林 斌 DaddyBaby 董事長
防護用品で中国のエネルギーを伝える

一衣帯水の隣国日本では、中国が感染拡大防止に全力をあげている際、日本政府と国民が援助の手を差し伸べ、「山川域を異にすれども、風月は天を同じとす」と、海を隔てた中国を応援した。

いただいたものは返すのが礼儀である。日本で防護用品が不足した際、中国の一民間企業、DaddyBaby社は「遠くにいても隣にいるように親しく感じる」と箱に書いた防護用品を東京、京都、大阪、岡山の各自治体や学校、病院、福祉施設、文化団体などに贈って中国の親愛の情を表した。

コロナ禍でもあり、本誌はオンラインで、同社のこれまでの歩みと日本での防護用品支援について、林斌董事長にインタビューをおこなった。

科学の普及で、新風をもたらす

現在、中国では公式あるいは非公式に男性従業員の育児休暇を設置する企業がますます増えている。女性の社会進出を扱うバラエティー番組『パパはどこへ』も好評で、父親の育児参加に対する認識はかなり浸透してきている。育児の科学的な新しい理念を普及させ、新しい時代の流れを作り出す推進役の一つがDaddyBaby社である。

1970年代、イギリスの心理学者がまず父親の育児参加の重要性を指摘した。多くの事実が、父親が育児に積極的に関わった家庭では、幼児期には心理面で健康的に成長し、成人してからも問題を起こす可能性が低くなることを証明している。もし父親が子供との心の交流を重視すれば、子供の心は楽観的になり、周囲の同級生や教師とも良好で和やかな関係が容易に築けるようになる。

この視点は、人々の頭のなかに新しい思考の旋風を巻き起こしたものの、本当に普及し推進させていこうとすると、常に伝統的な生活習慣という高い壁にぶつかった。2005年、中国の子供たちにさらに素晴らしく、さらに健全な成長過程を作り出し、もっと健康的でもっとなごやかな育児モデルを構築したいという願いを胸に、DaddyBaby社は福建省で正式に設立された。設立と同時に、同社は「パパがお守りすると、赤ちゃんはさらに賢くなる」という育児コンセプトを打ち出し、同時にチャリティー活動の支援、業界の組織化、コンテンツ派生ビジネスなどの方法で、先進的な理念を広め、普及させ、多くの父親の育児参加、父親と子供とが共に成長する育児というブームを巻き起こした。

エリックショーという名前は、アニメ『トムとジェリー』、『スポンジボブ』のファンなら知っているはずだ。父親に育てられたエリックショーは、DaddyBaby社が提唱する科学的育児理念に賛同している。この天才テレビ脚本家は、同社のために特製アニメ『DaddyBabyの不思議なハーク』の制作に関わった。同社は、多くの家庭でリラックスした雰囲気の中で共に成長する楽しみを味わい、家庭と育児における父親の責任感と重要性を知らず知らずのうちに強くし、文明的で和やかな社会の構築を促進する役割を担っている。

品質第一、安定した歩み

2014年、ゼロから出発したDaddyBaby社はわずか9年で、中国の紙おむつ業界で売り上げシェア第6位にまで成長した。2015年、同社は株式上場を成し遂げたが、中国の紙おむつ企業としては初の上場であった。現在、「ダディーベイビー」「マミーエンジェル」「カンラン」などのシリーズ製品があり、どれも誰もが知っている人気商品となっている。原材料のトレーサビリティー、国際的で先進的な生産ライン、リーンマネジメントの三つが、同社が頭角を現すための切り札であった。

DaddyBaby社のシリーズ製品の原材料は、提携パートナーである日本の住友精化、SDPグローバル、米国のクオリティーファースト、ドイツのヘンケル、不織布のPGIなど、全てが世界トップ500の企業から提供されている。

事を行うにはまず十分な準備が必要である。2015年、同社は世界トップクラスの瑞光社の生産ラインを導入し、7本の瑞光生産ラインという驚くべき規模となったが、そのうち4本は赤ちゃん用のテープタイプ紙おむつ生産ラインであり、3本はパンツタイプ紙おむつの生産ラインである。

