李 碩彦 小龍坎グループホールディングス執行役員、副総経理
本家の四川火鍋で中国を語る


撮影/本誌記者 倪亜敏

火鍋は中国を代表するグルメであり、四川の味の中でずっと確固たるベースとなっている。2019年9月8日、小龍坎火鍋が東京・新宿に支店をオープンし、熱さと辛さの嵐が新宿の街に巻き起こった。この店は小龍坎の日本初の支店であり、海外支店としては10店舗目である。世界の400近くの都市で1000店を擁する有名レストランとしての小龍坎の成功経験は検討し、学ぶ価値がある。

新中国成立70周年の本年、小龍坎グループホールディングス執行役員、副総経理である李碩彦氏にインタビューをおこない、小龍坎の市場戦略、ブランド戦略など、経営理念を伺った。

潜在力の高いアジア市場に進出

—— 今年は新中国成立70周年の年であり、この過程で中国は立ち上がることから、豊かになり、強くなるところまで来ました。海外の華僑華人はますます自信を深めています。小龍坎がこの時期に日本市場に進出したのは、どのようなお考えからでしょうか。

李碩彦 中国の「豊かになる」プロセスは、中国料理が海外進出し続けたプロセスと重な
ります。目下、海外には60万軒を超える中国料理店があり、多くの有名レストランは続々と海外に出て成長しています。これは「舌先の中国」(人気の料理紹介番組)の伝播であり、中国文化の伝播であり、最も親しみやすい方法で中国の物語を語るものです。

小龍坎が経営する元祖四川火鍋料理の店は、東京・新宿への出店が海外第10号店となります。味の面から言いますと、四川料理は早くから世界でも広く知られており、影響力もあるおかげで、四川流の辛さは国際的にも広く浸透しています。強烈な味覚の刺激はますます多くの海外消費者を引きつけており、多くの方が病みつきになっています。これは四川式火鍋の小龍坎に海外で成長するチャンスを提供してくれました。

このほか、ロケーションの要素と中国料理の影響力がアジア市場での近年の中国レストラン急増の基盤となっています。アジア各国の中国料理に対する注目と評価にも極めて大きな熱意が現れています。アジア市場の強大な潜在力を考えれば、当社もアジアを海外進出の版図の重要な一部と見ています。これまで当社は、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアの市場の開拓に成功しており、アジア展開の自信を強めました。

将来的に、小龍坎は日本で大阪を含めた4店舗の展開を予定しております。このほか、当社の「四川料理調理品」も日本市場に進出しているところで、元祖の熱く辛いライフスタイルを日本の消費者に届けようとしています。当社は開拓が待たれるアジア市場に視線をフォーカスし、四川料理の青写真を描いていきます。

出店場所の選択で成功が決まる

—— 「民は食を以て天と為す」と言います。外食産業ブランドの成長要因は単一から多角化へと向かっており、これは有名レストランが頭角を表すことがますます難しくなっていることも意味します。小龍坎は火鍋の代表的ブランドの一つですが、市場戦略についてお話いただけますか。

李碩彦 『2018年中国火鍋カテゴリー専門報告』の統計データによると、中国の火鍋レストラン数はすでに40万軒近くに達しており、火鍋市場は拡大し続けています。これは諸刃の刃と言えます。ますます多くの人が火鍋を好んでくださるのと同時に、大量の一般化した店が参入してきて、国内火鍋市場の競争はますます激しくなり、業界再編のサイクルは短縮し続けており、無数のブランドが一夜のうちに消えうせています。

ピンチはチャンスを意味します。日に日に激化する競争に直面し、小龍坎は積極的に出店しています。国内市場に対しては、二、三線級都市まで細分化し、サプライチェーンを強化しています。積極的に海外市場を開拓し、海外での四川料理の影響力を高め、グルメ文化を広めており、レストランに集中し、それを使命としています。これらは小龍坎がピンチの中で行っている戦略の転換です。

