コロナ下の「ウーマノミクス」が日本のスキンケア市場を刺激

「リップスティック指数(不況時には女性が口紅を買うという理論に基づく指標)」のように、女性のニーズは社会情勢のトレンドを占う風向計の役割を持っており、経済の成長と後退を示すものとなっている。

新型コロナウィルスの感染拡大という危機的状況のもと、マスクをつける生活が長期にわたっていることで、肌の問題も生じており、女性を悩ませている。NHKの2020年6月の報道によると、医療機関の皮膚科の患者は以前の20倍に上ったという。

また、資生堂グローバルイノベーションセンターの菊田研究員は、コロナ禍発生後、20歳から50歳までの女性に対するネット調査をおこなった結果、マスクを常につけていることによって、38.4%の女性が肌に乾燥と荒れがあり、43.3%の女性は肌が敏感になりかゆみを感じるとし、34.3%は吹き出物やニキビができやすいと回答した。

菊田研究員の分析によると、マスクをつけると顔面の温度が上がり、湿度が高くなり、皮脂と汗の分泌が加速され、皮膚のバリア機能が落ちて、さまざまな肌のトラブルが起きやすくなるという。

日本の各大手スキンケア企業も女性からの悲鳴に素早く反応し、対応するシリーズ商品を売り出し、新しい市場競争を巻き起こした。もちろん消費者から見れば、研究開発が激しければ激しいほど、肌への朗報は増えるというわけだ。

クレンジングウオーターの販売量が年間500万本を上回り、洗顔フォームの販売量が年間700万本以上ある日本の銀座のブランド、花印はこの競争のなかで頭角を現し注目を集めている。

資生堂製品開発研究室の元室長である富田健一氏を顧問に迎えた花印は、コロナ下において主に三つの分野で力を発揮した。

まず、元資生堂の研究開発担当者など特許開発の専門家を招聘し、研究開発に力を入れ、2種類の製品がまもなく販売開始される予定である。

一つはランコムのアイクリームに対抗する商品で、愛媛県宇和島の真珠貝から抽出した加水分解コンキオリンや、消炎、抗菌の働きがある沖縄の月桃の葉から抽出した物質などが含まれている。

もう一つはポーラのホワイトニング製品に対抗し、抗酸化と線維芽細胞を活性化するツボクサの成分、皮膚の状態を有効に改善する和歌山県の南高梅などが含まれている。

次に、ネット販売を拡大した。以前、花印の多くの製品は国内のマツモトキヨシ、ドン・キホーテ、ヨドバシカメラなどの量販店、タサキ薬局、ミモザ薬局、ドラッグストアモリなどの大型チェーンのドラッグストアで販売されていたが、コロナ下の不要不急の外出を控える傾向を考慮し、楽天、アマゾンや公式ホームページにオンラインでの販売ルートを広げ、消費者に便宜をはかった。

さらに、積極的に東南アジア市場を開拓し、皮膚の負担ゼロ、日本国内生産などの高い基準の条件をクリアし、製品が日本の消費者による評価を勝ち取っただけでなく、香港、ベトナム、タイ、カンボジア、マレーシアなどの国家と地区でも売れ行きを伸ばした。

最後に、日本国内の多くのエステ企業と提携を進め、エステ専用製品を開発し、科学技術によって、製品のセグメンテーションに注力した。

どこの国でも消費のグレードアップが進むなかで、女性の持つ役割はますます重要になってきており、女性は間違いなく消費市場の牽引者である。コストパフォーマンスの追求から、さらに良いブランド、さらに良いデザイン、さらに良い体験、さらに良いサービスを求めるようになり、ついにはSDGsを進め、社会的責任を持つ企業にお金を払うようになっている。

1 年以上続くコロナ下での打撃により、過去のものになった企業もあり、再起不能に陥った企業もあるが、勢力を蓄えて新しいステージへ上っていく企業もあるのだ。