電子商取引に参入する老舗企業


上海の老舗で芸術品を作っている職人

悠久の歴史、代々伝わる伝統、信頼に足る技術、これらはいずれも中国老舗企業の「顔」と言える。これら老舗企業のほとんどが100年以上の歴史を誇る。中国には現在、国家商務部から「中華老字号」の認証を受けた老舗企業が1128社あり、飲食業や工芸品製造業、紡績製造業など22業界を網羅している。

ドキュメンタリー番組「伝奇老字号」の張川プロデューサーは、「老舗は、ある意味『パートナー』のような存在だ。年越しの際には、山西人の食卓には、六味齋の醤肉(醤油漬け肉)が並び、北京人の家庭には六必居の醤菜(野菜の醤油漬け)や稲香村の菓子が欠かせない。それこそが老舗の意義といえる」と指摘した。

大量生産の工業化プロセスを確立している老舗企業は、現時点ではまだ多くない。布靴の老舗・内聯昇の靴職人は、5日間かけてようやく、手作りの布靴を一足仕上げる。戴月軒の湖筆は、筆職人が照明の下で、先が尖っている細い毛を一本一本選び抜かなければならない。瑞蚨祥の店内に陳列された精巧で美しい京繍チャイナ・ドレスは、刺繍職人の女性が約1年かけて一針一針丹精込めて刺繍して仕上げている。商品の生産スタイルに劇的な変化が生じている今、これらの老舗企業は依然、昔ながらの伝統を守り続け、「為せば成る」という初心にのっとり、老舗の看板を維持し続けている。

伝統の手工業の技巧と匠の精神以外にも、これらの老舗の物語は中国人がすでに時代と共に進むだけでなく、時代を超越するほどの経営理念をも見せている。張プロデューサーは、「老舗のコアとなっているのは、商売に対する中国人の精神そのものだと感じている」との見方を示している。

現代化商業の急成長や市場化環境における競争激化が進むなか、中国の老舗企業も、プレッシャーとチャレンジに直面しており、これからどのように伝承・発展していくかという点が注目されている。

老舗企業の発展は、政策面での重視と支援を獲得することに成功している。2017年初め、中国の老舗企業の保護・発展が、中華優秀伝統文化伝承発展プロジェクトに組み入れられた。2017年月、国家商務部など16部門は、「老舗企業の改革・革新を促進に対する指導意見」を共同で発表した。

老舗企業自身もまた努力し続けている。電子商取引プラットフォームに積極的に参入し、オンライン・オフラインの各種マーケティング活動に取り組んでいる。2019年1月28日、「中国の老舗、故宮で年越し展」が北京故宮博物院で開幕し、約150社の老舗ブランドが初めて故宮に進出し、正月用品を販売した。北京の食品ブランド「稲香村」は、故宮と提携して、「菓子ギフトボックス」を発売、精巧で美しい外観と凝った文案で、オンライン販売が始まるやいなや「ネット人気商品」となった。

2018年8月、内聯昇は北京三里屯に店舗を新規オープンし、この活気にあふれたトレンディな街が、初の中国老舗ブランドを迎え入れた。これは、疑いもなく、中国老舗ブランドにとって新たなビジネスチャンスが到来したことの前触れといえるだろう。

張プロデューサーは、「1990年代から今世紀初めにかけて、いくつかの老舗が消えてしまった。しかし、ほとんどの老舗は、『開拓精神』と創造精神をよりどころにして現在も続いている。老舗は、絶えず、古いものの良さを新しいものに活かそうとしており、これはまさに、彼らに代々受け継がれてきた宝物の一つだ」との見方を示した。