日本のアニメから見えてくる距離と希望


会場を視察する島尻安伊子内閣府特命担当大臣(クールジャパン担当)に主催者を代表して説明する宮河恭夫株式会社サンライズ代表取締役社長(左)

「アニメのすべてが、ここにある」

日本アニメ最大の祭典、「Anime Japan2016」が3月27日午後、ゆっくりその幕を閉じた。このイベントには174の企業と団体が出展し、13万5323人が来場、前年比11%増となった。主催団体によると、今年は出展企業はもちろん来場者数も2014年の初回以来最高となり、クールジャパン戦略の担当者である島尻安伊子内閣府特命担当大臣も来場するなど、日本政府もこのイベントを重視していることがわかる。

イベント会場にはコスプレエリアも設けられ、屋外では肌寒かったものの若い女性たちがキャラクターに扮する情熱には少しも影響しておらず、短く、薄く、透けた衣装を身に付け、100人を超えるプロやアマチュアのカメラマンたちに「確保されて」いた。彼らの長短さまざまなレンズの照準は女性たちのスカートの裾に合わせられ、彼女らのまなざしを捕らえていた。

今回のイベントで最も興味を引かれたのは、会場内に展示された日本の新旧アートの衝突と融合だった。8世紀にはじまった日本六大窯の一つである伊賀焼による「NARUTO—ナルト—疾風録」の茶碗は木の葉の模様があり、力強い「火」の文字があり、まさに「木ノ葉が舞い踊るところ、火影が燃える」のであった。

伊賀焼は三重県の伊賀地方で生産される陶器であり、特に茶器と花器で知られている。使用する陶土は300〜400万年前に体積した古琵琶湖層から出土したもので、炭化した植物とシリカ顆粒を豊富に含み、強靭で荒々しい生命力を呈している。それと同時に、伊賀は伊賀忍者のふるさとであることから、このたびの伊賀焼と「NARUTO」という日本の新旧アートのコラボレーションが実現したのである。

会場では葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」と「NARUTO」とのコラボレーションも見かけた。葛飾北斎は江戸時代の浮世絵画家で、マネ、ゴッホ、ゴーギャンなど多くのヨーロッパの印象派の巨匠たちも彼の作品を模写したことがある。北斎が70歳の時に創作した「富獄三十六景」は世界の芸術の至宝であるが、その中でも「凱風快晴」と「神奈川沖浪裏」は特に有名である。

「NARUTO」と「神奈川沖浪裏」のコラボレーションは、二人の彫師と一人の摺り師によって版画となったもので、制作に2週間を要したという。

日本アニメ界のリーダーであり、アニメ「NARUTO」の生みの親で、ぴえろの創業者である布川郁司先生は以前本誌のインタビューに答えて、「日本の漫画の原点は江戸時代の浮世絵」と述べたことがある。今回の浮世絵と現代の漫画の時空を超えた出合いは、両者の間に継承と発展という一脈通じるものがあることを物語っている。

インタビューの際、「日本アニメの発展ということでは手塚治虫先生を取り上げないわけにはいかない」という布川先生の言葉は大変印象的だった。さすがに日本アニメの祭典「Anime Japan2016」の会場にはアトムの姿が多く見られ、造形芸術の流派である琳派と手塚プロとのコラボレーションによる「富士山を飛ぶ鉄腕アトム」の掛け軸も出展されていた。

手塚治虫は海外からは日本アニメの父と呼ばれている。アトムというロボットは手塚が最も愛した子どもだ。そして、富士山は日本という国の精神的シンボルである。アトムと富士山が同じ枠の中に登場するこの絵は、日本アニメが世界に向けて示した最も特色ある「名刺」だといえよう。

このほか、青森県のねぶた祭で使われる巨大な紙張りによる「ラブライブ!」の9人のキャラクターのねぶたなども展示されていた。

伝統工芸とは決して難解でとっつきにくいものではなく、逆に無限の可能性を秘めており、現代のアニメ芸術とのコラボレーションにより、さらに新鮮で面白い表現の形式となっている。現代アニメは伝統工芸によって「高級で堂々として上等」なものへと変身し、深みを増す。伝統工芸は現代アニメによって新しい彩りを放ち、若い人との距離を縮めた。これは本当に素晴らしいことだ。

イベント会場では、まるで漫画から抜け出てきたような一般女性のコスプレーヤーたちが目を楽しませてくれるが、視点を変えて「Anime Japan2016」を見ると、日本アニメの生産額は国家GDPの10分の1であるのに対し、中国アニメの生産額は国家GDPの0.13%にすぎないことを思い、その距離を感じるとともに、追い付く目標と希望もまた見えてくるのである。