2017年、DaddyBaby社はスマート製造にモデルチェンジし、インダストリアル4.0スマート化時代の幕を開けた。施工した「新時代の薄型紙おむつIC化スマート工場建設」プロジェクトは、「2017年福建省スマート製造モデルケース企業リスト」に選出された。

自分の血縁ではない老人を敬い、血縁ではない子供も忘れない。製造業は発展途上国の立国の基本であり、振興の器であり、強国の基盤である。乳幼児のための紙おむつはさらに基礎中の基礎であり、根本の中の根本なのである。

DaddyBaby社の売れ筋商品である「エアコンおむつ」は、紙おむつ市場のシェアバランスを変えた。このような「育児の神器」の登場は、「言う側は無意識だが、聞く側は気に留める」というような雑談から生まれたものだ。生活に対して愛着を持つ、同社の創業者である林斌は会社を指揮する生産の責任者であり、超薄型のベビー用紙おむつを研究開発し、エアコンの原理をモデルに通気性の良い、適温で除湿される不思議なつけ心地の紙おむつを実現した。小さな紙おむつが、子供たちに正しい生活習慣をつけたり、家庭を和やかな雰囲気にするのにも役立つ。消費者が笑顔で製品の使用法を話しているのを見ることが、同社の従業員にとって最も誇らしいことなのだ。

規範的に発展し、合理的に競う

DaddyBaby社は順調に発展してきたわけではない。

よく知られているように、福建省には優秀な紙製品の企業が集まっており、日々成長する市場がさらに多くの企業をこの業界に引き付けている。しかし、その市場が飽和状態に向かうにつれ、一部の企業は競争の隘路に入り込み、価格競争を始め、低価格作戦で多くの注文を受け、その結果コスト割れの危機に陥り、結果的に原材料の品質を落とすことで利益を確保するという、一種の悪循環が生じたのである。

鍋いっぱいの粥も一匹のネズミのフンで食べられなくなる。いつしか、「福建製造」は「低品質」の代名詞となってしまった。そんな情況に、品質を生命線とし、国際市場を見据え、中国のイメージを高めようとするDaddyBaby社は焦った。まとまりがなく、互いに食い潰し合う福建省の衛生用品市場は調整を必要としており、同社は先頭に立って福建省衛生用品業協会を設立した。組織ができ、規範が作られ、共同で努力する空間と方向が定まった。

中国のパワーを世界に進出させようとする民族のプライドと業界の共同発展を促進させる社会的責任感は、逆境の中でもDaddyBaby社に品質を守らせた。同社は「民族ブランドは1つだけではなく、百花斉放であるべきだ」という発展スローガンを打ち出し、胸筋を開いて業界の良性の循環と兄弟企業の共同の発展を促進した。社内に対しては、自主研究開発によりレベルアップし続ける消費者のニーズを満たし、対外的には業界の秩序ある競争と良性の循環を実現したのである。

高度な社会的責任感により、DaddyBaby社には称賛の声が集まった。同社の創業者である林斌も前後して、福建省衛生用品業協会副会長と福建省総商会副会長に推挙された。

危機に命を受け、超過達成する

2020年初め、新型コロナウイルス感染症が広い範囲で拡大した。1月24日、DaddyBaby社の生産工場のある福建省は、重大突発事件1級対応を宣言した。パンデミックの襲来に、防疫体制は緊迫していた。本来であれば家族が集まり祝う春節も、殺伐とした緊張した雰囲気の中で過ごすこととなった。春節4日、不安を抱えた福州市の指導者が急ぎ足で、同社の工場地区を視察に訪れ、福建省にはマスク生産ラインがないという苦境を改善して欲しいと希望した。同社はすぐに会議を開き、効果的な生産変更の可能性を検討した。

新年はまた、各地で感染防止の警報を出し続ける時期ともなり、生産設備の発注は高価格でも思うに任せなかった。時間の節約のため、感染防護用品の大量の不足を補填するため、また地域的空白をなくすために、DaddyBaby社の従業員は心を一つにし、全員で策を練り、最終的に設備の部品を改造することによって、紙おむつ30万枚を生産する無菌の生産現場を、マスク10万枚を生産する仕様に高度化させた。ミッションを引き受けてから、第一便のマスクを出荷するまで、わずか11日間しかかからなかった。

