発展を続ける 日本中華總商会が 次の二十年へ
厳 浩 日本中華總商会 理事長

2021年3月、日本中華總商会は、ホテルニューオータニで設立20周年記念式典を行った。厳浩会長が記念のスピーチを行い、ビジネスを基軸に華僑の強みを発揮しながら日本社会に根を張り、在日華商の発展のため、さらには中日経済交流の架け橋として奮闘してきた總商会の20年の歩みを振り返った。

日本中華總商会の発起人の一人である厳浩氏は、1981年、中国教育部の派遣留学生となり、在学中、CRO、SMO、IT一体型の医療・薬品、臨床試験サービスを手掛けるEPSグループを設立した。EPSグループは2001年にJASDAQに上場、2006年には東証第一部に上場を果たした在日華商の模範的企業である。厳浩氏は13年の長きにわたって日本中華總商会の会長を務めたが、この度、理事会の決議により、執行理事会理事長に選任された。

—— 長い間日本中華總商会の会長を務められ、お疲れ様でした。總商会は設立してから二十年経ちましたが、その中で一番苦労されたことは何でしょうか。

厳浩 こんにちは、先日日本中華總商会の会長を退き、理事長に就任しました厳浩です。長きにわたり、日本新華僑通信社ならびに『人民日報海外版日本月刊』の読者の皆様に大変お世話になり、改めて御礼申し上げます。そしてインタービューの機会を頂き心から感謝します。

總商会が設立されたのは1999年9月9日でした。当時、新老華僑企業、そして中国企業の在日法人を須らく網羅し、さらに日本と中国、そして海外の華商団体とも交流できるプラットフォームを作ろうという熱意と言いましょうか、意気込みがありました。これをうまく集約して向けたのは、世界華商大会の日本誘致と開催でした。これは見事に成功して、中国や海外の華僑界に在日華商の結束と力を煌びやかに見せ付けることができました。これは前半の10年を代表するような出来事でした。

しかし、組織というものは共通の考え、あるいは信念というものを持たないと、烏合の衆になりかねません。世界華商大会の後の總商会はどの方向へ進み、どのような組織を作っていくべきか。この答えを出すにはやはり10年余りかかりました。これは理屈ではなく、皆様が理解し納得するものでなければなりません。いわば自らのアイデンティティですからね。まあ、苦労と言えばこれは一番の苦労ではないでしょうか。

辿り着いたのは、私が機会のあるごとに強調している、總商会の名称に込められている意味、つまり「日本」と「中華」、そして「商(ビジネス)」という三つのキーワードです。總商会の基軸は「商」にあり、会員企業の発展、そして地域経済への貢献をめざし、ビジネスに徹することです。一方の「中華」は私たちのバックグランドであり、これは中国のみならず、東南アジアをはじめとする海外の華僑をも含まれる、一種の資源として捉えても差し支えません。平たく言うと、この資源を「商」のために有効活用することに尽きます。

最後に「日本」ですが、私たちは華僑・華人であり、純粋な日本人とはもちろんどこかで違うものです。しかし、とはいえ私たちはただの観光客や短期の訪問者ではなく、また政府関係者や大企業の駐在員ともまったく違うのです。私たちは縁があって日本という国で仕事をし、生活を営んでいます。それを自ら選択したからには、お客様気分ではなく、いわば能動的な態度で日本社会に溶け込むよう自ら努力しなければなりません。そして、些かなりともこの日本社会に貢献する義務があり、またそれを果たす能力も私たちには備わっていると思うのであります。

—— これから總商会の理事長として、何に専念し、そしてどこに力を注ごうと考えていますか。

厳浩 まずは理事長として新会長をサポートすることです。䔥新会長は華僑三世であり、日本で生まれ育ちました。きっと私にはない新しい特徴を總商会にもたらしてくれることを信じています。今まで支えて頂いた分以上に、今度私は䔥会長を支えていきたいと思っております。

先日總商会設立20周年の記念式典で、私は總商会が「シンカ」しなければならないと申し上げました。その意味するところ、一つは「深くもぐって化ける」(深化)ということです。表面的、一時的なことを追い求めるばかりではなく、より長期的な視点から、具体的に実行可能な事業計画を考えることが大事です。

例えばビジネス創出機能を強化しなければなりません。ビジネスチャンスは空から降ってきませんが、実はいろいろな所に潜んでいます。留学生が多くいる学校から、研究者が大勢集まるアカデミアと言われる研究機関から、また中国から、海外から、何よりも私たちの足元である日本の日常から様々なシーズやニーズを拾い上げ、それをマッチングさせていくことでビジネスを創り出していきます。このような機能を總商会に是非ほしいものですね。

次に理事長として一つ重要な責務は總商会の組織運営を強化していくことです。これから会員数を500社、600社と伸ばして参りますが、当然組織運営への要求はいままでと違ってきます。理事会、専門委員会、そして事務局がどのような体制で応えていくか、イメージをしながら、一歩一歩深化していく必要があると思います。

「シンカ」のもう一つの意味は「進んで化ける」(進化)ということです。成長というのはどちらかと言えば、量的に少しずつ大きくなっていくことです。ところが、進化は違います。進化とは突然変異をしたり、未熟なものが成熟になったりして、質的に大きく変わることを言います。

それを成し遂げるためには、もっと若い世代に頑張ってもらわなければなりません。幸いに總商会には若い優秀な人材が多く集まっています。彼ら・彼女たち--いわば次世代の同志たちは、きっと往時の良き伝統を引き継ぎ(継往)ながらも、今の私には想像もつかないように進んで化けていき、總商会の輝かしい未来を切り開いていく(開來)ことでありましょう。

「革命尚未成功、同志仍須努力」(革命なお未だ成らず、同志よって須らく努力すべし)。これは広く知られている孫文先生のお言葉ですが、それに倣えば、總商会もまさしく「尚未成功」(未だ成らず)でありますから、私を含め今日まで頑張ってこられたコアメンバーの皆さんは引き続き貢献していかなければならないと思います。しかし、次の世代にバトンを渡していくことは、これからの總商会のためにより重要ではないかと思う今日この頃です。