新たな営利モデル「ECプラス中継」が大人気

国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局は9月9日に新規定を発表し、中継事業を行う機関に「中継事業にあたっては許可証を取得すること」を要求した。これは電子商取引(EC)で人気の営業販売ツールになったばかりの中継事業にとって、新たなハードルを設けられたことにほかならない。同時に「ECプラス中継」という産業のホットポイントに注目が集まることにもなった。

2016年はネット中継元年と呼ばれ、一連の「網紅」と呼ばれるネット有名人やスターによる中継効果が明らかになるにつれて、営業販売に長けたECがたちまちそこに商機を見いだすようになった。現在、天猫(Tmall)と蘇寧易購がオンライン中継を始めており、京東商城もまもなくオンライン中継チャンネルを開通させる予定だ。業界関係者には、「中継はコンテンツを通じてユーザーを引きつけ、売上への転化率を高めることができ、ユーザーは中継を見ながら買い物ができる」という見方の人もいれば、「中継は投機的要素が強く、常態にはなりにくい」という見方を示す人もいる。

 
9月24日、広州の不動産会社が開催したイベントでオンライン中継しているネット有名人ら

EC企業が中継事業に参入

今年に入ると、国内の大手EC企業がネット有名人や中継事業に相次いで関心を示すようになった。

7月6日には天猫が携帯電話のアプリケーションでオンライン中継をスタートした。アリババ(阿里巴巴)の「百川プラン」がサポートする「中継を見ながら買い物する」という機能により、ユーザーは中継を見続けながら勧められた商品を直接注文し購入することができる。これまで2カ月にわたって行われたテスト営業では、携帯電話の淘宝(タオバオ)中継プラットフォームがいち早く開通した。両者はいずれも「消費型中継」で、取り扱う商品はベビー・マタニティ用品、化粧品、ファッション製品、グルメ、スポーツ・健康用品など。

天猫の販売促進キャンペーン「6・18」の開催期間に、蘇寧は初の中継事業「蘇寧ネット有名人中継ルーム」を試行し、ネット有名人が消費者を誘導して中継プラットフォーム上で蘇寧易購の携帯電話の顧客端末に登録して買い物するモデルをスタートさせた。ネット有名人というブランドと蘇寧が取り扱う商品のブランドが融合し、有名人のファンが商品を購入した。

京東の徐雷シニア・バイス・プレジデントは、「京東も近く中継機能を導入する。モバイルインターネット時代には、ユーザーの時間をどれだけ占有できるかが極めて重要になる」と話す。

中継では、スターやネット有名人の中継サイドとユーザーがリアルタイムで交流し、これを消費行動のクローズドループとしてユーザーを誘導するというのが、「中継プラスEC」の最もわかりやすい営利モデルとなっている。

 

ECのモバイル化が大きな流れ

ECで中継の人気が出たことは、モバイルインターネット時代の訪れと関係がある。ECの専門家・魯振旺氏は、「人々は携帯電話端末での閲覧方式にすでに慣れ親しんでいる。これまでパーソナルコンピューターで買い物をする場合、買い物が終われば終わりだった。だが現在は携帯端末の画像や文字情報、コーナー、コンテンツがより充実し、消費者はより詳細に商品を検討し、多くのすきま時間を使って買い物するのを好むようになった」と話す。

中継はECモバイル化の大きな流れに合致する。京東の中継プロジェクト責任者は、「中継は表現スタイルが豊富で、真実性、相互連動性、リアルタイム性が高く、より優れた娯楽的要素や情報的要素をもたらすことが可能で、モバイルネットの背景化、砕片化、パーソナル化、脱中心化の特徴や流れに合っている」と話す。

 
オンライン中継をしている女性

ビジネスモデルにハードル廃れることはない

9月9日に同総局が発表した「ネットワーク視聴番組の中継サービス管理強化に関連した問題に関する通知」によると、オンラインで視聴する番組を中継する機関には、法律に基づいて中継サービスを提供することが求められ、「情報ネットワークにおける視聴番組中継許可証」を取得していない機関と個人は許可証が必要になり、ハードルに直面することになった。許可証を取得していない機関と個人は個人によるショーを中継することもできないし、ニュースやバラエティなどの番組を手がけることもできず、番組の中継チャンネルを開設することもできないとされた。多くの業界関係者が、「人気が出始めたばかりの『ECプラス中継』モデルにただちに寒風が吹き付けることになった」との見方を示す。

ネットの専門家である中国インターネット協会「インターネットプラス」研究コンサルティングセンターの李易副センター長は、「ECの中継は、実際にはインターネット版のテレビショッピングだ。異なるのは、ネット中継は視聴者の数を計算することができ、キャンペーンを通じて視聴者を実際の有効ユーザーにすることができ、連携効果を直接反映することができるという点だ。これはユーザーのデータを蓄積する上で非常に価値あることだ」と話す。

 

コンテンツが重要な突破口

今後の発展について、艾媒諮詢の張毅最高経営責任者(CEO)は、「資本サイドは数年前からネット有名人に注目していたが、ネット有名人は不確定性が高い、ユーザーの関心が持続する時間が短い、コンテンツが道徳規範に合致するかどうかといった懸念が常に存在していた」と振り返る。

幸いなことに、業界はすでにコンテンツの重要さを認識している。最近も京東の中継プロジェクト責任者が、「オンライン中継は実質的には新たなコンテンツのスタイルであり、伝統的メディアと同じく、重点はやはり内容にある。今後は中継コンテンツの数が急増するにつれ、真に価値あるコンテンツでなければ定着できなくなるだろう」との見方を示した。