中国製造から中国智造へ飛躍
5Gが全結合に力を与えAIが自動化を支援

 

製造業は国の経済の命綱だ。ここ数年、5Gや人工知能(AI)などの次世代情報技術(IT)と製造業が深く融合し、応用範囲も製造のコア部分から広がりを見せ続けており、製造業のデジタル化、ネットワーク化、スマート化へのモデル転換・レベルアップを力強く支え、中国製造(メイド・イン・チャイナ)から中国智造(中国のスマート製造)への飛躍をサポートしている。

 

5Gが全結合に力を与える

2021年7月20日、美的の5G全結合型スマート製造モデル工場がオープンし、業界を驚かせた。

この1年前、美的と中国聯通(チャイナ・ユニコム)、華為(ファーウェイ)が手を結び、工場生産製造プロセスを統合し、スマート倉庫、スマート車両管理、AIスマートモニタリングなどを含む19件の応用と600件を超える5G接続の実施ソリューションを計画した。

5Gの全結合は工場のスマート製造にとってどれほど大切だろうか。

美的の関係責任者は、「AR(拡張現実)による遠距離製品チェックは新型コロナウイルス感染症流行中に予定通り引き渡しを行えるよう保証してくれる。感染症対策期間中には、第三者が予定通りに現場でチェックすることができなくなり、各方面のコミュニケーションにも支障が出ていたが、5Gのサポートを受けて、遠距離チェックが現実のものになり、こうして品物が港に到着した後で顧客がサンプル検査をすればよくなった。この技術は海外の顧客が第三者検査機関に投入していたコストを大幅に引き下げ、中国と海外の代理業者間の通信コストも低下した」と説明した。

もう1つ広く評価されるデジタル化改造は、5G融合の測位技術だ。

これまで産業パークの従来型倉庫物流システムは長期にわたり人と機器、モノを効果的に追跡し測位することができず、モバイルシーンでの産業用WiFiネットワークは不安定で、複数のネットワークの同時維持が困難といった問題に直面し、人がモノを探すコストが増え、倉庫の物流効率に影響が出ていた。

この業務上の泣き所に対して、美的、聯通、ファーウェイは生態圏協力パートナーと提携し、5G+ブルートゥースAOA(受信角度による方向検知技術)が融合した測位に基づくスマート倉庫ソリューションを制定するとともに、レベルアップさせて引き渡しにこぎ着けた。

この技術が応用されるようになって、工場の完成品倉庫のフォークリフトの位置情報が倉庫システムに正確に伝わるようになり、実物の情報と連動し、システムの測位の精度が1メートル以内にまで高まり、積載率が50%上昇した。

美的集団の周暁玲ITディレクターは、「5G全結合型工場の建設では、5Gの広い帯域幅、低遅延、多数同時接続といった特徴の力を借り、5G+インダストリアル・インターネットのスマート製造新モデルを深いレベルで構築し、生産の効率と効果を根本的に引き上げる必要がある」と述べた。

予測では、この5G全結合型工場では毎年、数千万元(1元は約17.8円)のコスト節約が実現するという。

 

AIが自動化をサポート

機械が8インチほどの携帯電話の両サイドをつかむと、人間の手をまねして完全な形のディスプレーを内側に折りたたむことを繰り返したが、ディスプレーが再び開くと、画面は元通りにクリアで表示がはっきり見える。

北京市亦荘にある小米のスマート工場では、最新の折りたたみ式スマホ「MIX Fold」が製造される様子が見られる。

この工場は外から見ると普通の工場と変わらないが、中に入れば普通とは違うことがすぐわかる。明かりのつかない工場の中、ベルトコンベアが空中で休みなく部品を運び続け、スマホが次々にラインオフするが、あたりにほとんど人がいない。

夜間の製造でも、一晩中明かりが付いているという情景は見られず、設備状態のパイロットランプ、品質検査灯などが持続的に点滅しているだけで、「テクノロジー感」が満載だ。作業員はあまりいないが、ここでは毎年100万台以上のハイエンドスマホを製造している。

自動化は忙しい工場が明かりを消しても運営できるようになるための秘訣だ。スマート化は、スマート工場が秩序よく運転し、より効率的になる真の原因だ。

「無灯工場」の背景には、AI、モノのインターネット、エッジコンピューティング、クラウドコンピューティング、ビッグデータなど最先端の技術があり、こうした技術を集大成することで、工場の生産や物流などのコアプロセスの効率を向上させることができた。

現在、小米のこの工場はスマホ製造の200を超えるプロセスの自動化率が75%に達した一方で、コストは20%低下した。紡績の康賽妮では、スマート工場の生産効率が50%上昇し、ストックの回転率は100%まで上がり、製品引き渡し周期は50%短縮されたという。

業界の新たな未来に好感触

中国5G+インダストリアル・インターネット会議で発表された最新の白書「灯台工場(製造業分野の世界的トップレベル企業)が製造業のデジタル化モデル転換を牽引する」によると、2021年9月末現在、世界の「灯台工場」は90社あり、中国は31社で各国の中で最多だという。

11月4日、工業・情報化部など4当局が「スマート製造テストモデル事業行動実施プラン」を発表し、2025年をめどに、複数の技術レベルが高く、モデルの役割が突出したスマート製造モデル工場を建設し、スマート製造先行エリアを数カ所育成する方針を打ち出した。

実は多くの地域で取り組みが先行している。広東省は製造業強省、ネットワーク強省、デジタル経済強省の建設を加速する方針を打ち出した。同省仏山市は今後3年で100億元(約1780億円)を拠出して、製造業のデジタル化モデル転換を牽引し推進することを打ち出した。

浙江省は2018年にすでにスマート製造行動プランをスタートしており、これまでにデジタルツインの応用、スマート化製造、スマート化管理などの特徴を備えた「未来工場」12カ所、「育成企業」16社、「テスト企業」33社を認証している。