関係の深化と民間の相互信頼を促進 中日メディア対話会を開催

中国の著名なシンクタンクである鍵睿智庫と上海外国語大学日本研究センターが共催した「2018年中日メディア対話会」が2018年12月23日、中国・瀋陽市の東北大厦酒店でおこなわれた。今回の対話会は「歴史を回顧し未来を展望する」をテーマとし、2018年の中日関係に見られた新しい変化という背景下での報道の視点と重点的な変遷を通して、未来の両国関係の趨勢を分析し、両国のストーリーをともに語り、両国間の理解と相互信頼を促進する目的を持っている。20名近くの両国の著名なジャーナリストと研究者がゲストとして参加した。元駐中国大使の谷野作太郎氏があいさつし、上海外国語大学日本文化経済学院教授である上海外国語大学日本研究センターの廉徳瑰主任らが対話会の司会を務めた。

 

谷野作太郎氏はあいさつのなかで、「2018年は国際社会に予測し難いことが起きました。トランプ氏が『アメリカ・ファースト』を打ち出し、米中関係にきしみが生じて貿易摩擦へと発展し、日中関係にも大きな影響を及ぼしました。日本国内の世論調査では日米関係が良好だとする人は減っており、日本とアメリカの関係もまさに厳しい段階にあります。これと同時に、日本人の中国人に対する感情には明らかな好転は見られません。このことは両国間の交流と相互信頼には強化していく余地があることを示しています。2019年、世界の情勢はさらに複雑になっていき、多事多難であることは必須です。そのような大きな環境のもとで、日中両国はさらに相手の国内で何が発生しているかを知る必要があり、メディアは正確に伝え、適切に分析し、監督する職責を発揮することが求められます。日中両国のメディア対話会は両国関係の改善の貴重な機会を提供します。双方とも建設的な議論ができるよう希望します」と述べた。

基調講演と自由討論の部における参加ジャーナリストの認識は、ほぼ以下のようにまとめられる。2018年は中国の改革開放40周年、「中日平和友好条約」締結40周年、同時に明治維新150周年の年でもあった。歴史と現実などの原因により、中日関係は同時にまだ不確定な要素もある。そのような背景のもとで、中日両国の国民、政府の相互理解のための重要なルートとして、メディアは両国の交流、提携や国民の友好往来を促進するにあたり、重要な職責を担っており、不可欠な重要な役割を演じている。

北京大学歴史学部客員教授である本誌編集長の蒋豊は、日本の明治維新150周年の回顧と中国の改革開放40周年を記念する意義を通して、中国は当初、日本の明治維新の成功体験を吸収することを重視し、「科学技術」と「教育」の建設に邁進したが、現在では明治維新の教訓をくみ取り、大国が台頭すると他国を欺くという道を進まないと決め、「一帯一路」建設に注力し、人類の運命共同体を打ち立てたことは、多角的にみると明治維新が中国に深遠な影響を与えたことを証明しており、両者の間の深層での関係を検討することは、両国の未来の方向に大きく役立つだろうと述べた。また、『鳳凰週刊』編集部の漆菲副主任は、週刊誌の企画を代表し日本で明治維新をテーマとした取材をした経験と取材の感想から、三つの歴史のターニングポイントに立脚して、明治維新が中国の改革開放の鏡となりうる点を思考し直し、目下の状況下の中日両国のメディアにとって注目に値する新動向について見解を発表した。

