ネット有名人の李子柒
最近、李子柒という名前の女性が、伝統文化と田園の暮らしを動画に編集してインターネットに発信し、中国内外のネットユーザーの注目を集めている。現在、YouTubeには李さんのファンが800万人近くおり、これまでに発表した100本余りの動画の再生回数は500万回を超えた。
李さんの人気と共に火が付いたのは、李さんを代表とするネット時代に特有の媒体「ネット有名人」(網紅)、それからネット有名人にともなって発生した「ネット有名人経済」だ。
ネット有名人経済はネット時代に生まれた経済現象で、インターネットの世界の人気者がソーシャルメディアでアクセス数と人気を集め、膨大なファン層に対してマーケティングを行い、ファンの注目度を購買力へと転換し、アクセス数を現金に換えるというビジネスモデルを指す。
ドイツ・ベルリン自由大学のブラウアー氏(インターネット経済学が専門)は、「中国は世界のネット有名人経済のエンジンであり、世界一のネット有名人経済国でもある」と述べた。
ライブコマースを通じてお金を稼ぐ若者
ネット有名人経済の
スケールメリット
衣類の染め、酒の醸造、織物、古式製紙、口紅製造……これらは2019年に大勢のネット有名人が経済面で上げていた成果であり、ネット有名人の社会的認知度もさらに上昇した。
ネット有名人経済はいったいどれくらい稼いでいるのだろうか。19年にはネット有名人の「口紅兄貴」こと李佳琦さんが相当な額を稼ぎ出した。一部の会社の純利益も一人のネット有名人に及ばないことがある。
2019年の「ダブル11」(11月11日のネット通販イベント)には、ネット有名人のライブ
配信が突如としてわき起こり、天猫(Tmall)のダブル11に参加した企業の中には、収入の50%以上がライブ配信を通じて達成し、ライブ配信による成約額は200億元(約3195億円)近くに達した。
現在の業界での実践から考えて、ネット有名人経済には主に3つの収益源がある。
ライブ配信プラットフォームにおけるファンからの還元、ソーシャルメディアにおけるブランドのプロダクトプレイスメント、ECプラットフォームにおけるファンへの商品売り込みだ。どのモデルでも「人気があれば商品もよく売れる」のがネット有名人経済が現金化する一般的なルートだ。
ネット有名人が自身のブランドや商品をすすめる手法が大手広告主の間でますます歓迎されるようになり、ネット有名人の力を借りて自社のブランドを発信したいと考える広告主の所属する業界が、これまでにもよくみられた化粧品や衣類・服飾品などから自動車、金融などへと広がりをみせている。
ネットで大人気の頤和園十七孔橋
ネット有名人経済は
なぜこんなに人気か
中国では、ネット有名人経済にしっかりした社会的基盤がある。
百度がまとめた「『95後』(1995年から1999年生まれ)生活経済調査研究報告」によると、中国の95後人口は約1億人に上る。彼らは幼い頃からインターネットとともに暮らし、大量の情報を発信したり、暮らしの様子を投稿したり、ツッコミを入れたりすることを好む。コンサルティング企業アクセンチュアの研究によれば、中国の95後の消費者の70%以上がソーシャルメディアを通じて商品を直接購入することをより好むという。
インターネット経済が起こり、情報伝達のコストは大幅に低下した。「奇妙だが魅力のある魔性の」パフォーマンスをする、感動的な歌を歌う人が、ネットの後押しを受けて、無名の素人から一躍ネット有名人になることがある。
新浪微博の王高飛最高経営責任者(CEO)は微博(ウェイボー)で、「実はここ数年間の本当に成功したネット有名人で、大衆的コンテンツを作った人は一人もいない。彼らはまず製品の位置づけをじっくり考え、それからターゲットとなる受け手に正確に狙いを定め、こうした人々に向けて喜ばれるコンテンツを送り出してファンを増やし、それから製品を打ち出すのだ」と評した。
王氏の評はネット有名人経済の核心を突いている。ネット有名人たちの最終的目標はアクセス数を獲得することではなく、アクセス数を現金化することにある。
この目的から出発し、まず最初にやらなければならないのは、ターゲットのユーザーの好みに的を絞って自分のイメージを作り、パフォーマンスをプロデュースし、ユーザーの心の中に自分の「居場所」を作ることだ。
たとえば化粧品情報を発信するパーソナリティである前出の李さんが売るのは口紅で、ターゲットは若いホワイトカラーの女性だ。そこで李さんは「口紅兄貴」のイメージ作りをし、女性の心理を踏まえて、女性の心を打ち抜く製品おすすめトークを編み出した。
ネット有名人経済は伝統的消費シーンに破壊的影響を与え、消費者に一層多様化した個性的なショッピング体験をもたらしはした。
しかしながら、ネット有名人経済の本質はやはり実体経済のネットにおける投影なのであり、市場の法則から離れて発展することはできず、整った市場の監督管理も不可欠だ。
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