戴 瑩 中国銀行東京支店長に聞く
中日経済協力により潜在能力を掘り起こす

海外に長年暮らしていると、「中」という字で始まる企業や機構に対し特別な感覚があり、心が沸き立つ。「中」という字は我が故郷であり、家庭であり、幾度となく思いを馳せた場所だ。そして、それは力であり、威厳であり、海外在住の中国人にとっての名刺的存在になっている。最近、中国銀行東京支店の戴瑩支店長を訪ね、これまでの労苦と輝かしい奮闘の歴史を伺った。

 
撮影/本誌記者 原田繁

日本に根を下ろし31年  顧客の評価が前進する力に

—— 中国銀行東京支店は1986年の開業以来、中日間の金融サービスの架け橋としての役割を果たしてきて、今年で31年目を迎えた在日中国系金融機関のトップですが、貴行の発展の歴史をご紹介いただけますか。

戴瑩 中国銀行は百年の歴史がある大型の国有商業銀行です。日本では新中国が成立する前の1931年に大阪支店を開設したのが始まりです。建国後、改革開放初期の1980年に東京代表処が設立され、1986年7月18日に東京支店を開業しました。当行は日本市場に初めて開設された中国の金融機関です。現在、当行は日本円、米ドル、ユーロ、人民元、香港ドル等の預金、貸出、両替、貿易決算、資金決済、外国為替取引等の業務を行い、お客さまに対して高品質かつ効率的な金融サービスを提供しています。

東京支店以外にも、大阪支店、横浜支店、名古屋支店、東京大手町支店、神戸支店を開設し、中国籍と日本籍の行員は約160名います。当行はフルバンキング業務を展開すると同時に、全世界における中国銀行の日本円決済センターとしての職能を担い、中銀グループとしてのクロスボーダーサービスの優位性を基に、日本企業の中国市場での開拓を全力でサポートしています。

さらに「海外に進出する」中国企業を積極的にサポートし、中日間の経済・貿易の橋渡しの役割を担っています。近年、従来の業務に加え、個人向ローンやクロスボーダーM&A融資等の業務開拓にも力を入れており、業務の多元化と発展を目指して、お客さまの要求を満足させる全方位的金融サービスを提供しています。

2016年3月末時点で、東京支店は税前利益115億円(純利益は71億円)を達成し、55の在日外資系銀行の中では第2位、中国系銀行の中では首位をキープし、経営状況は極めて良好です。

日本に根を下ろして31年、幅広い顧客を有し、完璧な業務を行い、多くの店舗網を持ち、優れたサービスで最高の評価を得ている中国系金融機関です。東京支店はこのような栄誉を誇りに思い、当行への激励と受け止め、前進する力になっています。

幅広いお客さまの当行に対する、これまでと変わらぬご支持とご厚意に対し、大変感謝しております。今後、鋭意努力して新しいものを作り出し、管理レベルの向上に注力し、お客さまの要求を満足させる全面的な金融サービスの提供に努めてまいります。

中国と日本の金融業発展における3つの相違点

—— 現在、銀行のグローバル化は金融業界の発展趨勢となっており、中国経済のグローバル化を実現するための前提条件でもあります。貴行は中国銀行の重要な海外拠点の一つとして、日本における国際金融の中心的役割を担ってきました。日本と中国とでは金融業の発展状況にどのような違いがありますか。

戴瑩 2008年の世界金融危機以降、中国や日本の銀行は海外への業務拡大を強め、大手銀行の国際化レベルの発展は顕著でしたが、歴史の蓄積、本土市場の受容能力、国家戦略等における差異のため、中国と日本の大手銀行の国際化に対する発展過程には異なる点が見られます。主に以下の3点です。

1つ目は発展段階が異なることです。日本の銀行の国際化プロセスは、すでに1980年代以降に3度、海外展開期がありました。日本の銀行は海外へ拡大していく中で機関を数多く設置しました。比較的十分な人的資本を蓄積して、世界中の主要な国家と地区での設置を基本的に完成しました。国際市場においては成熟した経営ネットワークと顧客基板を形成して、その国際化の発展レベルを非常に高めました。これと比較して、中国の銀行は国際化への着手が遅く、海外拠点を設置して、本土の企業の「海外進出」をサポートする「ネットワーク構築」段階にあります。海外のスタッフ数、機関の数、カバーする国家や地区の数において、日本の銀行とはまだ大きな差があります。

