京劇『霸王別姫』 京劇『華容道』
かつて1956年5月26日から7月17日、京劇の名優梅蘭芳が率いる中国京劇代表団一行86人が日本公演を行い、日本社会に大きな衝撃をもたらした。当時、中日関係はまだ正常化しておらず、このような「民間で官を促す」文化活動によって日本の国民から政界、財界に至るまで新中国に対する認識を新たにしたのである。
今日、中日関係は国交正常化以来最悪のレベルに落ち込んでいる。2006年9月中国への「氷を溶かす旅」によって中日関係を好転させた日本の首相が、2013年12月に靖国神社参拝したことにより、中日関係は「氷の張る厳寒」となった。
そうした中、中国の民間京劇団が来日公演を行った。中日友好に関わり続ける多くの人たちが一堂に会し、21世紀の「民間で官を促す」活動を行い、中日関係の改善を後押しした。
1月4、5日の二日間、中日両国の京劇愛好者の努力のもと、中国開明京劇団が東京の豊島公会堂で素晴らしいパフォーマンスを披露した。
来賓を代表してあいさつをした公明党の東京都議会議員であり、東京都議会日中友好議員連盟の会長を務める友利春久都議は、今回の交流活動の意義について本誌のインタビューに答え、次のように語った。
「中日国交正常化から40年以上が過ぎましたが、公明党は今年結党50周年を迎えます。公明党の創立者である池田大作先生は日中国交正常化以前、言うまでもなく中国は歴史と文化などの面で日本の大きな恩人であると述べました。日本は中国と友好を深めなければなりません。しかし、昨年から日中関係は厳しい試練にさらされています。このような情況のもとでも、今回中国の民間京劇団が来日公演を行ってくださったということは、実に喜ばしいことです。日中両国の友好が今日あるのも、民間の各分野で絶え間なく友好交流を続けてきたおかげです。今後、公明党もこの方針を継続していきます。子どもたちは新年にお年玉をもらえますが、われわれ大人も中国からこのような素晴らしいパフォーマンスというお年玉をいただきました。心から感謝申し上げます」。
今回、中国開明京劇団は2日間の公演で、『華容道』、『六月雪』、『霸王別姫』、『天女散花』、『春秋亭』、『宇宙蜂』、『忠義千秋』という7つの京劇の名場面を見せてくれた。ステージの役者たちの力強い歌声と美しい所作には、「好(ハオ)!」と声をかける習慣のない日本人の観客からも折々に熱烈な拍手が送られた。
中日間の厳しい政治状況のもとでの民間交流についてどのように考えるか、と聞かれた京劇団のメンバーたちは、異口同音に京劇が民間の感情を近づけられたらいいと答えた。
中国開明京劇団の費玉明団長は、「この度の来日公演は完全に民間の組織によるもので、民間交流を強化するという意義は大変重要です。今、中日両国は政治外交面ではもめており、これは確かなことですが、これと同時に、われわれは民間の一般人として、日本の一般市民との交流を継続し、中日友好の大切さを感じてもらうべきだと思います」と話してくれた。
本公演の主役級俳優で、中国京劇院の優秀青年男旦(女形)である劉錚は「来日前、何も心配はありませんでした。政治と芸術とは切り離して考えなければならないと思います。民間の芸術交流のなかにはさらに大きな空間がありますから、みんなで気軽にコミュニケーションし理解しあえるでしょう」と述べた。
また、彼は以前歌舞伎俳優の中村勘三郎氏と共演し、日本で多くの舞台を演じたことがあるので、日本の観客の京劇鑑賞水準の高さを心から称賛しており、演目の深い部分の筋がよく分かっていて役者と芸術的に共鳴できると感じているという。
公演の一日目の演目は梅派の古典『霸王別姫』で、梅蘭芳と楊小楼による台本『楚漢争』を編集したものである。楚漢が争った時、項羽の軍隊が封じ込められ、四面楚歌に陥り、意気喪失して虞姫と別れの杯を交わした後、虞姫は自害、項羽も烏江に至り自害する。この演目では、中国京劇院の劉錚が虞姫を演じたが、悲痛な憂いのなかで無理に笑顔を作る表現は十分に水準に達していた。
公演終了後、千人近い観衆は総立ちで長い間大きな拍手を送り続け、同時に中国開明京劇団が中日関係の凍りついた時期に「氷を溶かす」公演を行ったことに対して称賛の気持ちを表した。
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