張 亜梅 北京高文法律事務所所長
中国人弁護士は国際舞台で活躍を

世界最大の自動車ガラスメーカー、福耀集団(FUYAO GROUP)の合併・買収事業を成功させ、北京人文大学の買収・再編では法律業務の総責任者を務め、2012年には、中国海洋石油総公司の子会社売却事業の常任法律顧問に就任。通遼穀物集団、北京歯輪廠など数社の企業再編計画に参画……。北京高文法律事務所の張亜梅所長は、業界でも名の知れた「伝説の弁護士」である。弁護士として働き始めたのは80年代末からで、1998年に中国政法大学で法学の修士学位を取得した。2003年初めには、北京高博弁護士事務所の全面再編を統括し、北京高文法律事務所と名称を改めた。中華全国弁護士協会会員、中国法学会仲裁委員会会員、西安仲裁委員会仲裁員を務め、西安仲裁委員会2012年度10大モデルケース賞及び精励賞を受賞。2012年度北京市朝陽区優秀女性弁護士及び党建之友、2014年北京市優秀弁護士にも選出されている。先ごろ北京で、法曹界のキャリアウーマンを取材した。

お客様第一主義で

―― 優秀な法律事務所には、優れた経営理念があると考えます。貴事務所の経営理念をおしえてください。

張亜梅 高文法律事務所は2001年に設立され、本部を北京に置き、現在上海、大連に分所があります。また、中国国内の主要都市及びアメリカ、ブラジル、ドイツ、オランダ、イギリス、韓国、オーストラリア、シンガポール、ロシアなどの国・地域には事務所や提携機関があります。

業務内容は、企業法務、知的財産権、訴訟・仲裁、海商海事、国際貿易・アンチダンピング、労働、外商投資、不動産・建設工事、金融証券、法律顧問、刑事案件などです。どの部門も専門能力に優れた弁護士が担当し、専門性の高いサービスを提供しています。同時に部門間で密接に連携し、チームとして仕事をしています。

また、国の経済建設に奉仕することを信条に、お客様第一主義、責務遂行を理念としています。そして、専門家のアドバイスをもとに、分業化、チームワーク、プロジェクトチームシステムを基盤に、お客様にオールラウンドの細やかで効率性の高いサービスを提供しています。

現在、当事務所に所属する弁護士は100名を超え、それぞれが専門分野で名の知れた方ばかりです。中国国際貿易仲裁委員会、西安仲裁委員会、合肥仲裁委員会の仲裁員を務める弁護士もいます。

 

精鋭部隊で多くの全国初を樹立

―― 貴事務所は「精鋭部隊」として業界では有名です。これまでの実績にはどのようなものがありますか。

張亜梅 確かに素晴らしいチームだと思います。優秀なパートナーである張洋弁護士は、ドイツの高級車メーカーが中国に世界トップクラスの自動車工場を建設するプロジェクトで、全工程で法律顧問として陣頭指揮を執りました。また、中国の民営大手グループ企業のアメリカ・ニューヨーク・マンハッタンにおける商業不動産投資プロジェクトにも、張氏は現地の弁護士とともに携わり、高い評価を得ています。

知的財産権の分野は、王正志弁護士が担当しています。中国初の知的財産権指数報告の監修として、チームを主管して5年連続で『知的財産権指数報告』を発表し、これは中国の知的財産権の各指数・データを全面分析する上での手引きになっています。この指数報告の英文は世界知的所有権機関(WIPO)の公式サイトに掲載され、中国政府の知的財産権のグローバル戦略に一役買っています。

商標の分野は、商家泉弁護士主管のもと、高文弁護士が代行し、司法手続きを経て、人民教育出版社の『人教版』、滾石唱片の『滾石及図』、『摩天』、『法泰』、『内聯昇』、『巴拉巴拉』、『森馬』、『龍及図』等の名だたる商標を手掛けてきました。

