中日外交最後の証言 周斌氏が出版記念会を開催


挨拶する周斌氏

3月6日夜、「歴史の事実を正確に伝えたい」という思いで書かれた『私は中国の指導者の通訳だった――中日外交最後の証言』(周斌著、加藤千洋・鹿雪螢訳、2015年、岩波書店)の出版記念会が都内の日本プレスセンターで開かれた。

この度来日した著者の周斌氏は中国外務省の日本語通訳として、1972年の中日国交正常化時の中日首脳会談の通訳を務め、中日交渉の最前線に立ち会った人物で、中国の周恩来、鄧小平ら歴代指導者の肉声を知る数少ない生き証人だ。

出版記念会で周斌氏は、中日両国の指導者の素顔に触れ、そのまま訳せばきっと国際問題になっただろう某元総理の言い間違いなどの秘話も紹介した。

また、中国駐日本大使館で勤めていた頃のエピソードとして、「田中角栄という人物は総理に就任したばかりで訪中するという大きなホームランを打ったね」という話を通訳した際、ホームランという聞いたことがない言葉にかなり苦戦したことから、その後日本の野球試合をよく観戦したことに言及。今でも当時の巨人軍の打順をそらんじることができるという。


中日国交正常化交渉時の“お宝”を披露する森田一氏

会場には田中元総理の訪中に同行した大平正芳元外務大臣の秘書で娘婿の森田一氏が「家宝」と呼ぶ中日国交正常化の交渉最中の直筆メモや田中元総理が自筆で書いた詩を来賓に披露した。

周斌氏は今後の中日関係の見通しについて、「自民党政権は田中角栄氏、大平正芳氏らの大先輩に見習い、中日国交正常化の原点に戻って、世世代代の友好に努力すべき」と述べ、「中国と日本はかつて大きな困難を乗り越えて国交を正常化したのだから、これからも共に前進できるはず」と話した。

記念会には呉寄南・上海国際問題研究院副主任、天児慧・早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授、海江田万里氏、訳者の加藤千洋氏、朱建栄・東洋学園大学教授、白西紳一郎・日中協会理事長、毛里和子・早稲田大学名誉教授、横堀克己・元朝日新聞北京支局長など多数が出席した。