福建省、福州市の各レベルの指導者と専門家たちはDaddyBaby社の工場地区を訪れ、第一線で働く従業員を熱く励ました。同社は極限を突破して2月6日には改造後の最初の生産ラインでマスク生産日産70万枚という「福建スピード」を実現した。念のため記しておくと、当時の福建省全体での一日のマスク生産量は80万枚であった。

現状に満足せず、さらに研鑽を積む。DaddyBaby社は平均10日間で生産ライン1本を改造する高効率を実現し、半月で6本のマスク生産ラインを開通させた。また特に児童、生徒の健康を守るための専用の生産ラインを増設し、記録を更新し「中国スピード」と記された。感染防止の重要な時期、彼らは身を挺して市民の健康と安全を守り、2カ月間で福建省全体に5000万枚のマスクを提供したのである。

世界に目を向け、声を伝える

祖国が新型コロナウイルス感染拡大の抑止に成功し、DaddyBaby社の感染防止に対する貢献が、福建省新型コロナ肺炎防止業務緊急指揮部など各レベルの指導者から表彰されても、同社は社会的責任を放棄せず、マスクの生産を停止しなかった。それどころか、同社のトップは世界の多くの国々、地域が感染防止のプレッシャーという試練に遭遇し、マスクなどの防護用品の買い占め、供給停止、マスク不足という情況が出現していることを知り、残業して全力で子供用マスク、成人用マスク、医療用KN95マスクの生産を続けた。

一衣帯水の隣国日本では、中国が感染拡大防止に全力をあげている際、日本政府と国民が援助の手を差し伸べ、「山川域を異にすれども、風月は天を同じとす」と、海を隔てた中国を応援した。

いただいたものは返すのが礼儀。日本で防護用品が不足した際、DaddyBaby社は「遠くにいても隣にいるように親しく感じる」と箱に書いた防護用品を贈って中国の親愛の情を表した。

日本列島の東京、京都、大阪、岡山の各地に、DaddyBaby社の心のこもった贈り物を届けた。2020年3月、同社は5万枚のマスクと8838着の防護服を日本の伸和株式会社の協力により、大阪府の関係者に贈った。4月には日本の国際医療交流支援協会に20万枚のマスクと10万枚の医療用マスク、5月にはさらに同会に5万枚の医療用マスクを含む20万枚のマスクを贈った。6月から7月にかけて、京都市役所、京都府南丹市役所、立命館大学、京都大学附属病院、裏千家など21の自治体、学校、病院、福祉施設、文化団体、さらに岡山県、奈良県の自治体、医療機関に総数50万枚のマスクを寄贈した。

マスクの寄贈は、民間企業の自発的な行動に見えるが、これは祖国の国際的イメージに関わり、国と国との外交関係と将来の発展にも影響する。国際社会では、中国の急速な経済発展に対して警戒心を持ったり、敵意さえ抱く人もおり、新型コロナウイルスの流行を中国のせいにする人もいる。DaddyBaby社はこういった時期における不断の国際援助によって、高品質のマスクなどの防護用品を用いて、国際社会に向けて大国としての自負、社会的責任感と友愛精神を持つ民間企業としての輝く姿を示したのである。同社はアジア以外でも、ヨーロッパの一部の国と地域にも援助の手を差し伸べ、イタリアの上海総領事、スペインバルセロナ市などからも感謝状を受け取っている。

取材後記

率直に言うと、日本のベビー製品業界はすでに成熟しており、国際市場でも知名度が高く広く認められている。DaddyBaby社は「中国IT」「中国スピード」によって、「中国の物語」を語っている。盤石な日本市場の隊列に突破口を開こうと決心した背景には民族ブランドへの信頼があり、グローバル市場の新ルートを開拓しようとする勇気の裏側には、「人類運命共同体」を打ち立てるという大きな流れがある。

日本市場は高品質に代表される厳格な参入規制があるが、いったん日本市場で足場を固められれば、グローバル市場へのチケットを手に入れることに成功し、同時に民族ブランドが世界のショーウインドーでポジションを得ることを意味する、というのが多くの国際的企業家の共通認識である。15年間、諦めずに歩み続けたDaddyBaby社は、努力により業績を上げ、力強い言葉を示し、大志と民族への責任感を抱いて世界に向かって進出し、世界に愛されている。