「95後」の大学生「ネット有名人になりたい」

カメラと照明を程よく調節し、ヘアゴムで熱心に髪の毛をまとめ、うっすらとフェイスパウダーをはたく。これは、女性スターの日常ではなく、男子大学生の翁子凡が毎日必ずする「たしなみ」だ。

翁子凡は、多くのファンを持つネット番組のパーソナリティを務める男性で、ネット有名人の「スタンダード」でもある。お兄さん・お姉さん世代やおじさん・おばさん世代にとって、「翁子凡」さんは、「日常」からややかけ離れた存在だが、同年代の「95後」(1995年から1999年生まれ)の若者にとっては、決して特別な存在ではない。

「網紅」は、「網絡紅人(ネット有名人)」の略称で、現実生活もしくはネットワーク生活において、ある事件や行為によって多くのネットユーザーから関心や人気が集まった人物を指す。

「『95後』のライフスタイル調査研究報告」がこのところ、広く社会の注目を集めている。ネットが最も身近な存在である世代である1億人の「95後」は、1980年代生まれや1990年代前半生まれとは違った特徴やライフスタイルを持っている。彼らの生態は、オタク、クール、道化者などさまざまで、大胆な思考力と実行力を備えており、決して他者に盲従せず、「マイウェイ」を貫き通している。


「ミルクティー少女」と愛称されてきた「網紅」の章澤天さん

「人気」は一種の資本

もし読者が、「ネット人気者になることはあくまでも本業ではない。皆に媚びを売って人気を得ることは、価値のあることではない」という意見の持ち主ならば、一部から反対の声が上がることは避けられない。ネット有名人になった大学生の多くは、「自分を飾ることはひとつの能力であり、『人気』も一種の資本」と考えている。

この点について、上海の某有名大学で法律学を学ぶ大学4年生の周琛(仮名)は、「他の学生は、就活の際にまず学歴で自分を売り込む。だが、僕は、面接官に対して、『僕の作品(番組)は人気があります』と面接官に言えば済む」と、極めつけの一言を発した。

昨年の「ダブル11(独身の日。11月11日)」の電子商取引業者による販売合戦において、ある業者のCMのキャッチコピーがネット上で話題になり、アクセス数は膨大な量に達した。このCMには、周琛が関わっている。

周琛は、「このような情報の環境において、『人気が出る』ことは、その人自身の能力を顕示している。私は、人気が出ることが恥ずべきことだとは思わない。人気は、自分がやり続けてきたことが世間に認められたことを意味しており、私がやっていることが注目に値することが証明されたことになる」と話した。

親友:応援する

ネット有名人のクラスメートは、自分の親しい人がネット上で人気者になったことを特に意に介してはいない。北京の某大学に通う大学生は、「今では、ネット有名人がこんなに増えた。ネット人気は、特別な世界の話ではなくなった。だから、クラスメートが有名人になっても、私自身の生活には何の影響もない。反対に、少し誇らしい気がする」と話した。

翁子凡の生放送室は、クラスメートの反感やひんしゅくを買うものではない。時には、クラスメートを招いて特別出演してもらうこともある。誰もが、実践トレーニングの良い機会として、このようなチャンスをとても喜んでいる。

また、多くの「95後」は、両親から支持されている。

頼宏威は、ネットゲーム番組のパーソナリティを務めている。彼がネット人気者になったきっかけはオンラインゲームだった。この「兼職」について、彼の両親は、スタート当初は理解を示さなかったが、だんだんと支持する側に変わってきた。

ゲーム番組のパーソナリティになった後、頼宏威さんの生活は、意外なことに、より健康的なものになった。「番組の生放送時間が決まっているため、食事の時間が以前より規則的になり、仕事と休憩にも一定のリズムができた。翌日の授業に影響が及ばないようにと、徹夜することも少なくなった。このように生活のリズムが改善されたことを、両親は大変喜び、かつ安心している」と彼は話した。

この若者には、数万人のファンがいる。彼の生番組を6万人が一緒に観たという記録もある。頼宏威の父親も時には生番組を視聴し、感想を述べているという。


「網紅交流会」で発言している「網紅」の代表者

「『95後』の次元」を理解しようと試みる両親

確かに、「95後」の大学生がネット人気者になる背後には、インターネットの発展をまざまざと見てきた初代ネットユーザーである両親の存在がある。彼らの多くは1970年代生まれで、「95後」がネット潮流の最前線を走っているとすれば、その両親は、子供を啓蒙する「師」といえよう。

「『90後』(1990年代生まれ)のライフスタイル調査研究報告」から、「95後」とその両親の関係は極めて密接であることが判明した。「95後」の71.3%は、「自分のことを一番に気にかけ、評価してくれる人は両親」と答え、58.3%が「両親とは常日頃連絡を取り合っている」と答えた。

白さん(女性)の娘は、今年大学1年生になったばかりだ。彼女と娘さんは、ずっと一緒に、ネット上で「新しい物事」を探求し続けてきたという。

娘さんは、大学生になった後は、「二次元(アニメ・ゲーム・コミックなどの仮想世界)」にハマり始め、クラスメートと「表情包(スタンプ)」を使い出した。白さんは、「私は、娘たちだけの小さな世界があることを分かっています。本質的な問題に関わることでない限り、娘が誰を好み、何をしようと、全て彼女の自由です。ネットワークの世界はそのような世界です。世代ごとに、その世代独自の文化があるのです」と語った。

白さんは、「私は目立つことが好きではありませんが、もし娘がネット有名人になっても、彼女の自由なのだから何も言いません」と続けた。