2つ目は、収入構造や拠点設置方法での多元性が異なるという点です。収入源に関しては、中国の銀行は利息収入に対する依存度がより高いです。中国の銀行の海外での利息収入は主に企業の業務から得ているものであり、サービス対象は国内企業より「海外進出」企業が主です。一方で日本の銀行は「海外進出」した企業と国内企業の業務とのバランスを重視して発展してきました。拠点設置の方法については、「海外進出」企業の業務の特徴とコスト費用を考慮して、中国の銀行はタイムリーに支店機関を開設することで国際化の発展を実現してきました。2010年以降、中国の五大銀行がM&Aによって形成したネットワーク数はわずか8社であるのに対し、新しく設置した支店と付属機関は50社を超えました。日本の銀行はネットワークの拡張とM&Aによる拡張で総合的に発展してきました。同時期の日本の三大銀行はM&Aにより約20社の機関を新規に設置し、支店と付属企業25社を新設し、バランスよく発展しました。

3つ目は発展の潜在能力が異なることです。日本の銀行の国際化の発展は着手が早く、レベルも高く、今後さらに発展する余地は相対的に限られてきます。逆に中国の銀行は後発組であるがゆえに、日本の銀行の国際化の発展プロセスにおける経験と教訓を十分に学ぶことができ、発展のための潜在能力は巨大です。同時に「一帯一路」の建設と人民元の国際化プロセスの促進も中国の銀行の発展にとって貴重な歴史的チャンスを与えてくれます。

海外進出企業への3つの提案

—— 現在、中国経済は「新常態」(ニューノーマル)に移行しており、国際収支から見て、輸出は中国経済が高度に発展する重要な活力となりました。特に近年では、海外市場の開拓は中国企業発展のカギとなっています。海外進出で発展を遂げたリーダーとして、これから海外進出する企業に対してアドバイスを頂けますか。

戴瑩 中国経済の発展は「新常態」に突入し、「供給側の改革」が深化して推進される背景において、いかにして我が国の産業の中心技術と能力を向上させ、産業競争の新しい優位性を育て、構造転換と高度化のエネルギーを取り入れ、商工業強国を実現するかは、必要かつ緊迫した問題です。産業の構造改革と高度化を実現する有効な手段の一つは海外におけるM&Aです。

一方、日本経済は長期低迷し、少子高齢化等の社会問題もあり、社会全体の消費需要の不振によって労働力は不足しており、企業の生産効率を上げ、経営を発展させるのは困難な状況です。そこで、海外におけるM&A等の方法により企業の構造転換と高度化を実現しています。現在、中国等の市場の潜在能力は巨大で、企業の構造改革と高度化の要求は高く、海外におけるM&A等により日本企業の先進技術や管理の経験を活用することができれば、中国系企業の発展に寄与することができます。

では、どのようにして企業の「海外進出」を実現すればいいのか。

1つめは準備です。市場におけるチャンスを深く探究し、また自らの状況や優位性を分析して、チャンスを的確に掴んで攻めます。

2つ目は着実性です。企業の国際化戦略に焦点を合わせ、欲張って大きなものばかりを狙ってはならず、またあちこちに力を分散して、あれこれとやるのもいけません。戦略を決定する前には、それぞれの海外投資プロジェクトに対して深く現地での研究を行い、現地の経済発展レベル、市場規模、営業状況、リスク要因、投資回収等を多角的に見て、プロジェクトの持続的発展状況を研究します。必要であれば、さらに関連の専門家に現地の調査を依頼するなど、産業の投資環境を明らかにします。ステップバイステップの原則で徐々に実施していけば、投資リスクを抑えることもできます。

3つ目は企業の文化融合を促進することです。「海外進出」におけるクロスボーダーM&Aの実施過程において、進出企業の日本社会への融合が加速され、現地の経験ある管理団体を採用し、文化の融合とアイデンティティを促進することは、企業が「海外進出」を成功させる重要なファクターとなります。

最高のグローバルレベルの中国系銀行として、中国銀行には中国企業の「海外進出」をサポートすることにおいて豊富な経験が蓄積されています。2009年から2016年末までで、中国銀行は合計約3200の中国企業の「海外進出」プロジェクトをサポートし、1800億ドルを超える貸出をしています。さらに、中国銀行自身の国際化も、国を超えて発展しています。2013年から2016年までの4年間で、中国銀行の海外資産の規模と貸出規模は50%も増大しました。海外拠点によるサービスは本土の顧客が62%を占め、世界のトップ500の企業の半数が中国銀行の顧客となりました。

