電子書籍は紙の書籍に取って変わるか

北京師範大学新聞学院はこのほど、「中国ネットユーザーデジタル読書状况調査報告書(2016)」を発表。多くの人の読書習慣や読書行為に大きな変化が生じていることが分かった。例えば、調査に答えたネットユーザーの62.7%が「電子書籍が遅かれ早かれ紙の本に取って変わる」との考えを示した。20歳以下の回答者を見ると、その割合は82.9%にも達した。

デジタル読書の利用者が増加

今年の「読書の日」の前日となった4月22日に、中国新聞出版研究院が発表した「第13回全国国民読書調査報告書」によると、15年、中国の成人のデジタル化された読書スタイルの接触率が7年連続で上昇し、64%に達した。

デジタル読書が急速に成長している背景には、中国でインターネットが急速に発展していることがある。それについて、前出研究院の魏玉山院長は、「1999年に実施された第一回の調査では、インターネットを使用している人はわずか3.7%だった。そして、アンケートに、デジタル化読書という概念も存在しなかった。一方、15年の調査では、国民のインターネット使用率が70%を超えた」と説明する。

パソコン、スマホ、電子書籍、iPadなど、デジタル読書にこれまでになく便利に接触できるツールが増加している。

シンプルな使い道の電子書籍が、読書の動向を知る指標となるかもしれない。統計によると、昨年一年の間に、アマゾンの電子書籍リーダーKindleは、中国で300万台売れ、中国は世界で最も成長率が高い国となった。また、中国のオンライン書店・当当網が最近発表したある報告書によると、同サイトで紙の本を購入した人のうち、60%が無料の電子書籍を手に入れることを望んでおり、20%が無料でプレゼントされた電子書籍をダウンロードした。また、10%が追加料金を払って電子書籍をダウンロードした。

広く浅くが現代人の傾向か

デジタル読書の勢いを止めることはもう誰にもできないが、実際には、その質はばらばらで、構造も複雑だ。

調査報告書によると、デジタル読書のコンテンツの出所を見ると、「微信(WeChat)で登録した公式アカウントから送られてくるコンテンツやモーメンツにアップされたコンテンツ」が過半数を占め、2位の「ブラウザーで見られるウェブサイトのコンテンツ」を30ポイントも上回った。男女の差を見ると、男性が「ニュースアプリ」を好んでいるのに対し、女性は、「微信、SNSアプリ」、「文学サイト」を好んでいる。

統計を見ると、人々の読書に対するニーズが多元化し、うち、ニュースに対するニーズが特に高まっている。そして、情報量の多い「ニュースアプリ」が、欠かすことのできない必須アイテムとなっている。

その他、読書における忍耐力低下が、中国人の読書行為における大きな特徴となっている。「広く浅い」読書が明らかな傾向となっているのだ。コンテンツの出所のうち、「微信で登録した公式アカウントから送られてくるコンテンツやモーメンツにアップされたコンテンツ」が過半数を占めていることがその傾向を浮き彫りにしている。ある研究者は、「功利的な読書が、文化的な読書より人気があり、流行本が定番の名作より人気がある。そして、知識の習得より情報量のほうが勝り、文学を楽しむより、ニュースに注目するようになっており、理論を探求するより、娯楽を追求するようになっている。これらが、デジタル読書時代に見られる普遍的な特徴」と分析している。

紙の本が復活の兆し

デジタル読書が優勢になり、紙の本や雑誌、新聞などの読書率が劣勢になっているというのは疑う余地のない事実で、「従来式の読書は死んだ」という論調が一時的に盛り上がった。

しかし、統計を見ると、「従来式の読書」はまだ衰退の時期を迎えたわけではないようだ。中国の成人の読書スタイルの傾向を見ると、15年、57.5%が「紙の図書を読む」傾向にあり、「オンライン読書」の傾向にあるのはわずか10.2%にとどまった。また、「スマホ読書」の傾向にあるのは27%、「電子書籍リーダーで読書」の傾向にあるのは4.1%、「ネットでダウンロードかプリントアウトして読書」の傾向にあるのは1.2%にとどまった。

実際には、紙の本と電子書籍は、互いに包括、包容する関係を形成している。アマゾンのある調査によると、回答者の80%が「紙の本も電子書籍も読む」と答え、それらが互いに補い合う関係であることが分かる。

それを実証するかのように、一度は衰退を経験した実店舗を構える本屋が現在、復活を遂げている。本屋が再起するにつれ、従来の読書は、デジタル読書の隙間に新たな活路を見出している。

このような読書をめぐる複雑な現状に、私たちはどのように対応すればよいのだろうか。専門家は、「国民一人ひとりは、デジタル時代にふさわしい読書観を身に付け、思考力を働かせることや深く読むようにしなければならない。一方、政府は、文化教育事業に対する投資を拡大させ、国民の読書のために、相応の対策を講じなければならない」との見方を示している。