特に申し上げたいのは、外食産業では、「酒の香は客を引き寄せる」のです。ですから小龍坎は出店するロケーションを非常に重視します。日本支店の場合、小龍坎新宿店は東京・新宿のにぎやかな場所にあります。ここは18本の地下鉄、電車路線のターミナルであり、幹線道路も走り、客の流れが放射線状に拡大します。支店の付近には大型ショッピングセンター、語学学校、高級オフィスビルがあり、中日両国の住民、ホワイトカラー、観光客、留学生などのグループから成る、若者が多い地区です。若者グループのメディア習慣の調査により、正確にマッチンググループのインターネット・マーケティングをおこなうことで、客の質が保証されます。

サプライチェーンの標準化がブランドの基盤

—— 日本は細部と安全を重視する国で、その一分野が食品安全分野です。これは外食産業の最も重要な部分であり、最も基礎的な部分であるとも言えます。この分野において、小龍坎は味の保証の前提のもと、食品の安全を向上、保証する上で、どのような措置を講じているのでしょうか。

李碩彦 小龍坎は元祖四川火鍋の味を守り、新鮮で安全な食材を使用し、店舗の標準化経営を保証していますが、これを実現している基盤が膨大なサプライチェーンなのです。

いわゆるサプライチェーンとは、一部門ごとの集合であり、また内部リソースのアドバンテージにより、店舗が迅速にポテンシャルエネルギーを成長できるようサポートしています。当社は標準化オペレーション、統一化された食材獲得ルート、厳格な品質管理によって、すべての食品の新鮮さと安全、口当たりの安定性を保証しています。

サプライチェーンの構築にはかなり長い時間と金銭コストがかかりますが、必要なことなのです。ですから、標準化レベルが高い火鍋業界にとって、サプライチェーンはブランド成長を支える大事な保障なのです。小龍坎は自前のサプライチェーンを持つブランドであり、海外市場を拡大する中で十分に自社の強みを発揮できており、ブランドの海外での成長のために推進力を提供し続けています。

強大なサプライチェーンという強みのおかげで、小龍坎は地域の制限を突破でき、どのような場所に店舗を開設しても、純粋な四川風味を保つことができるようになっています。

元祖四川の味を全力で広める

—— 出店や安全などの要素がブランド成功の基盤だとすれば、真に人々の胃をつかむことが、成功の必要十分条件です。9月のオープニングパーティーでは、華僑華人、日本人もみな小龍坎の味を認め、高く評価していました。「味」の面で小龍坎が力を入れている点は何でしょうか。

李碩彦 まず、小龍坎火鍋の特長をお話しましょう。当社ブランド一押しの元祖四川牛脂火鍋には、芳醇で新鮮な牛脂を使っており、「絶代双椒」(絶世の山椒二種)を入れており、百年伝承された標準的焙煎技術を使い、四川を代表する麻(しびれる味)と辣(辛い味)を徹底的に表現することに力を注いでいます。

四川火鍋を普及させることは、四川文化を広める一つの方法であると、私は深く認識しています。当社の新宿店の外装には独特な四川西部の建築を取り入れています。白壁、灰色瓦、反り返った軒先、青レンガ、紅灯、窓枠の彫刻、彩色陶器、隈取りなど、四川文化の魅力をご紹介しています。日本のお客様の心の中に、中華民族文化に対する興味や経験が生まれてくれるだけでなく、在日華人の皆様に、目の前の光景と慣れ親しんだ味によって望郷の思いを和らげていただければと思います。

いきいきとした立体的な方法で中国伝統文化の魅力を伝え、文化の価値をブランドに付与し、伝統文化を昂揚することが小龍坎の海外進出の初心です。それを実現してこそ、ブランド自身もさらに価値が高まり、さらに遠くまで行けるのです。ブランド経営の成功はもちろん、文化交流の成功も、すべて中国の物語を語ることに繋がります。これも中国企業としての小龍坎の責任と栄誉なのです。