「世界一忙しいウェブサイト」と帰省切符

中国鉄道乗車券予約購入公式サイト「12306」は、「世界一忙しいウェブサイト」と人々から呼ばれている。これは、アクセス数が最も多いからではなく、数週間にわたって、春運(中国旧正月の帰省・Uターンラッシュに伴う特別輸送体制)期間の数億に上る乗車券を販売するサイトだからだ。帰省切符には、家族や親しい人との再会を心待ちにして一枚の切符を求めるあらゆる人々の「故郷への熱い想い」が凝縮されている。

 
中国鉄道乗車券予約購入公式サイト「12306」

「12306」サイト最も忙しい2週間

クリック数は1秒あたり24万回、ピーク時のログイン数は1秒あたり3000人以上――「12306」サイトは、春節前の第一次予約・販売ピークを問題なく乗り越えた。12月7日から2週間の間に、延べ約7億人が同サイトにログイン、1億1500枚以上の乗車券を購入した。

ピークは19日だった。同日、「12306」サイトへのアクセス数は297億に達した。これは、国民1人が21回アクセスした計算になる。同日発売された乗車券956万4000枚のうち、59%がオンラインで販売された。だが、2週間のログイン人数と販売実数に基づいて計算すると、同サイトでの購入成功率は10%にも満たなかった。

例年に増して忙しかった「12306」サイトだったが、「春運切符の販売が始まると必ず麻痺する」と言われていた同サイトは、2014年はピーク第一波の衝撃に耐え切った。

中国鉄道科学研究院(鉄科院)電子計算技術研究所の王明哲・副研究員は、「2014年は、通信上限容量を昨年比約3倍拡大し、サイトの処理能力も倍増した。これによって、ユーザがサイトをクリックした際のレスポンス時間が半分に削減、ピーク時で毎秒1000枚以上の乗車券を同時に販売できた」と分析した。

モバイルサイトの存在も、ウェブサイトにかかる負担をかなり軽減した。2週間にわたる帰省切符の購入争奪戦の中で、携帯向けアプリを通じて販売された乗車券は約1560万枚に上り、販売総数の13.6%を占めた。

 

帰省切符に凝縮された「郷愁」の想い

今週、中国人の間で最も話題に上ったのは、「帰省切符を手に入れられるか否か」だった。2014年は前売り開始が早まり、前売り期間が延長されたが、多くのサラリーマンは、まだ休暇日程が決まっていないため、その前後の切符を事前に買い占める「切符買占め族」に変身した。

「乗車日の2カ月前から前売りが始まっても、職場の休暇日程がまだ決まっていない」と、ネット関連企業で働く麗妍さんはぼやく。サラリーマン50人を無作為に抽出して調査した結果、麗妍さんと同じように「困惑する」と感じている人は8割を超えた。

オンライン環境がなく、ネットを通じて帰省切符を入手することができない人々も、決して軽視してはならない。農民工(農村から都市に出て働く臨時就労者)や高齢者にとって、オンライン販売が春運切符の総販売枚数の半分以上を占めるようになると、彼らの「帰省の道」はますます険しく、苦難に満ちたものとなる。「農民工の帰省切符購入を手伝おう」というシンプルで温かな動きが、今週の新浪微博の「話題ランキング」に入った。

 
中国旧正月の帰省・Uターンラッシュ

深読み「帰省切符の入手難」

「帰省切符の入手難」という問題は、長年の間、中国社会を悩ませ続けてきた。

もちろん、輸送力の増強はひとつの解決法だ。中国鉄道の総営業距離が昨年末に10万キロメートルを上回って以来、中国の鉄道建設事業は、ずっと「追い越し車線」を突っ走っている。

全国列車運行ダイヤの2014年2回目の改定が12月10日に実施され、高速列車の運行範囲が28省(自治区・直轄市)に拡大された。これにより、甘粛、貴州、青海、内モンゴルなどの地域が、「高速列車が走行していない」時代に別れを告げた。

国家発展改革委員会(発改委)も、数多くの鉄道インフラ建設プロジェクトを続々と承認しており、今後の輸送力拡大は大いに期待される。例えば、2014年10月16日から11月5日の21日間の間に、発改委は鉄道16路線や空港5港を含む計21件のインフラ建設プロジェクト、投資総額約7000億元(約13兆5500億円)について意見付回答書を送り、建設を承認した。発改委が10月1日から今までに承認したプロジェクトは、空港、鉄道、道路、都市鉄道など計43件に達した。

状況が確実に良い方に向かっていることは、何よりも喜ばしい。間もなくやって来る春節の民族大移動。これからも、この小さな1枚の切符は、中国人の心理と切っても切り離せないものであり続けるだろう。