「淘品牌」の上場ラッシュは何を意味するか

中国証券業監督管理委員会(証監会)は7月1日、「淘品牌(タオバオのオンライン店舗からスタートし、自社ブランド商品を開発している店舗・ブランド)」である茵曼や初語の親会社・匯美集団が、IPO(新規公開株)の発行と深圳証券取引所の新興企業向け市場「ChiNext」(創業ボード)への上場を中国証監会に申請していることを明らかにした。同様に、6月末には、アリババの電子商取引プラットフォームに出店している裂帛服飾も、証監会にIPO申請を行い、深圳証券取引所創業ボードへの上場を計画している。このほか、新三板(株式店頭取引市場)への上場を計画している韓都衣舎や、IPO申請予定の三只松鼠など、タオパオや天猫のブランド店舗から出発した多くの企業が、上場準備を進めている。このような気運から、エネルギー不足だった市場に明るい光が差し込んでいる。


アリババグループの馬雲(ジャック・マー)会長

「淘品牌」は2008年ごろに誕生した。当時、出来たばかりの淘宝商城(タオパオモール、その後、天猫〈Tモール〉に改名)は、一部の高品質商品を扱う大型店舗が「淘品牌」として成長していくプロセスを後押しした。茵曼や韓都衣舎、七格格、麦包包などはいずれも、タオパオによって育てられた「淘品牌」だ。

アリババグループの馬雲(ジャック・マー)会長は、2012年のネットビジネス大会において、「『小さいからこそ美しい』という理念が、今後の電子商取引を方向づける」と語り、「淘品牌」の立ち位置を再定義した。馬会長は、「小ささ」はすなわち「美しさ」であり、今後の企業にとって、小ささと良さが経営の鍵であり、より柔軟性を高めるものでもある。そして、「淘品牌」は、まさにこの観点に見合うものであった。ここ数年の「ダブル11」売り上げランキングを見ても、彼の着目点が正しかったことは言うまでもない。これらの「淘品牌」は一挙に爆発的な成長を遂げ、タオバオのブランドから「インターネットブランド」に成長するとともに、伝統的な著名ブランドにとって最大のライバルになった。

これらのブランドが、アリババのECプラットフォームで収益を伸ばし、多くの新生ブランドが同プラットフォームを第一選択肢として選んだ理由は何なのか。アリババの巨大な規模と多くの「淘品牌」が同プラットフォームをスタートラインに成長したことのほか、最も重要なことは、アリババと他の電子商取引企業との間に、本質的な違いがあることだ。ブランドの育成と成長には、条件を備えた土壌や環境が必要だ。天猫プラットフォームは、新ルート、新メディア、新市場が積み重なっただけであり、京東は単にルート面で特徴があったにすぎず、ブランド自身がプラットフォームで成長を遂げるための条件は整っていなかった。


淘宝網が開催したイベントで、多くの「淘品牌」が表彰された

ユーザーにとって、天猫は確かに大市場だ。同プラットフォームにアクセスして、商品の価格比較を行えば、かなり多くの店舗でも同じ商品を取り扱っていることが分かる。このため、消費者は、さまざまな角度から比較を行い、店舗側とのやり取りを経て、最終的にどこで購入するかを決定する。他のECプラットフォームは、スーパーマーケットと同様、商品を羅列している場所にすぎない。そのサイトにアクセスした消費者にとって、購入目的が明らかなものであれば、他の新生ブランドが消費者の「眼に留まる」ことは難しく、ただそこに掲載されて、商品が展示されている状態のままだ。

つまり、「淘品牌」各社が、資本力によって現有ブランドがさらに成長し、より多くのブランドが生まれる経緯を巧みに利用し、あるいは買収合併、投資などの方法を通じて、資本市場を通じてより多くの業界内の優秀な人材を引き抜き、彼らが組織・管理するチームに市場価値の向上を通じた自社価値アップを実現させることは、市場が駆り立てる必然の成り行きといえる。