康を重視していただきたいですね。急いで領事部に申請する必要はありません。

5.予約番号が少ない問題

皆さんが画面上で見られる窓口申請の予約番号は50しかありませんが、実際の処理量は150件を超えています。現在皆さんがご覧になっている予約画面はすでに番号を増やしており、4月の予約番号は150に増えています。窓口業務の予約番号のほか、郵送申請の予約番号も毎日100件ありますので、合わせて業務日1日あたり250の番号を発行し、すでにコロナ前の平均水準に達しています。もちろん、番号の発行量を増やし、コロナ前のピーク値を超えられるよう、さらに努力を続けています。

6.大使館の勤務時間問題

なぜ大使館は午前中しか開館せず、午後は開館しないのかと疑問を持つ方は多いのですが、実際、パスポートの申請処理には多くのプロセスがあり、窓口での応対はその一つにすぎません。その後続けて、入力、データ確認、審査、作成、規定の費用徴収、発行、記録整理など多くのプロセスがあります。

7.電話がつながらない問題

電話がつながらないというのは確かに以前からある大きな問題です。コロナ禍では各種の問合せが激増し、さらにつながりにくくなっています。限りあるマンパワーは証明業務、領事保護、コロナ対策と検疫など多くの業務に割かなければならず、一つ一つの電話にすぐに対応することが難しいのは確かです。さらに皆さんへのサービス、業務のために尽力しなければなりません。急ぎの用事なのに電話がつながらない場合には、メールをお勧めします。それが確実です。一般的なお問い合わせについては、大使館のウェブサイトとWeChat公式アカウントをご覧ください。私たちも引き続き多く寄せられる質問を収集、総括しQ&A形式にして、華僑団体、留学生組織、中国語メディアなどを通じて対外的に発信していきます。

ネガティブな感情を和らげる

—— このたびのコロナ禍まれに見る長さで、影響も大きくなっており、華僑華人社会にはネガティブな感情の蓄積ももたらしています。領事部はその解消、緩和についてどのような提案をしていますか。

詹孔朝 私たちはコロナ禍がネガティブな感情をもたらすことに留意しています。仕事の中で、留学生のうつ病、最悪の場合自殺という問題に遭遇しています。多くの場合、自殺は防げていますが、不幸にして自殺に至る場合もあり、本当に心が痛みます。その他の同胞のグループにもネガティブな感情が蓄積しています。その中の多くはコロナ禍によるものです。長期のコロナとの戦いによって生まれたネガティブな気持ちを和らげるため、私たちはオンラインでの心の癒し講座を何度か開催し、皆さんに喜ばれています。さらに続けてこの種の活動を続けていきます。同時に各華僑団体、留学生組織に役割を発揮し続けることを提案します。ペアを作って日常的にコミュニケーションをとり交流し、互いに励まし合い、助け合い、気持ちを癒すというやり方です。このほか、コロナ感染拡大がおさまったら、感染防止措置をとった上で、ひとけがあまりなく、広々とした場所を選んで屋外活動をするのもいいですね。ただし、参加人数をしぼり、人々が密集する活動はせずに、安全を確保しなければなりません。

張桂兵 ネガティブな心理については、皆さん、特に留学生に注意を促したいと思います。日本の地域社会には、特に大学の中にはカウンセリングルームがありますので、もし心にネガティブな気持ちが生じたら、積極的にこういった施設を利用し、そこのカウンセラーや先生方と交流し、自身のネガティブな心理状態からできるだけ早く抜け出してください。一部の大学には中国学友会もあり、WeChatグループもあります。彼らはうつ傾向のある仲間を暖かく癒してくれます。華僑団体の中にも心理学の先生を含む多くの医療従事者がおり、ネガティブな心理を緩和するサポートをしてくれるでしょう。

留学生のほか、技能実習生も心に問題を抱えがちです。日本の現実が予想していたものと違っていたため、極端な心理状態になることもあります。中国の家族とのコミュニケーションや連絡が十分ではなく、電話番号を家族にも知らせず行方不明になってしまう人さえいます。家族の暖かさはネガティブな感情の緩和には替えのきかない効果があります。中国人留学生、技能実習生に対しては、必ず家族と良い関係を保ち、定期的に連絡し、親にも遠い海外にいる子供を気遣うように呼びかけています。心のネガティブな感情を和らげる最も良い方法は、グループに入ることです。自分の中に閉じこもらず、孤立せず、人と交流し、友達と付き合うことで、自分の友達グループができるはずです。