副業で稼ぐ中国人の新ネットライフ

安徽省黄山歙県王村鎮の洪副鎮長がタクシー配車アプリ「滴滴打車」で兼職していたことについて、紀律検査委員会が調査に乗り出した問題が、ここ数日、ネットユーザーの熱い議論の的となっている。インターネット、電子商取引、モバイル決済の普及と発展に伴い、空いた「すきま時間」を利用してネットビジネスに着手、副収入を得るというのが、中国人の新たな生活様式になっている。


タクシー配車アプリ「滴滴打車」

「滴滴打車」の運転手

人材派遣の国内最大手「前程無憂」が2015年に発表した「社会人の兼業状況」と題する調査報告によると、副業をしていると答えた人は約4割を占めた。ネットビジネスとして最も多いのは「代理購入ネットショップ経営」「ハイヤー運転手」などで、いずれもオンライン・プラットフォームで提供される多くのビジネスチャンスと密接に関連している。

鉄道会社で乗務員を務める莫群力さん(42)は、「サイドビジネスの良い点は、便利に仕事ができることだ。スマホのアプリを開くだけで受注でき、代金も直接口座に入る」と話した。鉄道会社では4勤4休のシフト制で働く彼は、かなり以前に「滴滴打車」のドライバーに登録した。

友人を空港に送って行った帰りに乗客を乗せればガソリン代の足しになり、ハイヤーの運転主として市街地を1日駆け回れば日給換算で本業より多く稼げる。莫さんは、「生活コストが毎年上昇しており、株式市場の大暴落も経験した。ハイヤー運転手という副業に手を染める人々は増える一方だ」と述べた。

IT社員の副業

湖南にあるIT企業で働く文浩華さんは、「列に並んで車を待っている数分間に副業で儲けることができる」と話し、自分は駆け出しの「技術オタク」であると笑いながら告白した。さまざまな新しいアプリをダウンロードすることが大好きなこの若者は、「お金儲けができる」を標榜する多くの携帯アプリを使って、決して馬鹿にできない額の小遣いを稼いでいる。

ゲームを体験する、PR動画を見て質問に答える、新製品を試用してフィードバックする、近くのマーケットに行って指定商品のバーコードを探す――モバイル端末でアプリを開き、わずか数分間で仕事を終えて提出すれば、「支付宝」(アリペイ)を通じて現金として受け取るか、あるいは通話料チャージという形で、その報酬を得ることができる。

文浩華さんは、「このような働き方は、小さい頃に母親を手伝って『おつかい』をしてお小遣いを貰ったパターンがスマホに持ち込まれたような感じだ。たとえ臨時の仕事でも、それをやり終えたときには、本職と同じような達成感が得られる」と述べた。

ネットワーク技術の発展によって、副業プラットフォームは様々な業界にまで拡大し、ますます多くの人が、好きな時に、好きな場所で、副業に関する情報を受信・発信できるようになった。特に、個人的な趣味を刺激するものや潜在能力を発揮できる自由なサイドビジネスは、「自分の思い通りに時間を使える」「様々な職業を体験できる」という若者たちの願望を十分に満たすことができる。


微商を行っている中国人若者

兼業は「公然の秘密」

報道学が専門の董行さんは卒業後、ある国有企業に入社した。収入が低く、仕事も忙しくないため、彼はネットワークプラットフォームを通じてカメラマンとしてサイドビジネスをしている。彼にとって、収入以外に、達成感や幸福感を味わえること、同じ志をもつ新たな仲間が得られたことも、大いにプラスアルファとなっている。

長沙の証券会社に勤める蘇さんのもう一つの顔は、「微商(微信/Wechatをプラットフォームにした電子商取引を行う人)」だ。「おやつは、女性なら誰でも興味を持つ話題で、『モーメンツ』で発信するだけで商売ができる」と話す彼女は、退勤後、微信を使っておやつを上手に推薦する。効果的なコミュニケーションによって、彼女と友人たちとの間柄はより親密になる。

多くの起業家も、サイドビジネスを経験することで、さまざまな営業の側面を体験し、企業のための経験を蓄えている。成都の某メディアに勤める段逸丹さんは、仕事以外の時間にさまざまなイベント企画に参加し、その後辞職して起業した。「起業した当初は、フルタイムの従業員を雇用する力がなかったので、主にサイドビジネスとして来てくれる人を雇用して業務を展開した」と段さん。

兼業希望者の招聘や人件費の節約は、多くの企業があまねく求めるところだが、従業員の兼業を公に支持する企業は極めて少ない。兼業行為は依然、「公然の秘密」なのだ。

インターネット・モデルの発展によってますます多くの兼業のチャンスがもたらされ、兼業という就労形態がますます普及している。湖南省社会科学院の方向新・副巡視員は、「兼業という働き方は、次第にバーチャルの方向に向かっており、その機会は増える一方だ。だが、本業の仕事に対する影響や法律面でのリスクも、日ごとに顕著化している」と指摘し、次の通りコメントした。

「本業が副業に変わるという現象もあり得る。兼業に関する法的な制約は今のところないが、労働者が本職に従事している間、雇用者側が兼業を認めるかどうか、あるいは個人の力の配分調整については、バランスをとる必要がある。兼職という新しい働き方が登場したことで、相応の法律の整備が求められる」。