現在、日本企業の管理の経験、重点領域と先進的技術はまだ海外投資の吸引力を保ち続けています。「海外進出する」中国企業は国際的買収においてそれらのメリットを享受することができます。日本の緩和的貨幣政策は、銀行の提携強化や越境防衛を促進することにとって有益な外部市場環境を提供してくれます。銀行の使命の一つは企業が必要としていることを解決することです。そのため、「海外進出」を図る中国資本の企業に更に優れたサービスを提供し、全面的な金融サービスを提供することは、東京支店、ひいては中銀グループ全体の使命でもあり、追及すべきことなのです。私たちは中銀グループの国際化、多元化の優位性を継続して発揮し、良質で高効率な金融サービスを提供することで、「海外進出する」中国資本の企業が日本で開拓することをサポートしていきます。

東京支店の競争における4大優位性

—— 近年、中国の経済解放推進と金融体制改革に合わせ、「銀行の過剰化」が深刻です。特に日本のような先進国で顕著ですが、貴行は日本でどのような競争に直面していますか。そうした中で貴行の競争優位性はどこにありますか。

戴瑩 今年のグローバル経済の不確実性の要因は数多くあります。貿易の保護主義、グローバル化の逆を行く動向はさらに競争を激化する可能性があります。米国の連邦準備制度委員会は「バランスシートの削減」を再度発表し、国際金融市場に衝撃を与えました。

現在のこのような国際市場の大きな変化、中国経済の下降によるさらなる圧力、日本が実施した「マイナス金利」政策等の外部の環境による影響で、銀行の経営や発展に対して難しい舵取りが求められています。しかしながら、東京は国際金融の中心として、以下のように、成熟した市場基板があります。

1つ目は、日本における資金調達コストが非常に低いということです。日本が長期にわたって実施するゼロ金利政策により、日本市場には資金が溢れ、コストも低くなっています。特に2016年のマイナス金利政策の実施により、日本は国際企業にとって資金調達をするための重要な市場になっています。

2つ目は、中日経済の連携がさらに高まっていることです。中国と日本は世界で2位と3位の経済大国です。経済構造の相互補完性は高く、両国での貿易額は凡そ3000億ドルに達し、多くの分野において幅広く提携が進んでいます。

3つ目は、人の往来が密接であるということです。日本への旅行者数が増加しているだけでなく、日本の先進技術と管理経験も多くのビジネスマンたちを惹きつけ、来日して視察や提携のための商談を行っています。

中国銀行は中国の国際化レベルが最高に高まった商業銀行です。東京支店は中国銀行の重要な海外機関として、以下のように、独特の競争優位性を持っています。

1つ目は、中銀グループはグローバル化のネットワーク構築のために、国際金融サービスに独自の優位性があります。現在、中国銀行は既に世界で第4位の銀行グループになり、全世界52の国家と地区で600の海外機関を有し、全世界で1600の金融拠点、500万の法人顧客、2.4億人の個人顧客にサービスを提供し、国際化と多元化レベルが最高の中国の銀行です。グループの重要な海外支店として、東京支店はグループのネットワークを活用してお客さまのために国際金融サービスを提供します。

2つ目は、多元的な業務のプラットホームです。中銀グループの旗の下、商業銀行、投資銀行、証券、基金、保険、資産管理等の多元的なプラットホームを擁し、当行は迅速に資源を運用することができます。グループ内の垣根を超えた機関や地区を超えた業務連動を通じて、お客さまに迅速で多様性のある、専門的で高効率な全方位の金融商品とサービスを提供します。

3つ目は、お客さまにワンストップ方式の金融サービスを提供することです。東京支店は中銀グループの国際化と多元化の優位性を背景に、臨機応変に対応するパイオニア精神があります。従来の預金、貸出、為替、国際決算、資金清算、外国為替貿易等の業務の他、銀行の貸出、国際的買収、世界規模での現金管理、個人の住宅ローン、資産運用、債務ヘッジ等の特色ある金融商品とサービスを開拓しています。グループの日本円決算のメインチャネルとして、海外の主要交易貨幣をカバーし、迅速かつ効率の良い生産サービスを提供します。お客さまのニーズに基づいてカスタマイズされたソリューションを打ち立て、ワンストップ方式の優れた金融サービスを提供します。

