メタバースと現実世界はどのように融合するか

 

SF小説から誕生したメタバースという概念が2021年に大流行し、人々の未来の仮想世界に対する無限のイマジネーションをかき立てただけでなく、資本界やメディア界など多くの方面からも注目を集めた。メタバースとは一体何か。今後の見通しはどうか。成熟したメタバースはどのような「姿形」で人々の目の前に現われるのだろうか。

 

メタバースとは一体何か

現時点では、メタバースにはまだ広く認められた確かな定義というものはない。

米国のSNSのフェイスブックを創業したマーク・ザッカーバーグ氏が提起したメタバースは、リアルな人間をネットワーク上に置くという発想だ。ザッカーバーグ氏はスピーチ動画の中で、「次の段階のプラットフォームとメディアでは、人々はますますその中にいるような感覚を抱くようになるだろう。外側から眺めているだけでなく、自ら『実体あるインターネット』の中に身を置くようになる。これがメタバースだ」と述べた。

では、科学研究者はメタバースをどのように見ているのだろうか。

スマート情報処理を研究する陳捷さんはSF小説「スノウ・クラッシュ」の中で打ち出された元々の概念を引用して、「メタバースは現実の世界とパラレルであり、常にオンラインの中にある仮想世界だ。この世界の中では、現実の中で行わなければならない食事や睡眠などを除き、他のことはすべて仮想世界の中で行うことが可能だ。メタバースの登場と発展は、さまざまな技術的側面及び人類社会の規範化という側面で課題に直面することになるが、これは人類のインストラクションへの願望や技術発展の必然的な流れだと言える」と述べた。

清華大学ジャーナリズム・コミュニケーション学院新メディア研究センター瀋陽チームは以前、メタバースを定義付けたことがある。

同チームが最近発表した「2020-2021年メタバース発展研究報告」によると、メタバースとは複数の新技術を統合して生まれた、新しいタイプの仮想と現実が融合したインターネット応用と社会形態であり、拡張現実の技術をベースにして没入型の体験を提供し、デジタルツイン技術をベースに現実世界での鏡像を形成し、ブロックチェーン技術をベースに経済システムを構築し、仮想世界と現実世界を経済システム、社交システム、アイデンティティシステムにおいて密接に融合させ、さらにすべてのユーザーにコンテンツの生成と世界の編集を行うことを認めるというものだ。

 

有力視される3つの見通し

最近、新興テクノロジー概念であるメタバースが地方政府の文書にしきりに登場するようになった。

武漢市と合肥市は同時期にメタバースを2022年の政府活動報告に書き入れ、上海市は電子情報産業発展の第14次五カ年計画の中でメタバースのコア技術についてプロスペクティブ研究を強化することを明確に打ち出し、浙江省はメタバースを将来的な産業発展システムに組み込んだ。

これと同時に、メタ、マイクロソフト、バイトダンス(字節跳動)、テンセント(騰訊)、ファーウェイ(華為)などのデジタルテクノロジー大手も次々に動きを見せ、メタバースの細分化された分野での配置を加速させている。

政府と企業の動きからわかるのは、現在、メタバースの外側ではその概念や属性に対する見方が変化を続けているが、メタバースに対する今後の見通しが良好であることは今やほぼ共通認識になっているということだ。

将来的には、現在のところメタバースは次の3つの見通しについて有望視されている。

 

1 市場規模

まず、市場規模についての見通しでは、これまでに多くの国際的に有名なコンサルティング機関がメタバースの将来的な市場規模に対する高評価を明らかにしている。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、2030年にメタバースの市場規模は1兆5千億ドル(1ドルは約115.4円)に達するとしており、ブルームバーグの業界研究ではメタバースの市場規模はいずれ2兆5千億ドルに達すると予測。モルガン・スタンレーは将来のメタバースの潜在的な市場の可能性は8兆ドルを超えると予想する。

 

2 産業のイノベーション

次に、産業のイノベーションについての見通しでは、メタバースがもたらす産業のイノベーションの見通しとして次の2つがある。

1つはメタバースが私たちの慣れ親しんだ現実世界の物理的なルールを打ち破り、全く新しいスタイルで産業技術のイノベーションを活性化するという見通し。

もう1つは、メタバースはさまざまな産業と深く融合し、新モデルと新業態によって関連産業に飛躍と高度化をもたらすという見通しだ。

 

3 応用範囲

最後に、応用範囲についての見通しでは、現在のメタバースの応用は主にゲームやエンターテインメントなどの分野にとどまり、他の分野での応用は相対的に少ない。

しかし、将来的には、メタバースの技術と産業の成熟度が持続的に向上するのに伴って、応用範囲も徐々に拡大し、絶えず深化するとみられる。もしかしたらメタバースには社会のガバナンスや公的サービスなどの分野で非常に大きな応用の可能性があるかもしれない。

 

3つの大きな影響

業界の予想では、将来は90%以上の日常活動、たとえば科学研究、教育、エンターテインメント、会議などがメタバースの中で行われるようになる可能性がある。

そのためメタバースはインターネットと同じくらいの重要性があり、経済社会に非常に大きな発展チャンスをもたらすとともに、マクロ社会、メゾ産業、ミクロ個体という3つの異なる側面に大きな影響を与えるという。

まず、メタバースは社会の生産方式と社会のガバナンス方式に大きな変革が起きるのを後押しすることになる。次に、メタバースは産業の技術変革と最適化・高度化を推進することが見込まれる。最後に、メタバースは個体のために新たな生産空間と生活空間を創造するとみられている。

将来は、現実世界がメタバースをはじめとするデジタル世界と深く融合する方向に向かい、人々の観念や思考、習慣にも極めて大きな変化が起こることが予想される。