著作権の分野は、孫茂成弁護士が主管し、著作権登録や代理著作権案件を多く処理してきました。日本の有名歌手・浜崎あゆみの中国著作権登録、『ドラえもん』アートの著作権付与及び権益保護、20世紀フォックス社がLG社の『アバタ―』ブルーレイDVDを著作権侵害で提訴した案件、テレサ・テンの兄が北京の出版社を肖像権侵害で提訴した案件など、全国初の判例を多く扱ってきました。

特許の分野は、徐江華弁護士が主管し、特許譲渡、許諾、融資等で10億元(約198億円)近くを勝ち取ってきました。さらに、国内外の1000件近い知的財産権訴訟で、権利者の経済損失20億元(約396億円)を取り戻しました。多くの判例が、最高法院判例集、最高法院十大判例、中国法院知的財産権司法保護モデル判例50件等に採択されています。

訴訟においては、先例のない多くの案件を扱い、勝ち取ってきました。高梅弁護士が請け負った、女性が拝耳医薬保健有限公司を訴えた新薬試験契約紛争案件では、「新薬試験契約紛争」という全く新しい判例をつくりました。孫茂成弁護士が担当した、世界最大の民間貸借ネットワーク会社(P2P)の宜信が、某企業をファイナンスリース契約問題で訴えた案件では、顧客に有利な法的サポートを見出しました。

 

慈善事業で社会貢献

―― 近年、中国の法律事務所の海外進出が顕著です。貴事務所は国際舞台でどのような取り組みをされていますか。

張亜梅 当事務所は国際協力を強化し、国際市場の開拓に力を入れ、世界有数の法律事務所に成長したいと考えています。今後、中国人弁護士は国際舞台でどんどん活躍していくべきです。我々はヨーロッパ、アメリカ、アジアの多くの国・地域の法律事務所と良好な協力関係を築いています。中でもヨーロッパには15機関、アメリカには3機関のパートナーがいます。アジア・太平洋地域では、日本、シンガポール、韓国などにパートナーがいます。基本的に一カ国につき、少なくとも2機関と提携しています。その他に、オーストラリア、インドなどにもパートナーがいます。

 

―― 昨今、企業・団体の社会責任がますます注目されています。貴事務所は慈善事業活動においては、どのような取り組みをされていますか。

張亜梅 創業以来、中央電視台(CCTV)、法制日報、人民日報などのメディアと密接な連携を保ちながら、当事務所の公益理念を発信してきました。

中国の著名な民間公益団体の慈善活動に継続的に参加し、雲南、貴州、四川、湖南、湖北、甘粛、陝西省等の山間地域に物資を寄付しています。また、江西省宜豊県澄塘郷中心小学校の活動を直接支援し、北京愛心学校との姉妹提携等を行っています。さらに、?川地震、玉樹地震の被災地に義援金を贈り、学生に書籍や物資を寄付し、毎年定期的に専門の弁護士を派遣し社会的弱者に無償の法的支援を行っています。

法的支援だけでなく、人材養成、就学支援、障がい者支援、貧困者支援、被災地への寄付などの慈善事業に事務所を挙げて積極的に取り組んでいます。 

また、七年連続して無償で国内外の大学生のインターンシップを受け入れています。アメリカ・デュケイン大学の学生、清華大学、北京大学、中国政法大学など中国の有名大学の法学院の学生の知的財産権分野でのインターンシップを受け入れ、長年の実務経験を学生に教授し、学生が理論と実践をリンクできるように指導しています。

さらに、児童のための大規模な慈善活動にも参画し、全行程にわたって無償の法的支援を行い、必要な児童には寄付や助成を行っています。また、アメリカの自然保護基金・中国プロジェクトに無償で法的支援を行い、市民の環境保護意識の覚醒、環境保護に寄与しています。

当事務所はこれまで、世界を舞台に社会貢献することを信条としてきましたが、今後もそれを堅持していきます。