4つ目は、国際的で専門的な人材を抱えていることです。東京支店は日本で31年間営業をして、長期的に中日間の経済のため金融サービスを提供してきています。両国の法律に詳しく、お客さまの金融に対する要求を把握し、国際化を視野に入れ、中国語、日本語、英語等の多言語での交流ができる専門集団を育成してきました。

日本に対する「一帯一路」建設への参加の促進

—— 現在、貴行はすでにグローバル経営を実現しています。世界の隅々までネットワークを拡大し、各国の経済危機への抵抗力も大幅に向上しています。貴行が輝かしい50周年、100周年を迎えられることを期待していますが、今後の発展方向についてどのように考えていますか。

戴瑩 厳しい挑戦に直面し、当行は監督管理政策に合致する前提の下、中国の対外開放の新たな構成を積極的に把握し、「一帯一路」の新市場、人民元の国際化によるビジネスチャンスという三大歴史的チャンスは、新たな発展推進力を模索しています。本店の戦略部門に従って社会的責任を負い、以下のように、優れた銀行経営を行っていきます。

(1)中国の対外開放の新たな構成を把握することについて、中国経済が比較的高い上昇を保っているという外部環境により、当行は継続して中銀グループの国際サービスの優位性を巧みに活用して、中日の友好、経済の往来の橋渡しの作用を発揮します。現地に立脚して全世界に視野を向け、国際化の発展を維持しつつ、新たなイノベーションへのエネルギーを注力し続け、さらに理解を深め、優れた顧客体系を確立し、また多元的な発展モードを探索して、市場管理と顧客サービスの総合的マネジメントのレベルアップを図ります。

(2) 「一帯一路」という重要な戦略に対応して、関連プロジェクトを積極的に開拓して参加していきます。中国が提唱した「一帯一路」戦略に対して、日本が徐々に興味を示し始めていることに鑑みて、東京支店は日本政府や企業、現地の同業者との情報交換や提携を積極的に強化し、ともに「一帯一路」がもたらす新市場に参加していきます。さらに、中日経済の協力による潜在能力を深く掘り起こし、中国と日本の企業による周辺国家の国際的買収、投融資、決算や生産等のために金融サポートを提供します。

(3)人民元業務の優位性を保持して、「人民元の国際化」のプロセスにおいて重要な作用を発揮します。当行は商品が全て揃った人民元業務を設立しました。経験豊かな専門家集団を配置し、52の銀行と人民元の決済口座開設で調印しました。そのため、顧客に対して人民元の預金と貸出、国際決算、資金清算、外国為替交易などを含む各人民元に関連する商品とサービスを提供し、日本市場における人民元の業務の発展を積極的に推進し、在日の人民元業務のリーダーとなる銀行になりました。

(4)中日両国の中小企業の貿易と業務の融合を推進します。日本の中小企業は全国の企業数の99%を占め、日本経済の発展を支える中心的な役割を担っています。日本の中小企業は独自の先進技術を有していますが、国内市場は限られていて、中小企業が継続的に利益を得ることに対するボトルネックになっています。中国銀行は両国の中小企業を、国を超えたサービスで結び付けています。2014年以降、30余りの国際提携活動を実施することにより、5000もの企業の提携目的の契約の成立をサポートしました。当行はグループの優位性により、企業の金融に対する要求に注目し、中日間の企業の提携と交流を推進します。

(5)完全な多元的商品の組合せで、全方位での金融サービスを提供します。当行は現在の金融商品とサービスを保持しつつ、複雑な金融商品を扱う能力を高め、お客さまに対して総括的に良質な総合金融サービスを提供します。

(6)リスク管理を強化して規模に合った経営を堅持します。日本現地の法令と本店のリスク規定に合った管理要求を厳格に遵守して、健全で規則に合致する反マネーロンダリング体制のメカニズムを構築し、支店業務の健全な持続的発展を保証します。当行は顧客に全方位の多元的金融サービスを提供することにより、中日の友好と経済の橋渡し作用を深化させ、変革を恐れず、そして積極的にイノベーションをはかり、広く顧客と各界の友人たちと手を取り合って未来をともに創っていきます。