5Gはどのような破壊的変化をもたらすのか


南京科学技術展でVRメガネで映画を見ている市民

中国社会科学院新聞・伝播研究所が6月25日に北京で発表した報告書「ニューメディア青書」によると、人工知能(AI)と5G商用化がスマートインターネットの新時代を切り開き、これにともなって人々の情報を得る方法、働き方、生活習慣にも破壊的な変化が訪れるという。

5Gの影響は大きい

この報告書の正式名称は「ニューメディア青書:中国ニューメディア発展報告No.10(2019年)」といい、2018年以降の中国におけるニューメディア発展の基本的状況を集中的に分析した。

同報告書によれば、新たな科学技術革命と産業の変革が興り、発展し、AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、ブロックチェーンなどの新しい技術が飛躍的に発展し、モバイルアプリケーション、SNS、ネットライブ配信、ショート動画などの新しい応用、新しい業態が次々登場し、メディアの状況や世論の環境を再構築しているという。

同報告書は中国ニューメディアの発展状況を総括する中で、「AIと5G商用化がスマートインターネットの新時代を切り開く」と記した。

同報告書によると、5GとAIに駆動されて、動画産業、モノのインターネット(IoT)、インダストリアルインターネット(産業のインターネット)などが新たなバージョンアップを達成し、これにともなって人々の情報を得る方法、働き方、生活習慣にも破壊的な変化が訪れる。インターネット技術と人々の生活との関わりがより緊密になり、「スマートプラス」は人々のネットワークをめぐる獲得感と幸福感を大幅に引き上げるという。

同報告書は、「5G商用化がラストスパートの時期を迎え、高速、低遅延、高信頼性といった優位性を備えた5G技術が情報の発生形式、伝達方式、伝達内容を変えていく。5G技術の発展がメディア産業の変革を後押しし、ニューメディアの発展にエネルギーを与える」との見方を示した。

 

動画ログが競争の焦点に

同報告書は目下大人気のネットライブ配信やショート動画産業について、「2018年に、ネットライブ配信は再編期に入った。ネットライブ配信はそれ自体がもつ伝達の特徴と外部環境の影響により、プラットフォームの発展が『下り坂の時期』を迎えている」と述べた。

同報告書の分析によれば、ネットライブ配信プラットフォームは配信時間という特徴によりライブ配信パーソナリティへの依存度が非常に高いため、パーソナリティの価値が高騰し、プラットフォームの運営に圧力がかかることがある。また配信時間という点でコンテンツ制作への要求が高く、配信の持続的発展にともなってコンテンツの枯渇やユーザーの時間が不足といった問題が生じるという。

しかし同報告書の判断では、今後数年間、ネット動画は引き続き力強い発展傾向を維持する。2018年12月末現在、中国のショート動画ユーザーは6億4800万人に達し、コンテンツの動画化がモバイルインターネットの大きなトレンドになり、ネット大手企業はショート動画の展開を次々に進めているという。

同報告書の分析によれば、ネット動画産業はユーザーのニーズを満たすため、一部の新たな業務形態を絶えず発展させていくことになる。たとえばストリーミングメディアの動画サービスなどだ。ショート動画プラットフォームが次々誕生して、関連産業の急速な発展を牽引するとともに情報の伝達方式を革新していくことになる。「動画ログ」(Vlog)はショート動画は今後の競争の重点になるとみられ、ショート動画の身軽さという特徴を備えつつ、コンテンツは豊富で、叙事性が高いことから、ユーザーに歓迎されている。

 
5Gスマホを体験している上海市民

ファン経済がネット経済の重要なビジネスモデルに

ニューメディアの時代に、アクセス数のもつ力は依然として軽視できない。同報告書はファン経済を分析する中で、「ファン経済はインターネット経済の重要なビジネスモデル」との見方を示した。

同報告書によると、19年4月現在、ネットで人気のEC筆頭株と言われる如涵持株股フン有限公司(フンはにんべんに分)が米国で上場した。ネットが作り出したファン経済のパワーは巨大で、ビジネス化のルートは拡大発展と転換を続けるが、内側にある核の部分は引き続き高いエネルギーを維持する。

同報告書の分析では、ネットが個人の価値を拡大し、微博(ウェイボー)やショート動画共有アプリ「TikTok」などさまざまなプラットフォームがスターを追いかける総合的環境を生み出し、こうしたオンラインのアクセス数がオフラインのビジネスを急速に成立させる。ピタリと的を絞った的確な運営、優れたユーザー体験により、ファン経済のビジネス化ルートがより多様化していくとみられる。 

ネット大手が多方面で事業展開を進め、競争の境界があいまいに

ニューメディア発展の大きな流れの中、インターネット産業では誰が「新たな成功者」になるだろうか。

同報告書は、中国のネット大手は多方面での事業展開を進めており、競争の境界も徐々にあいまいになっていると分析した。

2018年にネット産業は上場ラッシュを迎えた。報告書が引用した艾瑞網の統計によると、18年12月14日現在、上場した中国ネット企業は愛奇芸、美団点評、小米集団、拼多多など64社を数える。BAT(百度<バイドゥ>、阿里巴巴<アリババ>、騰訊<テンセント>)に続き、今日頭条、美団、滴滴がネット産業の新御三家とされ、頭文字を取って「TMD」と呼ばれるようになった。

2018年には拼多多、趣頭条、快手などのアプリケーションが小都市や農村地域で目を見張る動きをみせ、ネット大手の対外投資や合併買収(M&A)の歩みを加速させた。大手ネット企業が事業買収や多方面での事業を全面的に展開し、ネット企業間の競争は境界がますますあいまいになっていくとみられる。

同報告書は、小都市や農村地域への浸透は現時点のモバイルインターネットの発展トレンドであり、三線都市、四線都市、五線都市がネット企業の事業開拓の重点になりつつあると指摘した。