メディアが注視する報道の視点にフォーカスし、『毎日新聞』論説室の坂東賢治編集委員は日米中関係と中日世論動向をテーマとし、両国の世論上の「非対称性」の深層的原因を分析し、日米同盟下の中日関係の現状の問題をはらむポイントを検討した。『朝日新聞』論説委員の古谷浩一論説委員は、中国の第十一期三中全会後の『朝日新聞』、『日本経済新聞』などの日本メディアが注目した事例を紹介し、中国の改革開放40周年来、日本メディアが関心を寄せて報道してきた「焦点」と「重心」を整理し、中日両国のメディアが相互に理解し、お互い尊重しあい、思考が改善されることを希望するとした。それに対して、中央電視台の番組『今日関注』のプロデューサー、陶躍慶氏は担当している番組のここ2年間のテーマ選択という視点から、中国メディアと視聴者の日本に対する見方の変化と原因を分析し、自身が日本で発見した驚きと楽しさを語った。NHK上海支局長の石井和則氏は中国報道に従事してきた経験と自身の見聞とを結び付け、両国メディアのお互いの国に対する全面的な報道の必要性を強調した。日本のドキュメンタリー作家(ラジオ番組キャスター、プロデューサー)である青樹明子氏は日本社会で現在流行しているアジア文化を切り口に、日本メディアが中国に向けて日本社会の魅力を発信していく必要性があるとした。『文淮報』国際部主任の沈雷氏はその発言の後、「スポーツ報道の側面から見た中日関係」をテーマとして、両国のスポーツ界が両国関係の人と物事に影響を与えるとし、2019年以降に両国関係に変動を引き起こす要素について考察した。

メディアの責任と価値について、『読売新聞』中国副総局長の中川孝之氏は長年の中国での記者経験に基づき、残留孤児の報道を例にとり、現場の記者の役割について述べ、記者がその場に身を置いて状況を理解することと、外から情報を得ることには雲泥の差があると指摘した。『環球時報』評論部の陳洋氏と澎湃新聞国際部主任の呉挺氏の二人はメディア、特にニューメディアが両国関係改善において重要な役割を持つとし、「多元化報道」を展開し、抑制された平和な姿勢で世界の豊かさ、多様性、複雑性を語ることなしに、お互いの民族性と優劣に対する客観的な理解とあらたな和解を進めることはできないとした。『レコード・チャイナ』相談役主筆である八牧浩行氏は紙媒体からニューメディアへ転向した経験と感想から、メディアは国民感情の伝達という職責を全うしなければならないと強調し、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」と習近平総書記の「チャイナ・ドリーム」の対比を通して、目下の世界の激動の背後にある多層的要素について述べた。元TBS北京支局長の井上波氏は2014年に中国に赴任して以来の中国に対する認識の変化を語り、自身が知り得た真実の、多様で多彩な中国を日本国内に伝えることは急を要するという考えを述べ、「正確」に中国のストーリーを伝えることの難しさを語った。そのような意見をベースとして、個別の社会の焦点に合わせて意見と提案が出された。日本経済研究センター主幹で、元『日本経済新聞』中国総局長の泉宣道氏は最後に、「世襲政治家の日中関係安定に対する責任」をテーマとして、中日関係の歴史上の「ハイライト」を集約し、中日関係の発展に影響する多くの現実的要素を分析し、長年メディアに従事したことで形成された国際的視点から中日関係を観察し、東北アジア国家の政治上の世襲は客観的に東アジア安定を維持するのに役立つという見解を発表した。

廉徳瑰教授は対話会の総括の中で、参加した中日両国のメディア代表は多くの面でコンセンサスに達したとした。まず、両国メディアが中国の最高指導者が2019年6月に大阪で行われるG20に出席することに注目しており、中日の高レベルでの新しい相互作用が生まれ、両国関係もここから新しいフェーズに入ることを期待しているとし、次に、複雑な国際情勢に対し、中日両国のメディアは引き続き政府、学界、民間の良好な交流を促進し深めていかなければならないとした。最後に、両国のメディアはそれぞれのストーリーを発信するのと同時に、相互理解と信頼を促進するために努力しなければならないと述べた。

中日メディア対話会は2017年から始まった。中国内外の関連分野のジャーナリストや専門家、研究者が両国関係を検討し、コンセンサスを高度化し凝縮させ、両国の相互信頼の深層化、対話システムの専門化を進め、新時代における中日両国の関係交流の新しいプラットフォームとなっている。