注目されるモバイル医療産業

最近、モバイルインターネット医療分野の朗報が次々耳に入ってくる。多くのネット薬局は高額の投資資金を獲得している。国内のモバイル医療企業への融資では過去最大規模になった。「次なる金鉱」といわれるモバイル医療分野が、徐々に熱を帯びてきている。

9月末には、医療相談サービス「春雨医生」がネット薬局の「好薬師」と戦略的協力を結ぶことで合意し、利用者におすすめの医薬品情報や医薬品販売サービスを直接提供することになった。その1カ月前には春雨医生が約5000万ドル(約53億9450万円)の第3回融資を獲得し、9月中旬には医療計器メーカー・九安医療の「iHealth」ブランドが小米科技から2500万ドル(約26億9600万円)の投資を獲得した。医療情報サイト・丁香園も同月初旬に騰訊(テンセント)から7000万ドル(約75億4880万円)の資金を獲得し、国内のモバイル医療企業への融資では過去最大規模になった。


インターネットを通じて診察を行っている医師

モバイル医療に集まる資本

調査会社・艾媒諮詢(iimedia)が発表したデータによると、2017年末までに、中国のモバイル医療市場は125億3000万元(約2203億円)の規模に達する見込だ。そしてチャンスのあるところには、百度、アリババ(阿里巴巴)、騰訊などのネット大手が必ず顔を出すだろう。

今年5月、「支付宝」(アリペイ)は「未来病院計画」を発表。ネットとビッグデータの技術を利用し、今後5~10年で、ビッグデータに基づき、患者を中心としたモバイルスマート受診プラットフォームを構築すると発表した。6月には「微信」(WeChat)が「全プロセス受診プラットフォーム」を初めて開設した。7月には百度が北京市政府と共同で「北京健康クラウドプラットフォーム」を発表した。

国内にはモバイル医療関連のアプリケーションが2千種類以上ある。「春雨掌上医生」、「用薬助手」、「5U家庭医生」、「好大夫在線」などで、医療機関探し、問診、予約、受付、医薬品の購入、専門的情報の相談などさまざまな方面をカバーする。

春雨医生の製品は「簡単な問診」と位置づけられ、音声、文字、画像などを通じて全国の二級甲レベル以上の公立病院の主治医レベル以上の医師4万人に直接健康相談をすることができる。実際に医療機関を受診する前に、本当に病院に行く必要がある患者かどうかをふるいにかける役割を果たすとともに、医療資源で劣る地域の人や低所得層が最も安いコストでよい医者に相談できる環境を整えることを目標にしているという。

融合が加速

方正証券のまとめた研究報告によると、良好なエコロジー環境を創出し、一体化した医療サービスをうち出すことが、モバイル医療発展のためにぜひとも必要だという。

プラグアンドプレイの国際的な汎用規格が各種システム設備に相乗効果をもたらすというのが、モバイル医療をめぐって解決が必要とされる問題だ。ボーダーレス医療集団のモバイル医療サービスプラットフォームがうち出したスマートホームシステムは、クラウド端末と家庭にある端末とウエアラブルデバイスを組み合わせて医療におけるモノのインターネットを構築し、家庭での介護向けに健康管理、介護者の育成、遠隔医療などのサービスを提供する。

同集団の余衛湘主席(博士)は、「モバイル医療とモノのインターネットなどの科学技術手段を通じて改良されたスマート都市により、発展途上国が医療保険支出を大幅に節約できるようになり、中国の医療保険市場を中心に『医療のシルクロード』を構築して、周辺国・地域に波及させることも可能になる」と話す。

未知の商業モデル

現在のモバイル医療の商業モデルは、まだ端緒についたばかりだ。

余主席は、「中国のモバイル医療産業が世界規模で大きく飛躍したいなら、世界との連携が必要だ。特に国際医療基準に合わせることが必要になる。だが現在の国内での医療実践の多くは、中国医学であれ西洋医学であれ、国際医療基準の範疇には組み込まれておらず、国際制度に基づく規範を欠いている。次に必要なことは、世界との協力を強化することだ。現在の国内市場に流通するモバイル医療アプリケーションの多くは、国際協力メカニズムの視点が欠けており、患者がより質の高い医療サービスを受けたいと思った時にマイナスであり、また医療コスト引き下げというモバイル医療の強みが生かされないことにもつながる」と話す。