電子ゲーム競技が大学の専攻に

「これで堂々とゲームができる!」。多くのネットユーザーからこのような感慨深い声が聞こえてきた。教育部がこのほど発表した-「一般大学高等職業教育(専科)専攻リスト」の2016年追加専攻リストには、「電子ゲーム競技スポーツ・管理」を含む13の追加専攻が含まれており、社会の幅広い関心と熱い議論を呼び起こしている。これまで役に立たないとさげすまれ、「まともな活動ではない」とみなされ、「学業に差し障る」と問題視されてきた電子ゲームが、ついに大学の教室で取り上げられることになった。ここから生じるであろう一連の問題が、憶測と議論を呼んでいる。

 
電子ゲーム競技コンテスト現場

「電子ゲーム競技」は専攻に

大勢のゲーマーたちから「高校に戻って(電子ゲーム競技の教科を)やり直したい」、「自分が先生になる」などの声が上がり、メディアの中には、「ゲームをしていれば大学に入れる」などと伝えるところもある。そのため教育と就職の専門家の間で懸念を引き起こしている。「授業でゲームか」や「卒業したらネットワーク管理者か」などと「ツッコミ」を入れるネットユーザーもいる。「電子ゲーム競技スポーツ・管理」という専攻は本当に「ゲームをする専攻」なのだろうか。

同部関連部門の責任者の説明では、「この専攻は主に電子ゲーム競技の基本理論、活動のルール、実践能力を掌握した学生を育成するものだ。主な就職先は、電子ゲーム競技のプロチーム、関連の企業やスポーツ協会、その他の関連機関などだ。目的は電子ゲーム競技スポーツのコンテスト、トレーニング、判定、主催と中継、競技(イベント)の組織・管理などの活動に従事する質・技術・技能の高い人材を育成することにある」という。

電子ゲーム競技を専攻にするよう申請した湖南体育職業学院の専攻設計責任者の柳軍氏は、「電子ゲーム競技の競技者を育成することはさまざな職業的ポジションの中の1つの選択肢でしかない。競技者の職業上のキャリアには限界があるので、競技者の生涯教育について、カリキュラムを整えて、学生が競技者人生を終えた後にも社会で一芸に秀でた存在であり、事業を興したり起業を設立したりできるようにすることを考えている」と話す。

 
電子ゲーム競技に夢中している若者

電子ゲーム界は人材不足

柳氏は、「これまでに行った調査研究では、訪問した電子ゲーム関連企業の責任者がほぼ異口同音に『人材が足りない』と嘆いていた。『ネットカフェで人材を探す瀬戸際まで来ている』が、『適当な人がいなかった』とうち明ける企業もあった」と述べ、中国の電子ゲーム産業の現状については、「産業では人材の需給に問題がある。中国の電子ゲーム愛好者は数こそ多いが、ほとんどが単なる遊びで、スポーツや産業としての電子ゲーム競技の各種ポジションにふさわしい人材ニーズには十分に対応できていない。一方では市場での旺盛な人材ニーズがあり、また一方では関わりたい人は大勢いるものの市場の要求には合致しないという現状がある」と指摘する。

ここ数年、電子ゲームは資本が集まるホットポイントとなり、中国の電子ゲーム産業は徐々に巨大な市場規模と産業チェーンを形成してきた。ゲーム産業の定評ある分析統計をみると、2014年の中国の電子ゲーム全体の市場規模は226億3000万元(約3508億2500万円)に達しており、15年は資本の投入が拡大し、ファン経済がさらに顕在化し、通信販売や広告などにおける市場全体の商業化プロセスが加速していることから、市場規模が270億元(約3100億円)に迫るとみられ、将来的には500億元(約7751億円)を超えることが予想される。こうした背景の下、電子ゲーム産業の生態圏が徐々に形成される見込みだ。産業の発展が直面する最大の問題は専門的人材の不足だ。ネットワークゲームの開発運営企業・完美世界の蕭泓最高経営責任者(CEO)も以前に、「どの分野であれ、最も大事なのは人材だ」と述べている。

多くの大学が電子ゲーム競技専攻を積極的に申請し計画しており、沢山の関連企業が大学と専攻採用に先駆けたやり取りや協力を進めている。多くの「先達」が、「熱い血が煮えたぎる」電子ゲーム少年たちは世間の動きとは逆により冷静になるべきだとの見方を示す。

電子ゲーム競技専攻は一部の人が考えるような「ゲームをしていれば勉強したことになる」ものではなく、「ゲーム中毒者の更正施設」でもない。柳氏はこの専攻での受験を考える受験生やその家族に対し、「電子ゲーム競技の中味や電子ゲームとの違いを明確にする必要がある。『電子ゲーム競技スポーツ・管理』の専攻がどのような人材を育成するものか、主にどのような仕事に従事する人材を育成するのかを十分に理解する必要がある。この専攻の学生の総合的な素質に対する要求、特に理数系の水準と言語能力に対する要求は高く、一定のハードルがあることを認識する必要がある」との見方を示す。電子ゲーム競技専攻にトライしようと意気込む少年少女は、この3点を冷静に考えることが必要だ。