岡久 泰大  公益社団法人 全国珠算教育連盟副理事長
今も日本で生きつづける中国「そろばんの父」程大位の功績

8月8日(そろばんの日)、国立京都国際会館において全国から総勢601名が参加し、60回目となる「平成28年度全日本珠算選手権大会」が開催された。土屋宏明選手(宮城県)が1500点満点を獲得し、前人未到の8度目のそろばん日本一という歴史的快挙を成し遂げた。主催者を代表して、公益社団法人全国珠算教育連盟の岡久泰大副理事長がインタビューに応じてくださった。

—— 明代にそろばん、巻尺を考案し、中国で「そろばんの父」と呼ばれている程大位の功績、日本との関わりについてはどのように理解していますか。

岡久 そろばんに関する歴史的な研究をされた数学者で、『算法統宗』というすばらしい著書があります。これが日本の貿易商・角倉家を通じて日本に伝わり、豪商・角倉了以の外孫にあたる江戸時代の和算家・吉田光由が『塵劫記』を著し、日本の社会のなかに役立つように図解を入れてわかりやすく書き著したことで、江戸時代のベストセラーかつロングセラーとなりました。

程大位氏の『算法統宗』は『塵劫記』につながり、日本の和算が発展する礎になりました。現在、日本の算数・数学の教科書でも『塵劫記』の中の問題が出題されていたりします。程大位氏が残した素晴らしい『算法統宗』は、今もなお日本で生きているのです。

—— これまで世界珠算暗算競技大会が中国北京市や香港で開催されたと聞いていますが、中国人のレベルはいかがですか。また、中国人の印象はいかがですか。

岡久 レベルは高いです。素晴らしいです。中国と日本はお互いに学ぶべきことがたくさんあると思いますので、これからもそろばんを通していろんな交流を深めていきたいと考えています。

以前、研究発表をするために天津を訪問しました。その時は北京大学の学生たちがボランティアをしていましたが、その姿勢が非常にすばらしくて、これからの中国の未来が明るいものになるなと感じ、日本の学生ももっと頑張ってほしいと思ったくらいでした。

—— そろばんの父のふるさと安徽省にも行っていただきたいと思いますが。

岡久 程大位さんの生まれたところですから、ぜひ行きたいです。そして、今までのお礼と共に、昔のそろばんや文献などがありましたら、拝見させていただき、勉強させていただきたいと思います。